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柊君へ ~Another Story~  作者: Taさん
第一章
13/201

保田さんと加賀さんと磯野さん ~1~

幼馴染3人のうち、保田さんと加賀さんの話です!

~保田さん談~


ひーちゃんと私は幼稚園の頃からの付き合いだ。

(ひーちゃんとは、私が柊君を呼ぶ時のあだ名です。)


私の親がやっている中国拳法の道場に通いだして、

同い年で仲良くなった。


幼稚園は違うので、道場での出会いしかなかったのだけど

私の中ではすごく仲良くなれていたと思っている。


その関係は小学校から高校まで一緒の学校に行って続いていた。

大学は私は地元に、ひーちゃんは関西に行ったので別々になってしまったのだが、

結局は家も近所で、親御さんたちも仲がいいので今でも付き合いがある。


ちなみに今でも付き合いがあるのはひーちゃんと加賀さん、磯野さんの4人だけになったけど

その分、深い付き合いが出来ていると思っている。




みんなが持っている強くて、男らしいと言うイメージを言うのだけど

私の持っているイメージとは結構乖離があるんだ。


幼い頃は本当に良く泣いていたと思う。

今考えれば当然で、自分よりも強い人達と

殴り合って勝てるわけもないのに

それでもずっと散打(組手のこと)をして、

負けて泣いてを繰り返していたひーちゃん。


私の中では、泣き虫ひーちゃんだ


それとひーちゃんには秘密があって、

幼い時から体が弱くて、よく学校を休んでいた。


それとは別に先天性の持病をも持っている。

突発的に発病しては、数日とか数週間とか入院していることがあった。


だから私はいつも心配になってしまう。

私の目に頑張りすぎのように映ってしまうその行動に・・・


そんな私の心配にひーちゃんが言っていた、


「ごめんね心配かけて。だけど突然動けなくなるからね。

 だから、今を一生懸命に過ごすんだよ。

 思ったことが出来ているうちに、思ったことをやるって決めてるんだ。」


私は健康体であり、その気持ちが正直100%理解は

出来ているかと言われると絶対と答えることは出来ない。


以前に一緒に寝ていた時のことであるが、

声を殺して泣いているひーちゃんのがいた。

本当に消えるような声で、


「大丈夫、発病なんかしない。」


不安に歳稀ながら戦っている。

また持病が発病してしまうんじゃないかと不安にからている。

そんな彼に大丈夫何って無責任な言葉を私は言ってあげれない。


だから、私は、


「いつまでもどこまでも応援してるよ。」


そう言葉を掛けている。


「いつまでもって、重いな~。」


と笑われることもあるが、この言葉を掛けた時に、

照れながらありがとうっというひーちゃんが私は大好きだ。



ちなみにひーちゃんとは中学、高校に一度ずつ付き合ったことがある。

別れたのは両方とも・・・若気の至りかな。


詳しく理由を聞きたい方はひーちゃんに聞いてくださいね~。



今のひーちゃんは、会社を辞めて自分のコンサルティング会社を立ち上げている。


この話を聞いた時には驚いたが、着実に前に進んでいるようで、

ついには支部を地元に出すところにまでになっていた。


自分で会社を起業する何って驚きで、

そんな人何って私の傍には1人もいなかった。


正直、凄い人だっという、単純な感想しか思いつかない。

だけど、私は何の心配もしていない。


ひーちゃんならきっと成功できると思っているから。

だから、


いつまでもどこまでも応援しているよ、ひーちゃん!




