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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第六話 大自然の罠! 怒れるエルフたち!
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005

 エルフ。


 古くは欧州の民間伝承に端を発し、トールキンの指輪物語を経てその後極東の島国でいろいろと改造され現在に至る架空の種族。

 色白で細身、尖った耳をしており大概は金髪。

 長命、場合によっては不老不死で、森に住まい強力な魔法を使う。

 人間とは隔絶して暮らしている場合が多い。

 ゼフィルカイザーが並べ立てれるエルフの特徴といえばこの程度だ。


(あとは弓が得意なんだっけか。それと美男美女)


 とはいえこの狂った生態系の世界である。エルフといって出てきたのが体長5mごしのトロールだったとしても驚きはしない。

 今一行はトリセルの町から東へと森の中を進んでいる。

 まだ昼間なので森の中は幾分明るく、また話にあったとおり先に討伐隊が出ていたためだろう、森の中も幾分かは通りやすくなっている。

 ゼフィルカイザーとしては痕跡を追う手間が省けて助かっていた。

 今は操縦席にアウェル、後部座席にセルシア、その膝の上にパトラネリゼ、横に頑張着用のハッスル丸という構成だ。


「んでもさあ、わざわざあたしらが骨折る必要あったの? ほっといて先に行けばいいじゃん」


 そう言うのはセルシアだ。こういうドライな部分にももう慣れたが、パトラネリゼは怒りながら反論する。


「そうは言いますけどね? あのままトリセルが潰れたらその人口がミグノンに流れ込んでえらいことになるんですよ?

 それにこのあたりでエルフが跋扈するようになったら販路がつぶれて経済的にもダメージです。

 セルシアさんたちの故郷だって被害が及ぶかもしれませんよ?」


 どうやら故郷大事で討伐を持ち出したらしい。まあ子供なのだからそんなものか、とゼフィルカイザーは思い、


(いや、小6でこの判断力ってどういうことなの……!?)


 一瞬で評価を改める。やはり賢者というだけのことはあるということなのだろう。


「あの村がどーなろうが知らないけどね。てか、今頃ツケ払ってる気がするし」


 あっけらかんと言うセルシアとそれを苦々しげに見るパトラネリゼ。セルシア側には嫌味らしさもなく、世間話的なノリでそう言っているだけだ。あの村にはもう興味もない、とそう言っているかのように。


(そうだよなー。どうあれ、村にいられなくなったのは村人側のせいだしなー)


 後になって考えて見れば不可思議な点もあるが。

 村の中で数少なく魔動機を持っていたということはアウェルの両親はそれなりの位置にいたということになる。なのにああいった状況になっていたということ、それにセルシアの父親が村の人間と距離を置いていたその理由。

 とはいえ当事者が死んでおり、その子供たちも詳しい事情を把握していない以上今更だ。


「お二方は村を追いだされたんでござったかな?」


『まあ、細かい経緯はいろいろあるが大雑把に言えばそういうことだ。世知辛い話だ』


「で、ござるなあ。我々冒険者にもそういうものは大勢ござったでござるよ。口減らしに売られてきたような者などが。

 そうしたことからすれば拙者は幸せ者でござる」


 一行を森の静寂が包み込んだ。


((――――いかん。空気が異様に重くなってしまった))


 話題のチョイスをしくじった。奇しくも同じ結論に達したゼフィルカイザーとハッスル丸は、話を切り替えていく。


「しかし、えるふでござるか。拙者も話にはよく聞いたでござるが、直接相対したことはないでござる。

 いかなる魔物なのでござるか、パティ殿?」


『そうだな。私もそのあたり詳しく聞いておきたい』


「んー、まず私も実物は見たことがありませんが、美しい無形質の女の姿をしている、と言われています」


(そのあたりは俺の知るエルフと同じか)


