2.冒険の始まり
僕は今とある少女の部屋にいる。
どうやらここは地下らしい。日の光が入ってこない。まあ、窓もないし……
「コーヒーか紅茶どっちがいい?」
「あ、じゃあコーヒーで……」
椅子に腰掛け考えこむ僕。いや、まず今の状況を教えてよ!!という突っ込みを抑えながら自力で理解しようとする。
アチアチ言いながら少女は二人分のコーヒーを木製のテーブルに置いた。
「遅れてすまないね。俺の名前は『ファヌエル』だ。今日からここがお前の家になるな。まあ、よろしく。」
「あ、あの僕の名前は霧神伶です。よ、よろしく?お願いします。」
僕は何をよろしくお願いするのか、と自分で自分を突っ込む。
……イヤイヤイヤイヤイヤイヤ、何その唐突な同棲宣言は!!
「あっ、ちょっ、待って下さい。僕まだ今の状況が分からないんですけど!」
ファヌエルさんは一瞬キョトンとしてあっそだねーみたいな雰囲気で話し出す。
「ふふん、そう来ると思ったぜ。お前は俺が呼び出した戦士だ!」
「と、言いますと?」
「ここはお前が居た世界とは違う異世界ってやつだ!」
「と、言いますと?」
「俺はお前の望みを叶えてやった天使だ。」
「じゃあ魔法とかも使えるんですか?」
「ああ、もちろんさ。まあ、ここで生活していくうちにわかるさ。まあ、本題に入ろう。」
「本題?」
ファヌエルさんは椅子から勢い良く立ち上がり『ビシッ』と人差し指で僕を指さす。
「俺の為に冒険者になって金を稼いでこい!」
「面白そうだから了解です。」
ファヌエルさんは予想外の反応が返ってきたからなのか一瞬動きが止まるが再び動き出す。
「えぇーっと、お前はその……僕はお前の奴隷なんか嫌だぞ!って思わないのか?」
次は僕が止まってしまう。
「えぇ……僕は別に冒険とか好きなので問題無いですよ。それに僕が人を助けるなんてこと出来るなんて初めてで……なんというか……頑張ろうって気持ちになるんです!だから、こちらこそよろしくお願いします。」
するとファヌエルさんは顔を真っ赤にして視線を床に落とす。
「まぁ、よろしく頼むよ……」
その姿は嬉しそうにも見えたが、何故か悲しそうに見えた。
ファヌエルさんは最後に小さな声であったが僕に感謝してくれた。僕も真っ赤になってしまった。
僕は長い長い冒険の道へのスタートラインに立ったのであった。