~加賀さん談~


柊君と幼稚園から一緒だけど、本当に仲良くなったのは

同じピアノ教室に通っていたからです。


ただし、私はヴァイオリンをしていて、柊君はピアノを習っているのだけど。


私の母親がヴァイオリンをやっている影響で

私は幼いころからヴァイオリンをやっている。


母は音楽学校時代の同級生がやっている音楽教室の一部屋を

貸してもらってヴァイオリン教室をやっていた。

そこに、私はヴァイオリンを、柊君はピアノを習いに来ていた。


同じ場所に通っているとはいえ、話すきっかけはなかったのだが、

教室についたら、出席帳を書かなければならず、

そこに氏名と来た時間、帰る時間、それと何をしたかを記述する。


私がそれに気づいたのは小学校1年生の時である。


「あ、この子、字がキレイだ。」


私が書いていた出席帳は小学校までの生徒が記述するのだが、

その記述している子供達の中で、一番きれいな字を書いていたので

私の目がすぐに吸い込まれた。


柊君てこんな字を書くんだ・・・


幼稚園が一緒なのは知っていたが、まだ話したことはなかった。

教室では挨拶はするけど、そんなに話すこともなかった。

だけど、このきっかけで、


「柊君ってキレイな字を書くんだね。」


声をかけて、話すことになったのだ。


音楽教室以外に学校でも話すようになって、

ある時、柊君の親御さんと私の母が話していた時に、

柊君が書道で賞を獲ったと教えてもらった。


私は、母と一緒に展覧会に行って、すぐに柊君の字を見つけた。

やっぱり私が思った通り、キレイな字だ・・・。


周りに並ぶ時よりもよりバランスが良く、整った字で、一段とキレイに見えた。

母も「キレイな字ね」とほめていて、やはり大人が見てもキレイな字なんだなと思った。


興奮冷めやらぬ私に対して、柊君は苦笑しながら私にお礼の言葉を述べるのだが、

もっとすごいでしょうって胸を張って言っていいと思うのだけどな・・・。


この頃から毎年の柊君は書道の賞を獲っていて、

私は毎年観に行くのを楽しみにしていた。



それは小学校6年生の時であった。

その歳もまた賞を獲ったので、私はいつも通り観に行っていた。

展覧会場には自分の書を見ている柊君を見つけて、

私はすぐに声をかけに行く。


「おめでとう、柊君!」


「ああ、加賀、ありがとう。」


いつもの苦笑する柊君がそこにいた。


そのまま話をしていると、

たくさんの大人を引き連れた地位の高そうな男の人が柊君の傍にきて、

展示されている書を見始めたのだ。

そして、


「一応、私の名前が冠した賞だからね、どんな字かを確認しないとね。」


胸飾りを見ると“市長”と書かれており、

この男性が市長なんだっと思う反面、


何で市長が選んだ賞なのに、知らないんだろう?という疑問が湧いた。

だけど、そんな疑問も次の話で吹き飛んで行ってしまう。


「しっかし、この柊って子は面白みのない字を書くな。」


私は耳を疑うような発言をする市長におどろくのだが、更に驚くべき話が続く。


「はい、彼は・・・型にはまった字を書きますね。」


「そんなので大成するのかね?」


「いえ、しないと思います。まあ、彼は小学校のうちまでですよ。」


「そうだろうな・・・。それに私の好みはこっちの大賞の子の字の方が好きなんだけど。」


「ああ、この柊っていう子は妹がいるんですけど、その子が市長賞に選ばれたので、

 兄弟で選ぶと写真映えするという意図もありまして。」


「ああ、そういうことか。妹の方は・・・。」


そう言って、市長が柊君と同じ苗字を見つけて、唸る。


「こっちの方が味があるな!」


「はい、彼女はきっと将来一流の書道家になれると思います。」


「良かったな、こっちの兄は。妹のおかげで私の賞がもらえるんだからな。」


「まったくです。」


笑っているこの大人達は知らないのだろう。

その字を書いた兄の柊君がいることを・・・。


「・・・柊君・・・。」


大人たちが立ち去った後で、柊君に声をかけるが、


「大丈夫だよ。何か見苦しいところ見せちゃったね。」


笑いながら私に答えてくれる。

ただ、その手はギュッと握られていて、

悔しさをジッと我慢しているのだろう・・・


その後は、先ほど侮辱していた市長と書道連盟のお偉いさんが

柊兄妹と写真を撮っていた。

次の日の新聞には柊君達が写っており、


“天才兄妹”


