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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第六話 大自然の罠! 怒れるエルフたち!
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006

 対面するのはこれで二度目となる。ベルエルグと呼ばれた機体は、以前ゼフィルカイザーと戦ったとき左肩から先を粉みじんにされていた。

 だが、いまのベルエルグには元の通りの腕がある。だが、右肩のような大振りの外装がなく、左肩には最低限の装甲があるのみだ。


(魔法で動くロボットだ、自己修復くらいするだろう)


 いつもならば細かい理屈などを詳しく聞きたがるゼフィルカイザーだが、このときはそんなそぶりは見せなかった。

 この惨状。森のあちこちに転がるエルフの死体を見ればそうもなる。


「うっ……」


「いや、さすがに、これはいくらなんでも」


 アウェルとパトラネリゼも、その光景に顔を青くしていた。

 ゼフィルカイザーは争いなどとはなんの縁もないところからやって来た、元はただのロボットオタクに過ぎない。

 ロボットアニメを何よりも見てきたし、ロボットゲームを何よりやり込んだし、ロボットのプラモを作り続けた、ただそれだけの若者だ。

 だが、ロボットアニメの中では様々な情景が広がっていた。


 ある作品では悪の科学者がロボットを作り攻めてきたのを迎撃していたし、ある作品では悪の宇宙人がロボットを使い地球をわがものにしようとしていた。


 それよりやや新しい作品では、人間同士がロボットを使い戦争をしていた。


 文化の違いで異星人と争う物語があれば、その中で理解しあっていく物語もあった。


 かと思えば同じ人間同士が最後の最後まで分かり合えない作品もあった。


 その一方で人とロボットが友情を育み苦難に立ち向かう物語があった。


 戦いなど一切関係ないロボットアニメがあれば、陰惨な殺戮を写し出したロボットアニメがあった。


 ゼフィルカイザーは何の因果か、こうして己がロボットになってしまった。

 だから、己が抱いた憧れと、誰かが己に抱いた憧れは裏切らないようにしようと思った。

 正義のロボットを自負し、その肩書に恥じないようにしようとしてきたのだ――実際どうだったかは置いておいて。

 だが、この惨状。人の形をしたものがあちらこちらに散らばり、それを嬉々としてまさぐっている野蛮人の群れ。

 人でなく魔物であるというのは確かなのだろう、流れ出る体液は赤くなく、緑がかった色をしている。だが。


『あんたらとはよくよく縁があるようだね。だけど今私らは取り込み中なんだ。とっとと失せな。

 それともなんだ、手伝ってくれるとでも言うのかい?』


『貴様……』


「お、おい、ゼフィルカイザー!?」


「ちょっとゼフさん!」


 ヴァイタルブレードを抜き放つ。アウェルとパトラネリゼが制止するのも構わず、駆け抜け、その剣をベルエルグへと振り下ろした。

 ベルエルグはその身のこなしで斬撃をかわすが、斬撃の余波で森が大きく抉れる。


『貴様、何故こんなことをした……!』


『何故ってあんた。エルフを駆除するのに理由なんていらないでしょうに。

 それにエルフの内臓や目玉は高値で売れるしね。あんたに壊されたガンベルの修理費の足しになるってもんさ。

 それともなにかね、私らの獲物を横取りしようってのかい』


 まるで悪びれのない口調と共にゼフィルカイザーを牽制するリリエラに、ゼフィルカイザーの感情が振り切れた。

 ドラゴンを倒した時は自分でもよくわからないうちに決着がついてしまった。

 目の前のロボットと一戦交えたときは不備もあって防戦一方でそれどころではなかった。

 猪の群れと戦ったときは、殺し殺されるという関係から仕方ないのかと割り切った。地面に咲いた赤い花はそれなりに尾を引いたが。

 再度ドラゴンと戦った時は自分の妙な勘繰りから諍いを起こしてしまった。

 最初はひどい目にあった。過ごすうちに、この世界の過酷さを知った。その中で生きているものの必死さとたくましさを見た。

 故にゼフィルカイザーの中には恐れがあった。安穏とした暮らしに浸っていた自分に、この世界の過酷さと向き合うことができるのかどうか。

 そうして惨劇の場を目の前にしてゼフィルカイザーの中に灯ったのは、


『許さん――こんなことが、許されてたまるか……!』


 怯えではなく、怒りだった。その赴くままに無我夢中で剣を振るうが、まるで当たらない。


