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プロローグ

太陽の日差しが背中に突き刺さり、コンクリートからも熱気が込み上げる。

泣き止む事を忘れた赤子の様にセミが泣きわめく。

さっきまで乗っていた電車は冷房が効きすぎていた事もあり

駅から家までの道はまるで、流れ作業で3人を焼き上げる為に

用意されたと錯覚してしまう程だった。


「こうも暑いと何もやる気起きねーよな」雅也が怠そうに言った。


「この程度の暑さでバテてるようじゃ侍になれないよ」

そう言った洋輔も暑さは堪え難い様子だった。


今年の夏は例年以上の暑さを見せ

ここ千葉県の本日の最高気温は38°と予想されていた。


そんな二人の様子を見て春香が思い出した様に

「ねぇ!明日から夏休みだしさ!海行かない?」


「おっ!!いいね!!海!!行こうよ」

さっきまでの夏を憎んでいた雅也だったが

女の子と海という事を想像し、夏に感謝をするご機嫌っぷりだった。


「やった!じゃあ明美と結衣ちゃんも誘って良い?」


「もちろんッ!」

雅也は即答だった。

三食の飯より女が好きというのは伊達じゃなかったようだ。


「去年、私たち三人で言ったら色々声かけられて大変だったんだよね」

「だから海でもボディーガード宜しくね♡」


「こんなチンチクリンにナンパするとは物好きもいるんだな」


洋輔の皮肉に、春香は一瞬、ムッと頬を膨らませたかと思う自慢げに

「あんた達、二人が大きいからそう見えるだけよ!」

「それに私脱いだら凄いんだから……!」


「へぇー」と興味のない洋輔とは相対的な雅也は

「それは興味深い……カメラ買ってこなきゃ」


「変態ばか」春香の視線が雅也に冷たく突き刺さる


「ほんと馬鹿だよなー雅也、お前ののスマホは防水なんだから、それで撮ればカメラ買わないで済むじゃん」

「あっそっか!やっぱ洋輔は天才だな!」

二人は面白そうに笑いあった。


その様子を物陰に隠れ、見ていた男達が飛び出して、道を塞ぐように立ちはだかった。


「げっ、またこいつらか」

雅也が怪訝そうな顔で言い放ち

「先週もぶっ飛ばしてやったのに凝りねえーのな!お前ら」

目の前のチンピラ3人を目の前に戦闘態勢に入っていた。


「その…今日は違うんだ…」

3人の中でも身体がガッシリとした剃り込みが特徴の石井が

いつもとは違って弱々しく言った。


「ハァ!?違うってなんだよ!待ち伏せまでしといてさぁ!」


「お前ら、海行くんだろ? 

 その……俺らも一緒に行ってもいいか……」


「意味わかんねーよ!!なんでお前らがついて来んだよ!」

高校に入って直ぐの頃から、雅也の金髪が気にくわないと呼び出したのが

このチンピラ3人だった。しかし見事に返り討ちにされ、それ以降こうして

待ち伏せしては返り討ちを繰り返している仲だった。

『海に一緒に行きたい』という発言は到底、理解不能だった。


「いいじゃん!行こうよ!多い方が楽しいって!

 それにこの人達、根は悪い人じゃなと思うよ」


「待ち伏せのあげく、盗み聞きするようなやつは悪人だろ」


「俺も雅也の意見に賛成だ。」


「夏の暑さにやられておかしくなったんじゃねーの?」

この雅也のあざ笑う態度に流石にカチンと来たのか

黒い髪を後ろでまとめ、年中ちょび髭の中田が

「お前ら、いい加減にしろよ」と睨んできた。


「やめろ、中田!」

すかさず石井はそれを抑制した。


「悪いな、邪魔したわ。……海楽しんでこいよ」

そう言って3人は去って行った。


「何だったんだ、あれ」

呆気にとられた様子の雅也


「なんか可哀想だったよ」

いつもと様子が違う3人を心配している春香に対して


「騙されんなよ。ありゃ剃り込みが春香の水着姿見たさの演技だよ」

と雅也は言った。


「……意外と近くにいたんだな。物好きが」

それを言い放った洋輔の腹に春香が渾身の左ストレートを放つものの

目標に到達する前に洋輔にキャッチされてしまった。


その瞬間、3人の足場が突如光り出し

春香、洋輔、雅也はまばゆい光に包まれた。


まぶた越しに光りが収まったのを感じてゆっくり目を開くと

3人は木々に囲まれていた。見渡す限り木が並んでいる。

空は雲一つ無い晴天だが、心地よい風が吹き、木々がざわめく音が聞こえる。

先ほど光っていた、彼らの足下だけは、焼き払ったかのように

雑草ひとつ生えていなかった。



「ここは・・・どこ?」


春香のこの疑問に誰も答えられる筈などなかった。

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