久本くん ~1~
中学3年生の時に区内大会で、100メートル走で優勝をした。
市内大会に行くと準決勝まで残れたが、そこで中学3年生の夏は終了したのである。
そこから勉強を始めて、気がつけば学区内にある高校であればすべてA判定が出るくらいまで
成績が上がったのだが、家から一番近いという理由で今の高校を選んだ。
まあそれと、頭がいい高校であれば、運動が出来る人間がいないだろうと思って
俺の成績ならきっとエースになるだろうと淡い期待をしてい選択したのであった・・・
ただ、そんな考えは入学して、すぐに崩れ去るのであった・・・
入学式を終えて、俺はすぐに陸上部に行ったのだが、
そこには一年生2人がすでに部活に入っていることを知った!
「ど、どうして・・・。」
そんな俺の疑問に陸上部の先輩が、
「1人は推薦で来たんだよ。
もう一人は一般だけど、先生が春休みから呼んでんだ。」
「そ、そうなんですか・・・。」
推薦で来たって事とは早いのかな?当初の認識はその程度だった。
更にもう一人の一般は俺と同じだし、よっぽど陸上が好きなんだろうと思っていた。
だけど、この2人が俺の天狗の鼻をへし折ってくるのであった。
向こうは春休みから来ていたと聞いているのだが、
俺も何だかんだで週一で部活に参加して、
更には夜になると毎日のように走っていた。
だから、そんなに筋力が落ちているとは思っていなかったし、
すぐに走れる状態になっていると思っていた。
実際、春休みに母校で練習に参加させてもらって、
タイムを計ると12秒8とベストからは程遠いけど、
土のグランドでのタイムであれば、ベストに近いのでは?と思っていた。
だから、自信を持っていたのに・・・
「とりあえず・・・新入部員3人でタイム計ってみるか?
受験勉強で体がなまっているだろうから、遅いと思うけど。」
自発的に入部しに行った次の日に、
現在、入部が決まっている3人での100メートルのタイムを計ることになった!
ハッキリ言って自信があった!
この2人に俺の実力を見せる時だと思っていた!!
この2人は別々の中学だったようだけど、
どうやらお互いよく知っているようで、
「とりあえず宮本に離されないように頑張るわ。」
「またまたご謙遜を!負ける気なんて絶対ないよね!」
笑いながら二人がスタートラインへと向かっていた。
・・・正直、2人とは今だに馴染めていない・・・
まあ、まだ会って二日目だししかたないけどさ・・・
スタートラインに向かう途中で、
「宮本と久本君は好きなコースある?俺別にどこのコースでもいいから、
2人が好きなコースがあるんあら選んでいいよ。」
「じゃあ、左端で!」
宮本君がすぐに柊君の言葉に反応する。
あとは真ん中か、右端になるのだが・・・
「じゃあ、俺は真ん中で・・・。」
一番好きなのは真ん中のコースなので
真ん中のコースを希望すると、
「OK、じゃあ、俺は右端で。」
すんなりと受け入れてくれた。
いよいよ、100メートル走が始まるんだ・・・
俺だって区内の優勝者だ!見劣りはしてない!!
その自信をもって、スタートラインへと並んだ。
ここで、ふとしたことにきづいた!
さっきまで笑顔で話していた2人が一切話声を出さないことに!
そして、2人の顔を伺うのだが・・・
ものすごい真剣な顔になっているのに気づいたのである!!
さっきまでと全然違う!?
さっきまでお茶らけていた2人だが、
今は無言で、スターティングブロックを調整していた。
そして、その後のスタート練習も無言で行う。
もうすでに空気は試合の時と変わらないか、
むしろ今まで俺が味わったことがない空気になっていた。
それぞれがスタートの練習を終えると、
スターティングブロックの後ろに並んでいた。
柊君の方は、ただただ真っ直ぐ前を向いており、
宮本君の方は静かに目をつむって下を向いていた。
「じゃあ、始めるぞ~!」
先輩達がギャラリーとして俺達が走るコースの傍に並んでいた。
・・・見られると緊張するな・・・
そんな緊張をしている俺をよそに2人は、何事にも変化することなく、
最初の姿勢を一切崩すことはなかった。
そして、先輩がいよいよ声をかける!
「オンユアマーク!」
その言葉と同時に2人がすぐに反応する。
俺も慌ててスターティングブロックへと構えをするのだが、
2人はゆっくりと構えていく。
俺がすでに構え終えているのにも関わらず、
まだ深い息を吐いている2人。
しかも微妙に動いている気がするんだけど・・・
その後、やっとスタート姿勢になる2人に
ちょっと内心ではイラつきを覚えていた!!
こんな練習でそんなに時間をかけなっくてもいいじゃん!!
「セット!」
先輩の声が聞こえて来たので、慌てて雑念を消して、
スタートに集中する!!
パン!!!
ピストルが鳴ると同時にスタートをするのだが、
前傾姿勢で右にいる柊君の姿を捉えており、
少しだけ前にいるな!という認識であった!!
これなら後半行ける!!
自分が後半に伸びるタイプなのを知っていたので、
そう確信をして顔を上げるのだが・・・
すでに1メートル程前に宮本君がいるのであった!?
え!?
だって、まだスタートした直後だよ!!
っと思った瞬間に、右に居た柊君がドンドン前へと進んでいくのである!!
すでに10メートルほどしか進んでないはずなのに、
2人から1メートル以上離されるのであった!!
その後はドンドン離されて行ってしまう!!
後半伸びるタイプ?
バカか俺は!!!
完全にそれが自分の自惚れであったことを自覚するのである!
走れば走るほど離されて行ってしまう!
結局ゴールする頃には柊君とは10メートルほど、
宮本君とはそれ以上離されていたのであった・・・
2人がゴールしてやっとゴールする俺・・・
タイムもこの間中学校で計った時と変わらない・・・
自分の実力は出し切ったというのに、歯が立たなかったのであった・・・
俺が2人を呆然見つめている。
2人は、今走ったばかりなのに、
「久本、後半やっぱり腰が落ちるね~。」
「やっぱり!!なんか柊の足音が近づいているのを感じたんだよね~。」
「それでも追いつけなかったけどね。」
「まあ、スタートが遅いとどうしても無理だろうね。」
「スタートは‥ハードルの癖で左右に大きく足を振ってしまうんだよね~・・・。
アレを何とかしないと厳しいか~。」
2人ともが自分の反省点を見つけて、その場で練習し始めるのだった・・・
アレだけ早いのに・・・
呆然としている俺に対して、先輩が、
「どうだった、あの2人?」
「・・・早かったです・・・。」
「だろうな・・・柊の方は専門がハードルとはいえ、
中学の200×4のリレーで県一位のチームの準エースだし、
宮本に至ってはお前らの代の100メートル県一位だからな~。
ほんとトンデモナイ連中が同級生で、久本には同情するよ。」
その言葉の衝撃は凄まじいモノであった・・・
俺が市内どまり、対して2人は県でも一位・・・というか、全国区の選手なのか・・・
俺のこの高校でやっていけると・・・
いや、エースと思っていた思いがもろくも崩れていくのであった・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