『はん、なんでエルフ狩りに許可が要るんだい。それにこないだに比べてえらくへっぴり腰だねえ。ほらよっと』


 斬撃をかわしながらのカウンター気味の拳。顔面を打たれ、そのままのけ反るゼフィルカイザー。


『ぐっ……アウェル! 済まないが操縦を頼む、私では奴に勝てない!』


「分かった!」


「いくらなんでもひどすぎます! 賢者として許せません!」


『魔物などと呼ばれていようが、話し合うことすらせずに一方的な虐殺を行う、挙句その死体を辱める……こんなことが許されてたまるか……!』


 そんなものを許せるような倫理観はしていない。

 或いは己に力が無ければ黙っていただろう。だが、今の自分には力がある。


(ああ、アウェル。お前もこういう気分だったのか。


 あの時、村の者に報復しようとしたときに)

 あの時はアウェルを止めるためにそれらしいことを言った。子供に罪を成させるのはあまりに心苦しかったからだ。

 だが、目の前のこの連中はどうだ。

 こんな残虐非道を笑いながら行える奴らに、生かしておく価値があるのか。

 操縦がアウェルに代わり、構えに腰が入る。それを察したリリエラからも油断が消え、ベルエルグが構えを取った。

 性能ではゼフィルカイザーが圧倒している。以前は不備があったが、今は万全の状態、そしてこの満身の怒り。負ける要素はどこにもない。

 そう思った時に、ベルエルグの背後から現れた者があった。それぞれⅠとⅡとマーキングされたガンベル。一方の機体は片腕がない。リリエラ配下のガンベルだ。


『お頭、まずいですぜ、また奥からグレーターが来てやがる!』


『げ、いつかの白い奴! 一体何しに現れやがった!

 こっちは今大変なんだよ!』


 どちらも語調は切羽詰まっている。さらに奥から何かがやってきている、と言いたいのか。

 その時、ゼフィルカイザーのカメラアイがリリエラの配下以外に動くものを見つけた。エルフの一人だ。無残なことに上半身と下半身を両断されている。

 その上半身が起き上り、美しい顔がゼフィルカイザーを捉えた。

 悲しみの色に満ちた瞳が、ゼフィルカイザーを見つめ、



「――――ギャギャ」



 口が大きく弧を描いて、虫の鳴き声のような声を上げた。

 ゼフィルカイザーはこの世界の過酷さを知った。

 その中で生きているものの必死さをたくましさを知った。

 だがそれ以上にこの世界の理不尽さをもっと噛みしめておくべきだった。

 突如として森のいたるところから伸びてきたツタが、まるで意志を持つかのように四体の巨躯をからめ捕った。それだけではない、足元にいるリリエラの配下も同様に絡め取られる。

 セルシアのみ、そのツタを振り切り、時に切り落として逃げ回っている。

 それと同時、森の四方八方から飛び出してきた全裸の金髪美女たちが奇声を上げて怪光線を放ってきた。


「ケケーッ!」


『ぐああああああっ!?』


『ひいいいっ!? お、お頭ああああ!』


『あんたら、大丈夫かい!? ええい、スパークウェブ!』


 ベルエルグの右肩の宝玉から雷が飛び、空中にいたエルフを焼き払う。

 それで砲撃は止んだが、周りを見渡せば木々の中、碧眼の群れが獲物を見る目でこちらを見下ろしていた。



『いや、なんていうか、あれだ。これは詐欺じゃね?』


 先ほどの猛りはどこへやら。怪光線で焼かれた痛みもどこへやら。恐ろしく静かな気持ちがゼフィルカイザーを襲っていた。

 中に乗っている二人も同様だ。


「そう言えば人間に似てるって言ってたっけか」


「いやあ、あれほど人っぽい外見とは思いませんでしたよ、あっはっは」


 二人とも視線は宙を泳いでるわセリフも棒読みだわ。思うところは皆同じなのだろう。

 真っ先に爆発したのはパトラネリゼだった。


「なんなんですかあれ!? あれだけ人間に近い外見の魔物とかありですか!?

 そのくせ挙動は明らかに人間じゃないし! 人間じゃ――」


 ちょいちょい、とアウェルが指さした先。そこでは四つん這いで高速ではい回るエルフから、同じ体勢かつそれ以上の速度で逃げ回る赤い髪の少女。


「なるほど。セルシアさんはエルフだったんですね。美女だし怪物じみてるし納得です」


『うむ、あんな人間がいるのはおかしいと思っていたが得心がいったな』


 直後、赤い閃光がゼフィルカイザーの頭部を抉った。余りの衝撃にゼフィルカイザーがよろめく。


「アホ言ってる場合じゃないでしょうがあああ!」


 閃光の正体、ドロップキックを見舞ったセルシアは回転しながら着地、即座に逃げに走る。


(ぐがあああああ! なに、なんでできてるのこの女!)