と書かれていた。


これをどんな気持ちで柊君は見ているのだろうか・・・。


みんなから才能がないと言われた柊君なのに・・・


妹のお飾りと言われた柊君なのに・・・




そして、彼には更なるひどい現実が突きつけられる。


小学校最後の冬休みを終えて、音楽教室に来た時のことであった。

柊君がピアノの先生に呼ばれたのである。

その部屋の前で私は聞き耳を立てていると・・・


「柊君・・・ハッキリと言って貴方に才能はないわ。」


残酷な宣言を突き付けられていたのだ。


「中学校に入っても続けるのもいいと思うの。

 だけど、ピアノで生きていこうとは思わないでね。」


そう、優しくも残酷な宣言を柊君は突きつけられていたのであった。



小学校6年生で、2度自分の頑張ってきたことを

全否定されるってどういう気持ちなんだろう・・・


私なら絶望に暮れてしまうかもしれないのに、

私の前にいる柊君は笑顔を絶やしてはいなかった。


一応、卒業式までは練習に来るらしい。


うちの小学校は伴奏をすべて生伴奏で行う。

入退場は先生が引くが、残りは卒業生が弾いていく。


柊君もその係に選ばれていたので、

それを最後の曲として練習をしていた・・・。



私は中学3年生になった時に、先生から

文化祭でヴァイオリンを弾いて欲しいと頼まれた。

だから、逆に私はある提案を先生にしたのである。


「加賀・・・何で俺を伴奏に選んだ・・・。」


私は30分の演奏時間に引く曲の一曲に、

ピアノを伴奏する曲を入れると言って、

その伴奏者に柊君をお願いしたのだ。


「ええ、だって、柊君弾けるじゃん!」


「・・・すでに3年弾いてないけどね・・・。」


そう言って、今回一緒に弾く曲である『主よ、人の望みの喜びよ』を弾きだす柊君。

この曲は卒業式の時に弾いた曲で、そして私の思いも詰まっている曲である。


何とか引き終わった柊君。


確かに、うまくはないと言うのが感想だ。


指がうまく動いてないのも分かるし、

もともとのレベルもそんなに高くないので四苦八苦している。

だけど、私はこの曲が好きだ・・・いや、柊君が弾くこの曲が好きだ。


私は卒業式の時の曲を携帯に入れている。


休みの度に海外に留学していた私は、辛い時や泣きたいときにこの曲を聞いていた。

拙いけど・・・一生懸命な曲を聞くと、また頑張ろうという気持ちになったからだ。



だから、私は文化祭で柊君と一緒にこの曲を弾きたいと思ったのだ。


これから私は高校を東京の芸術大学付属高校へいく。

だから、最後の思い出にこの曲を、今度は聞くだけではなく、一緒に弾きたい。



高校を卒業して、渡仏して、パリの国立音楽学校に入学して、

しばらくは向こうの楽団で、そして日本に戻ってきても

東京の楽団でヴァイオリンを弾いているのだが、

今だに私は中学校の時に弾いた曲を大切にして、いつも大事な時に聞いている。


4月の私の誕生日には私の好きな花束が届く。

今年も届いたのだが・・・


「よく覚えてたよね・・・。」


私が音楽教室で言った言葉を覚えていたのだろう。

毎年私の誕生日にユキヤナギが入った花束が届けられる。

東京の交響楽団に入った時には鉢で届いて、

今では我が家の庭に植えられている。


今日の演奏会に聞きに来ていると言われたので、

みんなに頼んである一曲を入れてもらった。


私達の思いでの曲 『主よ、人の望みの喜びよ』


幼馴染との今日も私は聞いて、そして弾くのであった。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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