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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第九話 邪教、春の勧誘祭り! いまならポイント二倍!
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003

「そんでドラゴンの奴をこう、ズバーっとぶった切ってやったわけよ」


「「「おおーっ!」」」


 身振りと擬音によるセルシアの話を聞いた子供たちは目を輝かせている。



 食堂での食事を満喫したあと、一行はアノペドフに請われてついてきた。

 なんなのかと思えば、町の子供たちが集まっていたのだ。


「あ、若様ういーっす。今日は何で遊びます?」


「うむ、今日は町で辺境から来たという旅の者を見つけてな。

 辺境の話を聞かせてもらおうと思うのだ」


「すっげー! 流石若様!」


「ははは、苦しゅうない」


 何やらそういうことになったらしい。

 当初渋っていた一行だったが、ぽつぽつ話し出すと逐一感激され、興が乗った結果セルシアがノリノリで話し出した。


「ドラゴンって飛んだり火を吐いたりするんだろ?

 姉ちゃんすげえな!」


「いやー、でも割とギリギリよ? 前に見たことあったんで対策練ってたのもあるし。

 あとまー、ちんまいのがいなきゃ毒でやられてたかもねえ」


「それでもすげえ! どうやったらそんなに強くなれるんだ?」


「普通に鍛えてればいいんじゃないかしらねえ。

 まあ重要なのはあれよ、自分の力量を把握しておくこと。

 勝てないと思った奴には手を出さない、あるいは罠に嵌める等で弱体化させる」


「「「ほほーっ」」」


 その様子を見たゼフィルカイザーは正直驚いていた。

 旅に出たころのセルシアはと言えばアウェル以外眼中にない様子だった。

 最近はパトラネリゼのこともちょくちょく気に掛けるようになっては来たが、あくまでついでといった風だ。

 それからすると、こうして気さくに子供の相手をしている、というのは違和感バリバリだ。


『アウェルよ、セルシアは子供好きだったりしたのか?』


「んなことないぞ?