 こめかみを抑えうずくまるゼフィルカイザー。だが、セルシアにはいつもほどの余裕がない。

 四方八方からツタが襲いかかってきているのをさばくのに必死なようだが、それだけであのバーバリアンがここまで余裕を無くすだろうか。

 言う間に、森の中から現れた全裸の美女がツタに絡め取られたリリエラの配下を捕え、次々と森の奥へと引きずっていく。


『く、よくも私の部下を……』


 ベルエルグが追おうとするが、ツタに絡められて脚がもつれ、膝をつき、そのまま動かなくなる。


『お頭、魔力が!』


『朝から戦いづめなんす、いったん退きやしょう!』


『そうは、いかない……! ここまでついてきてくれた部下を見捨てて、なにが騎士か……!』


 凄絶な、覚悟の灯った声。それを聞いてゼフィルカイザーと中の二人にさらなるダメージが。


「あれ、もしかしていい奴?」


「というかこの声、確かうちの町にきた女騎士の人じゃ……」


『ひょっとして、邪魔しただけか私ら』


『ひょっとしなくてもそうだよ!

 あーもう、エルフの外見に騙されただけかいあんたら!』


 どうも会話が筒抜けになっていたようで、とうとうあちらのお頭から突っ込みが飛んでくる始末。

 その間にも荒くれ者たちが次々に引っ張られてゆき、


『そこまでにしてもらおうか』


 エルフたちが唐突にはじけ飛んだ。エルフがいた場所に突き刺さっているのはいずれも手裏剣。

 いつの間にか現れた紫色の忍者型魔動機が、忍者刀片手にあたりを飛び回り、次々と拘束を切り裂いていく。


「ハッスル丸!」


「ハッスル丸さん!」


 頼もしそうな目でその姿を見る二人。そして、


(俺の資金と経験値が!)


 シチュエーションも相まってまたトラウマをこじらせるゼフィルカイザー。だが、ハッスル丸の声もいつもほど余裕がない。

 見てみれば、影鯱丸もわずかだが焼け焦げた跡がある。この場に押し寄せる敵を食い止めていたのか。


『話はあとで。状況が芳しくないでござる。

 セルシア殿、この場は退く。そのための術を準備するでござるから代わりを頼み申す』


「勝手言ってくれるわね。まいいわ、今腹も立ってるし」


 白刃片手のセルシアが駆け、拘束を解きながら襲ってくるエルフを次々と切り裂いていく。

 だが袈裟切りに裂かれたというのにエルフは這いずりながら動き回り、男どもの足にしがみつこうとする。


『嬢ちゃん、心臓を狙いな! それでとりあえずは動かなくなる!

 下等種(レッサー)は魔法使ってこないから安心しな!』


「あいよ、アドバイスあんがと」


 次々とバラバラにされていくエルフ。一方ではハッスル丸があちこちに符のついた苦無を突き立てていた。


『こんなもんでようござるか。そちらの機士どのらは動けるでござるか?』


『なんとかね。欠員はないかい?』


「へい、どうにか大丈夫でさあ」


『えるふ相手となると若干心配ではあるが……木遁、木の葉隠れの術!』


 突如として木の葉が舞い散り、猛烈にエルフたちへと叩き付ける。さらにとばかりに影鯱丸は一定の動作に従い刀を振り、


『駄目押しにござる――五感、禁!』


 エルフたちがもんどりうって転んでいく。まるで溺れているようにもがく様は滑稽ですらある。その状況下で一団はその場を逃げ去っていく。


「いやー、エルフって怖いなあ」


「本当ですねえ。でもセルシアさんのほうが美人だとは思いましたよ」


『はっはっは』


 逃げ去りながら談笑する三人に、ゼフィルカイザーの頭の横に着地したセルシアが底冷えのする声で言った。



「お前ら、あとで説教な」

 恐るべき魔物、エルフの脅威から辛くも逃れたゼフィルカイザーたち。

 逃れた先でリリエラはゼフィルカイザー達との共闘を提案する。

 彼女が提示した報酬は、セルシアの素性の手掛かりだった。


 森の中、次々と襲い来るエルフたちに苦戦する一行。

 その中で目覚めた、ゼフィルカイザーの真の力とは!?


 次回、転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~


 第七話



 怪奇! 異世界に驚異の植物生命体エルフを見た!



【O-エンジン トライアルドライブ】



 次回もお楽しみに!

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