矢田さん ~3~
いよいよ、2年が経過して地元へと戻った時、
いの一番に会ったのは、他でもない柊だった。
「おかえり。」
柊家の面々が駅まで車で迎えに来てくれていたのである。
その中で、私の前に現れた柊が戻ってきたことの挨拶をしてくれたのである。
「・・・ただいま。」
2年も経過しているというのに、
全然そんなに時間が経過している感じはしなかった。
それもそのはずだろう!!
柊の写真はこの2年間で何枚も見ているのだから。
ただ、実感はしていなかったのは、
「身長伸びたね。」
「もう矢田とはだいぶ離れたね。」
私がこっちを出る前はそこまで大きな身長の差はなかったのだが、
今はずいぶんと目線が上に行っている。
本当に二年間会ってなかったんだな・・・
そう時間するのだが、それでも時間の流れを体験したのは、そこだけで、
あとは・・・
「本当にあそこの店、コンビニなったんだね!?」
「ああ・・・。それに、ほらあそこ!あそこはうどん屋に代わってしまってるよ。」
写真を撮ってわざわざ教えてくれていたので、どんな変化があったのは知っているんだが、
本当に変わっているところを見ると思わず驚いてしまうのであった。
その後も柊と後部座席に並んで座って、色んな事を話しながら
私の新居へと向かうのであった。
家に帰る前に、こちらのラーメンを矢田家と金子家で食べて、
懐かしい味を思い出し、私の新居へと向かう。
家に着いた頃にちょうど引っ越し業者も到着したようで、
引っ越し業者と話した後は荷物の搬入をするのであった。
「ちょっと柊君とそこら辺を散歩してきなさい。」
「はーい!」
引っ越し業者の搬入中は、さすがに子供は邪魔のようで柊と共に
どこかに行ってきてと言われてしまうのだが、
「じゃあ、こっち!」
そういって、私を引っ張手柊がどこかへと連れて行ってくれるのであった!
そこは新居からは数百メートルほど離れたところで、
だけど、私はなぜここに連れてこられたのかが皆目見当がつかなかった。
「どうしたの?」
私の質問にニヤリとした笑みを浮かべて、
目の前にあるマンションの中へと入って行くのであった。
エレベータに上って、上へと上がり、
そのまま歩き出す柊の後ろを私はついていく。
柊の足取りは迷うことなく、進んでいき、
そしてとあるマンションの玄関先で止まったかと思ったら、
インターホンを鳴らすのであった。
「はい?」
男の子の声が聞こえて来たと思ったら、
「オレオレ。」
「・・・詐欺は結構です!」
「いやいや、気づいているだろうに!柊だっての!!」
「・・・どちらの柊でしょうか?」
「ちょっとまて!!確信犯で俺に聞いてるよな?
っていうか、お前の家のインターホンって、外も見えるだろう?」
「・・・。ちょっと今、カメラが曇ってて・・・。」
「このタイミングで!?お前、それは悪意しかないだろう!?」
「そんなことない!!俺は善意の塊だからな!」
「じゃあ、今すぐ開けろ!
じゃないと・・・とりあえず廊下側の窓から割って入ろうか?」
そう言いながらすぐ近くにある窓をノックする柊に、
インターホン越しの相手が慌てて、
「すぐ開けるから!割るなよ!」
慌てて、こちらに向かってくるのであった。
そして出てきたのは、
「矢田さん、お帰り。俺のこと覚えてる?」
そう言って、私を見てくるのだが、
たぶん・・・小学校の記憶だけでは回答できなかっただろう・・・
だけど、いつも送られてきた柊からの手紙を見て、
だれだかはハッキリと分かっている。
「深田君だよね。」
「うぉぉ!?良かった覚えていてくれたみたいで!!
さあ、矢田さん!入って入って!」
「う、うん。」
柊を見ると柊も中に入るように私を促すのであった
だから、私は促されるように中へと入って行く。
玄関先で靴を抜いで、リビングへと通されるのだが・・・
私がリビングの扉を開けると同時に、
「「「矢田さん!お帰りなさい!!」」」
元3,4年生の時のクラスメイトがリビングに居たのであった!!
私は思わず大きな声で驚いてしまう!
「ええぇ!?・・・ど、どうしてみんなここに?」
「そんなの矢田さんのお帰りなさい会をするために決まってるじゃん!」
みんなが口をそろえて言ってくれたのであった。
その言葉を聞いて、私は思わず泣きそうになってしまうのであった
っというか、完全に涙があふれて泣いてしまっていたのである。
話を聞けば、柊がこの会をわざわざ企画したらしい。
元クラスメイトも休みの日であるためか、参加できるのは10人ほどであったが、
それでも十分に嬉しいのは当然だ。
さらに何で深田君の家が選ばれたかといえば・・・
深田君が壁側にカーテンがかけられている部分に手をかけて、
「じゃーん!ここから、今度俺達が行く中学校が見えます!」
そう言って、カーテンを開いてくれたのであった!
そこには今度行く中学校は当然見えていたのだが、
“Welcome to YADA Chan!"
窓にそんな言葉が書かれていたのであった・・・
その真ん中には次に行く中学校が見えていて、
それを〇で囲って、まるで絵のようにしていたのである。
それを観ただけで私はまた泣きそうになってしまうのであった・・・
「ほらほら、泣かずに写真を撮ろう!」
柊に促されてみんなで笑顔で写真を撮るのであった。
どうやら、小学校の時の先生が転勤になったらしいので、
この写真を送っておくとのことで、そこにここで集まったみんなで
寄せ書きもして送ることになったのだ。
私も寄せ書きに書くことになったのだが・・・
“戻ってきました!”
その一言を書いた時に、本当にここに戻ってきたんだなとしみじみ実感して、
また泣いてしまうのであった。
ここに戻ってこれて良かったと思う。
だって、こんなに歓迎してくれる友達がいるんだから!
そして、わざわざこんな会を開いてくれた柊にはものすごい感謝をしているのであった。
ちなみに私がさんざんその会を楽しんだ後に家に帰ると、
「どうだった?柊君の会は?」
「な、なんで知ってるの!?」
「だって、柊君から連絡受けてて、聞いてたからね。」
にんまり笑うお母さんに、ちょっとだけイラっとしてしまう。
「し、知ってたなら教えてくれてもいいじゃない!!」
「え~だって、秘密って言われてたもん!」
「それに昼間、柊に迎えに来てくれることも私に黙っていたし!!」
「だって、せっかくなら驚きの再開にした方がいいじゃない♪
お母さんからのサプライズよ。」
笑いながらそんなことを言うお母さんを私はものすごく強く睨むのであった・・・
「柊君にはお礼を言っときなさいよ。」
「分かってるから!!」
怒りながらも、柊という言葉を聞いて、今日の会を思い出してしまい
思わず顔をがニヤついてしまうのであった・・・
そして、それを見たお母さんが、
「ふふふ・・・、よっぽど楽しかったのかしらね?
まあ、柊君をお婿さんにしてもいいのよ。」
「ちょ、ちょっと!!お母さん!!そんなんじゃないからね!!」
はいはいと言いながら、台所へと向かうお母さんを
恨みながら私は自分の部屋へと行くのであった。
そこにはまだまだ箱詰めのままの荷物があり、
「さてと・・・荷ほどきをしていこう・・・。」
こうして、私の休みは潰れていくのだが、
荷ほどきをするたびに思い出の品が出てきて、
それを見るたびに思い出に浸って、全然苦にはならなかったのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




