01 プロローグ
ある日、机の中に自分宛の見知らぬ可愛らしい封筒が入っていたら、健全な男子高校生は何を思うだろう。
まずはいたずらの可能性を疑う。しかし疑っていながらも期待してしまうだろう。
軽く周りを見渡し、自分を見ている者がいないか確認してからポケットにしまう。その後、徐にトイレに行き個室で誰にも見つからないように読んでしまうのは不可抗力だ。
その内容が女性が書いたような丸文字で「昼休み、裏庭に来てください」とあった場合、柄にもなくドキドキしてしまっても当たり前なのだ。そして、「どうせいたずらだろう」とか「いたずらだったとしても笑い話になるしいいや」とか自分に保険を掛けながら昼休みを心待ちにするのは健全な男子高校生として仕方がない。
ある日、自分とはあまり話したことがないクラス内で1、2を争う美人が「少し話があるの」と言ってきたら健全な男子高校生は何を思うだろう。普段キリッとしている彼女とは少し違い、顔を赤らめているように見えるのは錯覚だろうと考慮しても。
話しかけられただけでラッキーと思いつつ用件を聞くと、「ここじゃあれだから、ちょっと来て」と言われ誰もいない空き教室に招かれたとしたら。
何を言われるのか不安と期待で心臓の音が早くなるのを感じながら、彼女の言葉を待ってしまうのは健全な男子高校生として仕方がないことだろう。
ある日、放課後の委員会活動で遅くなった自分をわざわざ待っていた仲のいいクラスの女の子から「一緒に帰ろう」と言われたら健全な男子高校生は・・・まぁ、仕方がないのだ。
そう、だから、
「「「浅井君と(浅井と)(トシ君と)付き合えるように」」」
「協力してください」
「協力しなさい」
「協力して」
「へ?」
親友の浅井利隆にちょっと殺意を覚えてしまっても仕方がないことなのだ。