 いつだったかセルシアにいたずらした奴がいたんだけどな、全裸に剥かれて村の広場に逆さづりになったぞ」


「それよりもあれですよ、私はあんな風に優しく接されたことないですよ?」


「いや、お前はなんていうか、年下って感じがしないし」


「ひどい!? いや、成熟してるように見えるんだからむしろ褒められてるんですかね?」


 ぶつぶつと首を傾げるパトラネリゼを放置し、アウェルは話を進める。


「正直、村の中でのセルシアしか知らないからな、オレも」


『というか、何故お前たちは村の中でそんな扱いを受けていたのだ?』


「よくわからないけど、父ちゃんが村の人間でおっちゃんのこと特に嫌ってたのはトメルギアの人間だって言ってたな」


『どう考えてもそのせいだろうが……!』


 先ほどの内乱の話にも合致することだ。

 つまり、カーバイン攻めの余波を受けたトメルギア側の被害者たちの集落だったわけだ。そこに元凶が現れれば、そりゃあ八分にもするだろう。

 むしろ当人の力量があったためその程度で済ますほかなかったということか。さらにその状況でナグラスと付き合いがあったということは、


『存外、お前の両親とセルシアの父はあの地に居つく前からの知己だったのかもしれんな』


「オレもそんなんだったのかなーと思ってる」


 もはや当人たちがいないので推論に過ぎないが。


「いやいや、無理を言って済まなかったな」


 ふと、そんな声がかかる。誰かと思えばアノペドフだ。


「我が同胞にも広い世界を知ってほしくてな。これはと思ったものにはこうして話を請うているのだ。

 礼と言ってはなんだが、今日は我が家に泊まっていってほしい。生憎と父上も母上も留守であるが、使用人たちも歓迎しよう」


『嫡男殿、一つ聞きたいのだが』


「む、なんだね?」


『おいくつで?』


「当年とって十二になるが」


 己の知っている他の十二歳というと、ぶつくさ考え込んでいる賢者の少女。


『……この世界では幼いほうが頭がキレるのか?』


「いやいや、これも我が家の薫陶の賜物よ。大したことではない」


「ギモアって言ったっけ? すごい家なんだな」


「爵位で言えば下の方ではあるがな。

 しかし、この地がこうして実り豊かなのはご先祖のおかげであり、またそれに従って開拓を進めてくれた領民のおかげでもある。

 我自身が成したものなど何一つない――ゆえに、それを受け継ぐに足る男とならねばいかんのだ」


 尻尾をぱたぱた振るわせながらそう言うアノペドフ。これで小六か中一と言われても違和感しかない。


『辺境では、トメルギアは荒れているという話であったのだがな。

 こう見ると流言の類だったということなのか』


 そう感想を漏らすと、元気のよかった尻尾がとたんに萎れる。何か気に障ることでもあったのだろうか。


「そんなことはない。我が領地はよいのだがな、近隣ではもめ事が絶えぬ。

 我の生まれる前の話だが、この国では内乱があった。

 この近隣の領主はその時、功を挙げんと躍起になったそうでな。結果、ギモア領は周囲からの流民に悩まされることになった。

 だが、父上はこれを追いやることをせず、受け入れた。

 当初は大変で、いたるところで諍いがあり、一族郎党もその仲裁に駆けずり回っていたそうだ。

 しかし、努力を惜しまなかったおかげで領地はさらに豊かになった。だがその分、近隣の領地は貧しくなってしまった。

 加えるに、昨今公都のほうからの流民が絶えぬ。

 それも着の身着のまま、ほうほうの体で逃げ出してきたようなものばかりでな。

 仕方なく、また新たに村を起こしてそこで流民を引き受けんとしておるのだ。両親が留守なのもその調停に絡んでのことよ」


「……両親が留守ってところだけわかった」


『美味い料理屋ができたから他の店が閑古鳥。美味い店は客多すぎて人手不足』


「よしわかった」


 こうやって要約はしてやるが、正直ゼフィルカイザーも政経は専門外だ。

 その手合いの知識は例によってロボットアニメ由来のものがそこそこあるくらいで、いわゆる内政チートができるような知識は皆無である。当人が政治に絡んだ話に関わりたがらないのもこの辺りによるわけだが。

 子供たちの喝采を浴びているセルシアを見ていてつくづく思う。


(実際、ヒロインがお姫様、で済むうちはいいんだがなあ。当然背景事情やらなんやらがあるわけで。

 子供向けのうちはいいんだが大きいお友達向けになるとその辺の事情がモロになあ)


 昔のアニメはよかった。だって子供向けだったし。


 そう思わざるを得ないゼフィルカイザーである。


「しかし辺境では魔物が多いのだな」


「そう考えるとトメルギアは少ないですねえ」


「我が領地に関して言えばそうでもない。実りが豊かな分、畑や牧を荒らす魔物がちらほら現れるのだ。

 今新しく開拓村を作っているあたりも、魔物が頻発しておってな。

 当家は父だけでなく母も騎士叙勲を受けている身であるので、駆除に行っておる。なので今は我が所領を守らねばならんのだ」


「六面鳥といいビーフトンといい、農業や畜産が盛んなんですね。でも辺境ではそんな話ちらりとも聞かなかったんですが」


「ビーフトンはこの近隣の領地に売る分しかないし、六面鳥はまだ数が少なくてな。我が領地で出す分以外は公都や一部の名家に献上しておるくらいよ」


「えー、でも遠くに売ったほうが儲かるじゃないですか」


「阿呆が。儲けよりも隣人の空腹を満たす方が先であろう」


 ぐはっ、とダメージを受けて倒れ込むパトラネリゼ。

 以前から思っていることだが、この少女は賢者より商人のほうが向いているのではないだろうか。

 しかしアノペドフも気まずそうに頬をかく。


「とは言うが、まあどちらかというと近隣領主の恨みをそらしておくためというのが本命でなあ。

 逆恨みではあるが無視しておくと爆発しかねんし、王家は調停の役に立たんし。

 あと、最近は厄介なものが流行っておるしな」


『厄介というと』


「シンフェギメルア教、というのを知っているか?

 なんでも魔法文明を滅ぼしたという邪神を崇め奉る宗教らしいのだが、それがいたるところに布教しておってな。

 我が領地では禁止令を敷いているのだが」


「件の邪教とやらですか。どういう集団なんですか?」


 カーバイン以降ろくに情報が拾えていないせいでその全体像が掴めていないのだ。


「人の嫌がることは率先してやろう、という宗教らしい。

 それでポイントを溜めていき、ポイントが溜まるとクラスが上がり恩恵を受けれるとかなんとか」


『なにその頭悪い集団』


 これまで深夜アニメのような話をしていたのが途端に80年代の18時枠の匂いがしてきて戸惑いを隠せないゼフィルカイザー。

 とはいえあのハクダという女を思い浮かべると納得も行く。


「実際わけがわからんからな。そりゃ父上も領地に出入り禁止にするわ」


「そんな奴らの拠点に行かなきゃいけないのか」


 渋い顔をするアウェルだが、セルシアが止まらないのを一番知っているのもアウェルだ。

 アノペドフはその言葉を聞いて首を傾げた。


「そなたたち公都へ向かっているのか?

 悪いことは言わんからやめておいた方がいいぞ。近頃はろくな話を聞かん」


「それは重々承知なんですけどねえ」


「なんだったらしばらく我が領地に逗留していかんか?

 ギモア男爵領は人材を求めているのでな」


「そういうわけにもいかないというか」


 何せセルシアを狙っている人間が約一名いる状況だ。長居すれば迷惑をかけることになりかねない。

 アノペドフも何らかの事情を察したのか、それ以上は食い下がらなかった。だがそこに切羽詰まった声がかかる。


「ところでいつになったら拙者を助けてくれるでござるか!?」


「いいじゃん、人気で」


 セルシアが声をかけた先では白黒の怪鳥が特に小さな子供に構われ、羽を引っ張られたり羽毛をむしられたりえらいことになっていた。

 見たことのない人種だから珍しかったのだろう。

 セルシアとアウェルが旅に出てからこちら、これほどに穏やかな時を過ごしたのは初めてだった。

 特にトメルギアに来てからの息の詰まり具合からすると、こうして気を抜ける時間が如何にありがたいか。

 そう、皆気を抜いていたのだ。それを迂闊と言えば、それまでだった。


「おい、てめえら動くんじゃねえ!」


 広場に大声が響いた。声のする方には黒いローブで全身を覆った男が、小さな女の子を捕まえてナイフを突きつけていた。

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