竹中さん ~4~
竹中さんの話です!
それは私の担任が突然告げてきた。
朝の会で開口一番に、
「実は私の主催する劇団がこの度、舞台を開くことになりました。」
生徒からは『おおぉ!』っと歓声が上がるのだが、
その次に続く言葉を聞いて唖然とする。
「それで、是非ともみんなに観てもらいたくて・・・
チケットを買ってもらいたいの。」
・・・はぁ?
何を言っているんだこの人は?
チケットを買うって・・・
「こちらにその趣旨と開催日が書かれた紙があるから、
これを親御さんに見せてください。」
そういって、プリントを先生が配りだしたのであった。
こんなのって・・・断れないんじゃないの?
自分の子供の担任から進められたら、
今後のことも考えると断れないだろう・・・。
ふと値段を見ると1人980円・・・
これの金額って・・・
確かテレビでやってたけど、安く見せる方法の一つじゃなかったかな?
1000円と書くよりも安く見えるからって・・・
しかも二口以上購入をお願いしますって書いてあるし・・・
思わず新手のマルチ商法かと思ってしまう。
しかもそれを先生が主導して、自分達の生徒に売りつけるって・・・
うちの親に見せると案の定、チケットを購入することになった。
ただ、2枚購入するにしても母が、今は大阪に戻っており、父だけなのだが、
その父だって普通に仕事がある。
ということで・・・
「柊、どう?」
「・・・まあ、いいけど・・・。」
柊と一緒に行くことが決定した。
「ただ、この日は俺、試合があるから、夕方ギリギリになるよ。」
「じゃあ、現地集合にしようよ。」
「分かった、それならOK。」
「それより柊のクラスでは売ってなかったの?」
「ああ、うちのクラスはあの人の授業はないからね。
ただ、他のクラスではそのプリントを配っていたみたいだよ。
それとテニス部の顧問だから、当然テニス部でも配ってたみたい。」
「・・・結構な額を稼いでじゃん・・・。」
そういって、私は今回の会場の料金表を柊に見せると・・・
「一回で7万円か・・・。それに対して、クラスはもちろんのこと、
学年の半分と部活を合わせると、200名くらいだから、
それに2口以上で・・・32万ほどになるな・・・。」
「・・・だよね・・・。」
「汚い稼ぎ方で・・・。」
「公務員って副業OKじゃないだろう?」
「何か抜け道があるんじゃないの?」
「・・・確かにあの人なら考えてそうだね・・・。」
私と柊は呆れつつも、結局はこの劇を観にいく。
かなり癪だけどね!!!
「お待たせー。」
柊が小走りで現れた。
服装は私服ではあるものの、靴はランニングシューズで、
背にはスポーツバッグを抱えていた。
軽く肩で息をしていたので、
「もしかして駅から走ってきた?」
「ああ、思った以上に遠くてね。走らないとアウトだったから。」」
「そうね・・・もうギリギリだしとりあえず入ろうか。」
そういって、2人で会場へと入った。
「結構人がいるね・・・。」
「ああ、1000人くらいいるんじゃない?」
確かここのホールのキャパが1000人ぐらいで、
今現状でそのキャパがいっぱいになっているのだから、
1000人ぐらい来ているということである。
「やっぱり先生の力ってすごいね・・・。」
「なあ・・・。」
私と柊は呆然と見るのであった。
劇は素人が出演しているもので、そんなにしっかりとしている感じではなかった。
そんな劇も小一時間ほどで終わったのだが・・・
「それでは代表であります私からご挨拶を・・・。」
舞台に上がっている先生が最後の挨拶をしだしたのだが・・・
5分経過・・・
10分経過・・・
20分経過・・・
「・・・なあ、竹中。」
「・・・帰る?」
「ああ・・・。」
こうして私と柊は一緒にホールを出たのだが・・・
いざ玄関ホールに出ようとしたところには、多数の人が待ち構えていたのであった。
「・・・あれって?」
「たぶん・・・宗教・・・。」
「・・・まじか・・・。」
私と柊はホールの上から玄関ホールを見守っていた。
「とりあえず突っ切る?」
「いや、しばらく待ってから、みんなが出てきたところに混じって出る方が
捕まらない可能性が高いんじゃない?」
「そうだな・・・じゃあ、そこで座ってるか。」
柊と一緒に近くにあったベンチに座って上から様子を見ていると、
「・・・お腹がすいた・・・。」
「何も食べてないの?」
「そう。まあ、すぐに終わるしと思ってね。試合が終わって直で来たから。」
「ジュースぐらい買ってあげるわよ。」
そう言って、私は近くの自販機に行くのだが・・・
「・・・ねぇ?」
「おしるこって飲める?」
「・・・飲めない・・・。」
「そっか・・・。」
「・・・不吉な予感しかしないけど、もしかしておしるこだけ?」
「いい感してるね。」
「・・・そんないい感いらないけどな・・・。」
私はピッとおして、柊に渡してあげる。
「・・・しかも冷やしかよ・・・。」
「まあ、季節的には冷たいので合ってるんじゃない?」
「そうだけど・・・。」
ものすごーく警戒しながら、柊はタップを開けて、おしるこを飲みだした。
「・・・。」
しかも無言で・・・
「そんなに美味しくないの?」
「う~ん、得意な人はイイだろうけど、俺はちょっと苦手かな。」
「そんなものかね?じゃあ、ちょっと頂戴。」
そういって、柊の手からおしるこを取って、一口飲むのだが・・・
「・・・ああ・・・好きな人は好きだろうね・・・。」
別におしるこ自体は食べれるけど、思った以上に冷たくしたせいか甘い!
ちょっと甘すぎて私には無理かな・・・
すっと柊に戻すのだが、柊が飲むのを躊躇する。
「・・・何で躊躇してんの?」
「いや、このままだと間接キスだなって思ってな・・・。」
「そんな細かいことを気にするわけか?君は?」
「細かいか?」
「仕方ない・・・。」
そういって、柊のスキを突いて私は・・・
キスをする!
「!?」
柊の目が見開くが、
「さて、私と直接キスしたわけだから、今更間接キスぐらい気にしないだろう?」
「お、お前!?」
「あ~はいはい!そんな細かいことを気にしない!
結果は変わらないんだから。はいはい、飲んで。
そろそろ人も出てきたし、紛れ込んで帰ろうよ。」
平静を装いながら、柊に進めている・・・のだけど!
内心はバクバクしまくっていた。
何気に初のキスだからか、柊にしてしまったのか、
どちらかは分からないけど、心臓がバクバクしています!!
その後は何か言いたそうだったけど、柊はおしるこを飲み終えて、
ごみ箱に捨てて、立ち上がる。
それにつられて、私も立ち上がりながら、
「じゃあ、帰りますかね。」
私と柊は一緒に帰っていったのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




