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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第七話 怪奇! 異世界に驚異の植物生命体エルフを見た!
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004

『しかしだ。頭目殿はいかなる氏素性の方なのだ?』


 森の中を進むゼフィルカイザーは、つくづく疑問に思っていたことをリリエラに問うた。

 明るくなった森の中を隊列を組んで進む三体の巨躯。先頭がリリエラのベルエルグ、二番手がゼフィルカイザー、殿がⅠとマーキングされたガンベルだ。他、リリエラ配下のなかでも傷の浅い者が8名と、それにセルシア。

 ハッスル丸は例によって見当たらない。影鯱丸でどこかから護衛しているのだろう。

 パトラネリゼもゼフィルカイザーに同乗している。処置がひと段落したのもあるし、本人がエルフについて見分を深めるためと言い張ったためでもある。


『なんていうかね。昔はトメルギアで騎士やってたのよ。まあ騎士って言っても巡回警備隊、要は雑用部隊の隊長だけどね。

 でもいろいろとあって国を出る羽目になってねえ』


 だいたいゼフィルカイザーが想像していた通りの内容だ。


『んで、そのころにエルフの相手は散々やったからね』


「はい? トメルギアではエルフがそんなに出てるんですか!?」


 パトラネリゼの驚きももっともだろう。なにせパトラネリゼもエルフが出たのを見るのはこれが初めてなのだ。

 それにトリセルの町の長老の言い分の通りなら、よほどの勢いで森を切り開くとエルフが現れるということになる。

 逆を言えば辺境ではそうしたこともなくうまく森と付き合っているのだ。ならばトメルギアはどういう情勢だというのか。


『知っての通り、トメルギアは十七年前の内乱以降ガタガタでねえ。

 あれで消耗した各領主が損失を取り返すために躍起になって開拓を進めてるのさ。特にトメルギアの東寄りのほうでね』


『まずトメルギアで内乱があったということ自体が初耳なのだが、そうなのか』


 パトラネリゼの説明の通りなら、トメルギアは大陸の北西部にある国だ。そしてこちらは南の辺境。ならば、東の辺境もあるということなのか。そしてエルフの被害は主にそちらで出ているのだろう。


『おかげでエルフの生態には無駄に詳しくなっちまってね』


「昨日言っていたエルフのなる木とやらですか」


 ゼフィルカイザーはその単語を聞いたとき激しく脱力したものだ。だが、あのような森ヤマンバが木に大量になっているというのは正直ぞっとする。


『森を切り開いていくと、森の中にエルフを実らせる木が生えてくるんだよ。ひょっとするともともとあった木が変化したものかもしれないけどね、その辺は学者様に任せるわ。

 とにかくそいつさえ焼いてしまえばエルフは出なくなる。もっとも、また森を切り開くと話は別だけどね。

 あと、経験上さらわれた人間が捕まってるとしたらそれもその木のあたりだよ。以前一度だけだけど、さらわれた人間を何人か保護したことがある』


『念のため聞くが、どういう状態だった』


「五体満足ではあったよ? ただ何を見たのか、廃人同然にわめくだけだったからね。辛うじて聞き取れたのが、みんな肥やしにされた、って一言』


『それは、また』


『おお、おっかねえ。姐さん、やっぱり引き返しましょうや。命あっての物種ですぜ?』


 そうだそうだ、と今更言い出すリリエラの配下ども。それをリリエラは叱咤する。


『何言ってんだい、このまま引き下がれるかい。都合よく助っ人も引き入れられたんだ、これで巣食ってるエルフどもをバラせば一攫千金だよ?

 全員に酒と女がたっぷり変えるくらいの金が入るんだよ?』


『う……それもそうだな。よし、やったるぜ!』


 うおおお、と気勢を上げるごろつきども。この間わずか三十秒である。


(あかん、セルシアが賢く見えてくる)


『その調子その調子……はぁ』


 そのわずかなため息を聞き逃さなかったゼフィルカイザーだ。

 なので、リリエラに通信機越しに声をかける。何かあった時のためにリリエラに渡しておいたもので、久々の物質生成機で複製したものだ。元からあるものは今はハッスル丸に持たせてある。


『頭目殿。ひょっとしてそのキャラ無理してやっていないか?』


『おおっ、びっくりした。

 無理ってなにさ。私はごらんの通りごろつきどもの親分だよ?』


『なら、何故無理にエルフ討伐などしようとする。

 それに昨日、町が被害に遭ったと聞いて明らかに目つきが変わっただろう。頭目殿、いや、騎士殿』


『……まあ、ねえ。なんだかんだでそういう家に生まれ育ったしね。

 上がいくら腐りきってるって言っても、下のもんを守る人間がいないと回らないのが世の中だしねえ』


 ゼフィルカイザーのいた時代にはもう存在していなかった騎士や武士といった階級の人間。その中にも清も濁もあるのだろうが、彼女はおそらく清の側の人間なのだろう。

 そして、そう思うと腑に落ちない点が一つあった。しかしそれも、いまの配下どもの有様を見てあっさり腑に落ちた。


『ひょっとして、ミグノンへの道で私たちを待ち構えていたのは、あれか。部下の暴走対策か』


『そーだよ。あのまんまほっとくと村にカチコミかけそうだったからねえ。

 適当に待ち伏せしてれば忘れると思ってたんだよ。そしたらなんか来ちゃうしさあ』


『その節は大変申し訳ないことを……!』


『いや、あいつら見て普通の傭兵だって思う人間いないだろうし。それにあの時欲をかいたのは私のほうだしね、別にいいよもう』


(殺されそうになったのにあっさりと流すとか、どれだけお人よしなのよこの人!?)