「森を切り開きすぎたり、焼き払ったりすると森の奥から現れるそうです。そして人を攫って行く」


『能力はどうなのだ。不老長寿だったり、高い魔力を持っていたりするのか?』


「不老かどうかは知りませんけど、魔法は使うらしいです」


「魔法? でもそれなら大したことないだろ?」


 そういうのはアウェルだ。だがパトラネリゼは首を横に振る。


「私たちが使うような日常魔法じゃなくって、衰退する以前の本物の攻撃魔法を使用する、と師匠は言っていました。

 そもそも魔法自体がエルフのそれを研究して発明されたものだとか。

 魔法のまだなかった時代、エルフはドラゴンと並ぶ脅威だったとも言われています」


『そう言えば聞きたかったのだが、魔法とはどのような力なのだ?』


 道中、地味に聞く機会がなかったことだ。旅路で余裕がそこまであったわけでもなく、自分とこちらの一般常識の摺合せに時間を割いていたせいもある。


「魔法を知らないんですか?」


『私はお前の師匠が使うのを見るまで見たことはなかった、と思う』


 実際には全く見たことはなかったが。ミグノンでエンホーが明かりの魔法を使うのを見たのが初めてだ。

 それ以降、旅の中でもパトラネリゼが治癒や着火の魔法を使うのは見てきたが、魔法という力がどのようなものかは聞いていなかった。


「そういえば歴史の話はしましたけど魔法自体の話はしてなかったような。まあこんなところですし大まかな話になりますけど。

 あらゆる存在は大なり小なり魔力を持っています。これを燃料にして現象を起こす、これが魔法です。

 また、魔力を注ぐことで特定の魔法を発動する魔晶石マナタイト製の道具、というのもありまして、これが魔道具とか魔法武器とか言われるものです。

 広義には魔動機もこれに入りますね」


『なるほど。しかし、先ほどの話の通りならパティは日常生活用の魔法しか使えないのか?』


「といいますか、現代において実戦に用いれるような魔法を使える人間なんてまずいません。

 そうした魔法は魔法文明期にすでに衰退しちゃったそうですし」


 その言いように違和感を覚えた。魔法文明が滅んで衰退した、なら分かるが、パトラネリゼの言い方だと魔法文明期の最中に衰退したように聞こえる。


『魔法文明なのに、魔法が衰退したのか? 何故?』


「何故って、それは」



「魔動機が作られるようになったからだよ」



 と、声を発したのはアウェルだった。


「思い出した、その手の話ならおっちゃんから聞いたことあるわ。

 確かあれだ。大昔に魔法を戦い以外にも使うようになって、魔動機なんかが作られるようになったんだ。

 でもそうなると、魔力のある奴は魔法をいちいち修行するよりも魔動機を使えるように鍛練したほうが手っ取り早く強くなれるからさ。だから魔法による戦い方は廃れて、魔動機による戦い方が主流になってきたんだ。

 魔動機ができて最初のうちはそうでもなかったらしいんだけど、機動魔法が使える魔動機が作られるようになったらそういう流れが決まっちゃったとかなんとか」


 以前パトラネリゼが言っていた、生身で強くなるより魔動機に乗ったほうが早い、というのと同じことなのだろう。

 体を鍛えるより魔法を覚えたほうが早く、魔動機に乗るだけで魔法が使えるならそちらの腕を磨いたほうが早い。


『ほう……と、どうしたのだパティ、その顔は』


 最初アウェルが解説を取った辺りは憮然とした顔をしていたのだが、途中から顔つきが変わり、今は驚きに目を見開いている。


「あの、アウェルさん? あなたその話誰から聞いたんですか?」


「だからおっちゃんだよ。あー、セルシアの父ちゃんな。オレの魔動機操縦の師匠」


「その、どういう方なんですかその方。かなり正確な話ですし、最後のあたりの、機道魔法がどうのこうのからっていう話は私も初耳なんですが」


「どっかで騎士やってたけど廃業してうちの隣で暮らしてたんだ。

 魔動機の操縦もすごかったし、生身でも強かったんだぜ」


「その方は今……あ、すみませんでした」


 二人が今は孤児だということを思い出したのだろう、事情を察してパトラネリゼも黙りこくる。と、その頭をなでる手があった。


「んなに気にしなくてもいいわよ? 人間いつかは死ぬしさ」


 先ほどのようにあっけらかんと言うセルシアだが。


(……この女がアウェル以外を気遣った、だと……!?)


 ゼフィルカイザーからすれば驚き以外の何物でもない。だが、突っ込んで騒動になってもまずいので話を戻す。


『今は魔法を使うものが、というより使える魔法のほうが少ないのか』


「少ないというほどでもないです。

 傷を癒す魔法や日常生活に便利な魔法、それに錬金術などの生成過程に用いる魔法もありますし。

 ただ、人が生身で戦うための魔法っていうのは魔法文明期に衰退しきっちゃったそうでして」


『陳腐化か、そういうこともある。いや待て。ならばハッスル丸の使っているのはなんなのだ』


「拙者のは魔法ではござらん、忍法でござるよ」


(嘘をつくな陰陽師……!)


 内心毒づくが、パトラネリゼが冷静に解説してくれる。


「道中見た限りですが、どうも、魔法文明のころから独自に発達してきた系統の魔法っぽくてですねえ。私たちが使ってる魔法とは基礎理論から別物すぎます。

 魔法は四大属性で成り立ってるはずなのに、なんですか陰陽五行って」


「うちのクランでもさんざん受けたツッコミでござるなあそれ。

 あ、クランというのは冒険者が所属する寄り合い所帯のことでござるな」


(聞いてもいない解説をありがとう忍者。これだから忍者は……)


「その機械仕掛けの人形もそうだけど、あのカゲシャチとかいう魔動機、あれにしたってどういう作りだよ。

 あれ古式ヴィンテージじゃなくて新物モダンだろ? それであの性能って」


新物モダンというのは、現代製ということか?』


 ヴィンテージに比べると言い回しが野暮ったいなあ、などと思いながらも聞き返す。


「そ、使い物にならなくなった古い魔動機をバラしたりして作った魔動機。ガンベルなんかのことだな」


「影鯱丸はあれも拙者の里独自の技術が用いられているのでござるよ。

 それに南の大陸の新物魔動機はいま面白いことになっておってござってな」


『その話詳しく聞かせろ』


 ロボット情勢となればダボハゼのごとく食いつくゼフィルカイザー。しかし、森の奥から聞こえてきた音に慌てて注意を戻す。


「なんだこの音?」


「戦いの気配――ちんまいの、ちょっとどいて」


 戦闘モードに切り替えたセルシアが即座にゼフィルカイザーを降りてあたりを警戒する。


『ハッスル丸、は……もういない、だと』


 前回のように哨戒に出たのか、ハッスル丸の姿もない。流石にここまで来て妙な裏のある輩ではないと思いたいゼフィルカイザーだが、一応の用心はしつつ、前へと進んでいく。

 木をなぎ倒すような音が徐々に近くなり、そうして見えた先に広がっていた光景を一言で言うならば陰惨そのものだった。

 なるほど、美女の姿をしているというのは確かだ。この世のものとは思えない、金髪細身に尖った耳の美女たちの姿が多数ある。

 だが物言うものは一人もいない。どれもこれもが皆裸に剥かれて躯を晒しているからだ。その死体をまさぐっているむくつけき男たち。

 そしてそれを率いているのは、


『あん? なんだい、いつぞやの白い魔動機かい』


『貴様……!』


 古式魔動機ベルエルグ。リリエラ・ハルマハットと名乗った女だった。

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