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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第九話 邪教、春の勧誘祭り! いまならポイント二倍!
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001

 トメルギアに入ってから半月が過ぎた。

 辺境に比べれば道は整備されており、集落の密度も高い。魔物も辺境より少ないのだろう、町という規模でも辺境のようにしっかりとした防壁があるわけではない。

 旅としてはスムーズに行っている、はずなのだが。


『率直に言おう。金がない。自重しろ貴様ら』


「っとに、セルシアが食いすぎるからだぞ」


「ちんまいのが本買いあさるからでしょうが」


「エル兄だって使いもしない工具買ったり無駄遣いしてるじゃないですか」


『全部だ……! あとパティ、貴様の服代もだ!』


 カーバイン以降、町に逗留する頻度が増えた。それはいい。

 野宿を強いるのも申し訳ないし、皆育ち盛りの子供だ、いいものを食べさせたいとも思う。だがしかし。


『金が使えるようになるとこういうことがあるのだな』


「辺境はなんだかんだで物々交換でいけたでござるからなあ。こちらだと魔物も少ないから儲けもないでござるし」


 最大の問題点はそこである。トメルギアに入ってからというもの魔物が出ない。全く出ないわけではないが、辺境のような大物は稀だ。


『払いそのものはよくなったんだが。辺境だと金がそもそも使えないところもあったしな』


「その辺は難しいでござるな、拙者も冒険者時代に経験があるでござるよ。

 報酬が現物だったことが割としょっちゅう。かと思えば金子がまるで役に立たず飯が食えない宿が取れない」


「魔法文明のころは貨幣経済が世界中に行き届いていたって話なんですけどねー。おお、ほうほうこれはこれは」


 パトラネリゼが本を読みながらコクコクと頷きつつそんなことをぼやく。

 実際のところパトラネリゼの本はそこまで金がかかっているわけではない。というのも当人曰く一回読めば全部頭に入るということで、次の町に着くとさっさと売り払ってしまうためだ。

 結果、それなりに戻ってくるのでそこまで消費はない。手元に残っている本はというと、


「ねえちんまいの、これ何て読むの」


「あーはいはい、これはですねえ」


 主にセルシアの読み書き練習用である。アウェルがひらがなカタカナ全部読めて漢字がある程度なのに対してほぼ完璧に文盲である。

 これはいかんということで教えているのだ。内容はと言えば、


「ええと……みんなはゆうしやにいいまし、な?」


「な、じゃなくて、た、です」


「はいはい。いいました。どうかせかいをすくつてください」


「そこすくって、です」


 おとぎばなしが書かれた本である。特に絵が入っているとかそう言ったことはない。

 とはいえ当然だろう。聞く限りではセルシアのように文字が読めない人間はそう珍しくないようで、パトラネリゼもそれ自体にどうこう言うということはない。

 識字率ほぼ100%の日本在住であったゼフィルカイザーはこういうところで己の恵まれた環境を思い返してしんみりとする。

 ただ、どうにも気になっていたことがあった。


「パティ、その、お前たちが話している言語や文字というのはいつごろ出来たものなのだ?」


「魔法文明最初期のころに成立した世界共通語、ということらしいですよ。師匠はそう言ってました」


『誰が作ったとか、そういったことは?』


「言語って一個人が作れるようなものじゃないと思うんですけど。

 そもそも、魔法文明って最盛期のことは結構残ってるんですけどね、興った頃と滅んだ頃についてはさっぱりなんです。

 まあこの大陸はそのころドラゴンの住処だったわけですし、話に聞く公宮の書物庫なら何か残っているかもしれませんけどね……ああ読みたい、しゃぶりつくしたい……!」


 うぇへへへへへ、とよだれを垂らしながら笑みを浮かべる十二歳児にもいい加減慣れたゼフィルカイザーは仕方ないかと諦めた。

 考古学のような学問にいそしめるほどこの世界は余裕があるわけではないのだ。


(でもそういうのを知ってるのが賢者であるべきなんじゃねえかなあ)


 まあ言わないが。

 アウェルがちょくちょく買ってくる工具は地味に役に立っている。具体的には影鯱丸や頑張の整備用だ。

 ハッスル丸も自前の物は持っていたのだが、使い込んで摩耗していた上一人分しかない。それになにより、


(これで俺のフィギュアのディテールアップが捗るぞ! ククク、いずれは俺の工作技術を伝授してフル稼働にしてやる……!)


 こういう奴なので理解はあった。セルシアが食うのも自分が食えない恨みを抜けばわかる範囲ではある。なので、


『おいパッド』


「失敬な、んなもん入れてません! というか必要な年齢じゃないので、これから育ちますし!」


『どうでもいいわ。お前着もしない服やら柄がいいだけの布やら買って何をどうするつもりなんだ』


「え? おしゃれですけど。何かおかしいですか?」


(理解できん……!)


 ファンタジーなのだから装備に気を使う、というなら話は分かるが。

 なにせ普段着は総額一万円以内、冬場の防寒仕様でも二万行かなかった男である。そのあたりの感覚はまるで理解が届かない。

 もっとも趣味の領域になると、立体物を保管用とブンドド用に最低二体買うこのロボットの嗜好とて首を傾げられるだろうことはここだけの話だ。


「落ち着いたらシア姉ももっとおしゃれしましょうよ。折角美人なんだからもっと着飾らないと」


「私は別にそういうのいいわよ。服なんて動きやすくてナンボだし。

 てか、寒い時ならともかく暑い時って服とか邪魔じゃん?」


 言いながら上着をぱたぱたとやる。春も盛りで日差しは随分と強くなってきたのでわからなくはないが、


「姉ちゃん。やめてくれよ? 頼むからもう全裸で森の中を飛び回るとかやめてくれよ? いや本当にマジで」


 顔を真っ赤にしながらアウェルがそう釘を指す。

 どうも村ではやっていたらしい。しかし以前の垢や泥にまみれた姿ならともかく、今のセルシアは瑞々しい肌に輝くような赤い髪が際立つ絶世の美少女だ。

 これが裸族で盛りを徘徊するというのは、


「エルフですか」


「エルフでござるな」


『エルフ以外の何物でもないな』


「あ、言われてみればエルフまんまだな」


 空気が白け、ゼフィルカイザーの足音以外の音がひと時消え、


「……わかった。暑くても全裸はやめとく」


 セルシアが苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。

 どうもセルシアはエルフが相当に苦手らしい。だけに、あの怪植物と同類項扱いは堪えたようだ。


『つくづく苦労してるなお前』


「セルシアをまともに操縦できたのってうちのかーちゃんだけだったからな。

 かーちゃんが死んでから結構荒れてたし」


 言いつつも嫌そうでないあたりがこいつらしい、とゼフィルカイザーは思った。

 そう話しているうちに街道が開け、次の町が見えてきた。


『ではとりあえず、私が隠れる場所を探すとするか』

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