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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第一話 出現 チートロボ!
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005

 ゼフィルカイザーをなぎ倒したのはまたもやドラゴンだった。勢いよく飛んできたそれは、ゼフィルカイザーに向かって力任せに体当たりをかましたのだ。

 なんの警戒もしていなかったゼフィルカイザーは景気よく地面を転がり這いつくばる。


(な、いったい何が!? というか痛い、全身あちこちすげえ痛い!)


 機体それ自体が体となっているためなのか、装甲の地面に打ち付けた部分や関節の捻った部分の感覚が痛みとして伝わってくる。

 どうにか立ち上がると、ドラゴンは自分が入っていたと思しきコンテナを尾でなぎ倒し、その下にあったドラゴンであったろう物を見て、


「――――!!!」


 咆哮を上げる。


(ドラゴンって言ってたけど、ありゃ確かにドラゴンにしか見えないよなあ)


 ゼフィルカイザーが知る限りのものだと、体形的にはいわゆる伝統的なファンタジーのドラゴンよりも特撮の怪獣のほうに近い。二足歩行して手を持っているあたり、ゼフィルカイザーはそう感じた。

 と、天を仰いで吼えていたドラゴンが、その目をゼフィルカイザーのほうに向け、


「貴様か……! 貴様が我が弟を……!」


 その口から人の言葉を口にした。声質は人の者とは似ても似つかないが、しかし確かに聞き取れる言葉だ。その語調には聞いただけでわかるほどの憎しみが籠っている。


『いや、私は―』


「問答無用――!」


 巨影が、猛然とゼフィルカイザー目がけ襲いかかった。




「いやー、とっさに気づいてよかったわ」


 セルシアはそう言って木陰から様子をうかがう。

 ゼフィルカイザーとアウェルは気づいていなかったがこの少女だけは襲撃を察知し、アウェルの首根っこをつかむと全力疾走で森まで退避した。ドラゴンがゼフィルカイザーに意識が行っていたこともあり、こちらには気づいていない様子だ。


「さっき潰れたやつ、こないだ村にきた奴に比べると少し小さかったしさ。それに飛んで追いかければいいのにわざわざ森の中を追いかけてきたから、ひょっとしたらと思ったんだけど……やっぱりもう一匹いたか」


「それはいいんだけど姉ちゃん、あいつ大丈夫かな」


「大丈夫じゃないの? なんか凄そうだし」


「なんか一方的にボコられてるようにしか見えないんだけど……」


 そう言うアウェルの目線の先では、ゼフィルカイザーと名乗った機体がドラゴンにひたすら圧倒されていた。

 ドラゴンの体格は先ほどのものより大きく、ゼフィルカイザーより一回りは大きい。その体格から繰り出される暴力に、ゼフィルカイザーはなすすべもない様子だ。


(話が違うぞ!?)


 その状況を誰よりも理解できなかったのはゼフィルカイザー本人だった。

 不意打ちに不覚を取った、だがこちらはチート性能のロボットなのだ負けるものかよと思い、突撃してきたドラゴンと相対した。とはいえこの機体に注文した武装がどのように積まれているのか、それはまだ確認していない。

 ならば目の前の怪獣もどきを試し台にしてくれよう、そう思い、まずは手に搭載されているであろう、フィンガー的な武器を使用しようと手を突き出し、


【アームドジェネレーターが認識できません】


【アームドジェネレーターを搭載してください】


『え?』


 そんなアナウンスが流れ、ドラゴンの突進に吹き飛ばされた。


(ど、どういうことだ!? ならミサイル、ミサイルは!?)


【ロックされています。アームドジェネレーターを搭載してください】


 ドラゴンの尾がゼフィルカイザーの顔面を殴り飛ばす。


(ビーム兵器……どこについてるんだ!?

 ええい、なら手持ちの剣か銃か……それこそどこにある!?)


 ぱっと見たかぎり、それらしいものはない。慌てふためくゼフィルカイザーの鳩尾にドラゴンの腕が突き刺さる。


『ぐはっ……な、ならば最後はこの体で……』


 身構え、ドラゴンの攻撃に備えるゼフィルカイザー。だが悲しいかな。彼は武道の経験どころか喧嘩もろくにしたことがなかった。

 パンチを放つが、腰も乗っていないオーバースイングのそれをドラゴンはいともたやすくかわし、短い脚と尾を巧みに使い足を払う。

 あっさりと転んだ敵の腹を踏みつけたドラゴンは、大きく息を吸いこみ、その口蓋から灼熱を放った。


『グエーッ!!』


 仮に一般人が突如としてプロレスラーの体格を手に入れたとしよう。おそらく同じ一般人相手ならばその力で軽く捻ることもできるだろう。

 だが、同じ体格の者を相手にしたらどうなるか、試すまでもない。まして相手はこちらの体格を上回るサイズの野生動物だ。

 或いは、彼が己の性能をじっくりと確かめた後であれば、このような無様はさらさなかったかもしれない。しかし、このような結果になったのは、これも時の運というものなのだろう。

(操作方式が三人称視点でコントローラーでさえあれば……!)

 しかしながらこのようなことを思っているので、結局は同じだったかもしれない。




「よし逃げよう」


「いや、諦めるの早くね!?」


「て言っても無理でしょ。見た限り戦い方自体がわかってない感じだし、上手に焼けちゃったし。

 あいつ殺られたら次はあたしらよ?」


「殺す側じゃなかったのか姉ちゃん」


「食べれない動物を殺生するのってどうよ」


「そういう話じゃないだろ……て、うわっ!?」


 そんなことを言い合っている二人が轟音と震動にたじろぐ。二人の隠れていたそばに、ゼフィルカイザーが投げ飛ばされてきたのだ。

 全身のあちこちから煙が吹き、火花も飛び散っている。ドラゴンは勝鬨のように咆哮を上げ、


「奴らめ、生贄を差し出すどころかこのようなものを招きおって! 皆殺しだ!

 我が弟の仇と共に我らが神への供物としてくれよう! おお、弟よ……!」


 収まることのない怒気をはらんだ声があたりを揺るがす。その隙に、ゼフィルカイザーに忍び寄るものがあった。


「おい、大丈夫かお前!」


「ちょ、早く逃げようっつってるでしょうが!」


 セルシアの制止も聞かずに、倒れたゼフィルカイザーに近寄るアウェル。


『そちらの娘の言うとおりだ……早く、逃げろ』


「命の恩人見捨てて逃げたら、死んだおっちゃんに怒られるっての!

 お前、誰も乗ってないって言ったよな! オレを乗せることはできるか!?」


『乗せる――?』


 その言葉に、ゼフィルカイザーと、セルシアの反応が変わった。セルシアは表情を険しくして、


「あんたがこんなデカブツ動かせるはずが――」


 言いながらアウェルを引き戻そうとし、一方のゼフィルカイザーは、


(そう言えば、どうなんだ?

 乗ったらすぐ動かせるようにとか慣性制御とか、パイロットがらみの注文も付けたはずだが――)


 考えると同時、


【コックピットハッチ解放します】


 自分の胸元あたりから音がして、その部分が開いた。


「――! 乗っていいのか!?」


『―構わん、乗れ』


 どのみちこのままにしておいては、自分の次に彼らも殺されてしまう。そう判断した彼は、二人にそう促した。

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