「リリエラさん、ミグノンでも方々に頭下げ通しでしたからねえ」


 パトラネリゼは思い出す。

 ミグノンに彼らが滞在していたのは半月ほど。その間、リリエラは酒場に頭を下げ鍛冶場に頭を下げ娼館に頭を下げといたる方面に頭を下げ通しだった。

 町長などは言っていたものだ。あの頭目だけなら是非に雇いたい。あの頭目だけなら、と。

 パトラネリゼはそれとなくそのことをリリエラに伝えたのだが、部下を見捨てるわけにはいかないと言って至極あっさりとそれを突っぱねた。

 それをゼフィルカイザーに教えると、ゼフィルカイザーは何やら目頭を押さえるような仕草をした。


『滅茶苦茶いい人だよこの騎士殿!』


「こんないい人が流浪の山賊団の頭目とか……」


「世知辛いなあ、まったく」


『聞こえてる、聞こえてるから!!

 っとに、小っ恥ずかしいったらありゃしない』


 つくづく人は見かけによらず、話してみないとわからないものだ。と、ハッスル丸からの通信が入った。


『こちら影鯱丸、聞こえているでござるか?』


『問題ない。どうした?』


『そちらへとエルフの群れが向かっておるでござる。対処されよ』


「了解。セルシア、敵が来てるぞ」


 言われたセルシアはほかのごろつきの足を止め、剣を抜く。普段のセルシアを知っているものならばそれだけで驚くべきだろう。

 なにせ、誰かに言われるまで剣を抜いていなかったのだ。それは別に自制していたとか、あるいは先ほどの苛立ちで気が散っていたとかそんなわけでもなく。


「――つくづく嫌なやつらね、あいつら。来てるって言うのに気配がない」


 昨日、エルフに囲まれた時点で思ったことだ。人にも獣にもある殺気がまるで感じられない。おかげで攻撃を見てから避けるハメになり、普段よりもかなり疲れた。

 別に引きずるほどの疲労ではなかったが、今までにない種類の敵ということでやや気負っているのも確か。村を出てからというもの、セルシアは自分の身の丈を思い知らされてばかりだった。

 ざわり、と茂みが揺れ、


「ゲギャアアアアア!」


 飛び出してきたエルフを一刀両断にするセルシア。だがその表情は相変わらず渋面のまま。それを皮きりに次々と森の奥からエルフがあふれてくる。


『レッサーエルフかい、あいつらは植物は操るが、魔法は使わない、普通に潰しちまいな!』


「おうよ!」


 ツタや礫が襲ってくるが、人間には脅威だろうが魔動機にとっては屁でもない。ましてゼフィルカイザーはそこいらの魔動機とは別格の存在だ。

 ヴァイタルブレードを抜くまでもなくレッサーエルフを蹴り飛ばし、踏み砕いていく。だがそこに、ぬるり、と樹木の影から這い出てきた者がある。これまた全裸の金髪美女だ。だが、そのサイズがおかしい。どう見てもセルシアの倍ほどの背丈がある。


『ホブエルフかい! そいつは力があって厄介だ、気をつけな!』


(なんで分類がゴブリンっぽいのか、聞いてる暇はないよなあ)


 ヴァイタルブレードを抜き、それを無造作にホブエルフに向かって振りおろす。だが、切り裂くには至らず、肩に突き刺さってしばらくのところで刃が止まってしまう。それ以上押し切ることができない。


「げっ!?」


「アウェル、気をつけなさい! こいつら、木の皮を張り合わせたような感触がする!」


 セルシアはそう言って、背後から襲いかかってきたエルフの心臓を一突きする。だが、やはり顔色は良くない。

 別に体調が悪いわけではなく、この敵とうまくかみ合っていないのだ。肉を切るのに必要な斬り方と木を切るのに必要な斬り方では全く別物だ。

 セルシアが体得しているのは柔らかい物を鋭い刃物で切り裂く技と、硬い物を鋭い刃物で叩き割る技だ。

 対してエルフの構造は樹木のそれにきわめて近い。ゼフィルカイザーに言わせれば複合繊維のそれだ。

 昨夜リリエラが口にしていたエルフの心臓をココナッツのようだと感じたゼフィルカイザーの感覚は正しかったと言える。


(ち、出力強化)


 ヴァイタルブレードの出力が上がるとホブエルフの体が刃に押しのけられるように裂けてゆき、そのまま千切れ飛ぶ。これは確かに厄介だ。

 袈裟切りに両断されたホブエルフはそのどちらの半身もが手足をもがかせている。今しがた蹴散らしたレッサーエルフについても同じ、何体かはじたばたともがき、這いずってごろつきに襲い掛かるものもいる。


「ひいいい!? くそっ、死ねっ! 死ねっ!」


 半ば恐慌状態で斧を振り下ろす荒くれ者。滅多打ちにして原型をとどめなくなったあたりでようやく活動停止する。

 常人ならこの程度で、一太刀で仕留めているセルシアはやはり異常な域と言っていいのだが、こちらも既に息を荒げながら、手にした果実のようなものを貪っている。


「ちょ、セルシアずるいぞ!?」


「水分補給よ水分補給。ちょっと余裕ないから黙ってて、ほらそっちにも行った」


 言うや否や、何か巨大なものに背後から殴り飛ばされる感触。膝をつきながら何ごとか振り返れば、得物を手にしたホブエルフ。

 両手に這わせたツタの先に岩がくくりつけられた即席のモーニングスターをぐるぐると回している。いい加減真面目に付き合うのを諦めたゼフィルカイザーが、アウェルへと支持を出した。


『アウェル、いつかベルエルグと戦った時の武器を使う。やり方はわかるか』


「おう、この箱をヴァイタルブレードにセットすればいいんだな」


 左腰に備えられた弾倉をヴァイタルブレードにセットし、照準をホブエルフの心臓にセット。トリガーが引かれて刹那の間も置かず、破裂音とともにホブエルフの胴体に大穴が開いた。


「ちょ、なんですか今の武器!? いえ、何かの魔法ですか!?」


『超強力な弓矢のようなものだ。大したものではない。残弾はそうないから気を付けて使えよ』


「分かった。でもこないだみたいな威力じゃないんだな」


 前回ベルエルグと戦った時に使用した際には丘が吹き飛んだ。だが今回はホブエルフに風穴が開いた以外は周りには風をまき散らした程度だ。


(弾のグレード落としてもこのくらいの威力か、十分すぎるな)


 今回セットされた弾丸は前回使った一発よりも生産速度が速く、その代りに密度や耐熱性について劣る。

 そのため射程や弾速はほどほどになるが、数が揃えられ、また一発撃つのに必要なエネルギー量も抑えられるためある程度連射も効く。

 とはいえ高品質弾が余波だけでベルエルグを半壊させたことを思えばかなり威力は落ちている。しかしそれ以上に、


『むしろエルフの頑丈さがまずいな。騎士殿、そちらは大丈夫か?』


『あー大丈夫大丈夫。問題ないよ』


 言いながらホブエルフにクローを突き立て、直後に雷撃を流し込む。時間にして二秒もたたず、ホブエルフの目や口から煮えた体液が流れてくる。

 その側面から襲ってきたホブエルフがいたが、ベルエルグはそちらを見ることもなく雷撃を飛ばす。僅かな火花がホブエルフが雄たけびを上げる口腔へとたどり着き、そのホブエルフが内側から爆ぜた。


『このとおり、ベルエルグの機道魔法は生物にはめっぽう強くてね。煮るのも焼くのも行けるから使いやすいのさ』


『しかし、そう飛ばしていては魔力が持たないのではないか?』


『大丈夫だよ、昨日狩ったエルフの心臓大量に積んであるからね。

 エルフの心臓に流れてる液は大量の魔力を含んでるからね、これなら今日一日戦いづめでも問題ない。

 とりあえず片付いたみたいだね。そっちの坊やは?』


「オレもまだ余裕だ。セルシアは?」


「どーにか。むしろあんたの部下こそ大丈夫?」


 ごろつきたちは傷こそないが、いずれも息を荒げながらエルフの死骸を漁り、引きずり出した肝にかぶりついている。しかし、そういうセルシアも肩で息をしている。気を読めない分、五感を総動員しているせいだ。


(光景だけ見れば人食いの蛮族の群れにしか見えんなあ)


『まだグレーターエルフが出てきてないね。偵察に出たそっちの斥候からは?』


『こっちから呼び出してみる――ハッスル丸、どうした、なにがあった?』


『ゼフ殿でござるか。いやなに、件のエルフのなる木とやらを見つけたんでござるがな』


 映像を受信し、目から木に映す。そこに映っていたのは、生々しさを覚える外観の巨木だ。木だというのに樹皮は女の柔肌のような色で、葉は一枚もなく、枝には全裸の金髪美女が実のようにぶら下がっている。


「うわっ、気持ち悪っ」


 セルシアが言うが、同感だ。これは確かに気色が悪い。なにより本当にエルフがなっている、というのがおぞましさを覚えさせる。

 通信機のシグナルを認識すると、視界にその通信機の座標が表示された。これに従えばたどり着けるだろうが。


『今から向かうが、何か問題でもあったのか?』


『通信機越しだと聞こえんやもしれんが、人の声が多数するのでござる。それになにより、あれを』


 そこに映っていたのは、草木に浸食され変わり果てた二体のガンベルだった。

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