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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第六話 大自然の罠! 怒れるエルフたち!
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004

 街道を歩いて行った先に見えたトリセルの町は異様な雰囲気だった。防壁に囲まれているのだが、その一部が倒壊し、町の中から煙が上がっている。


(あー迂回してえ。でももう気づかれてるだろうしなあ。

 それに正義のロボットが逃げを打つのも……でもなあ)


 ロボットでいることが日常化してだんだんと体裁を取り繕うのが面倒になってきているゼフィルカイザーだが、さすがにまだ口には出さない。

 とはいえ、行く先々でもめ事が起こっていればスルーしたくなるのも人情というものだろう。


「どーする? いっそ迂回する?」


「いやいや、こういう事態は賢者としては見過ごせませんって。

 何があったのかだけでも調べておかないと」


「で、ござるな。冒険者としても同意見にござる」


「特になんでもないけど、困ってる人を見て見ぬふりは駄目だっておっちゃんが言ってたぞ」


 セルシアと意見が一致したのにまたもショックを受けるゼフィルカイザーであった。


『しかし、辺境だというのに立派な防壁があるのだな』


「立派とはいいますけど、魔動機があれば時間をかければ作ることはできますからね。別にガンベルだけじゃなく、作業用の中型機だってあるんですし」


(ああ、戦車からブルドーザー作るようなあれか)


 言われてみれば単純な話ではある。ファンタジー世界だから重機などないのに、と考えてはいたが、ゼフィルカイザーと同等の体格の重機があるわけだからそう難しい事ではないのだろう。

 というか、常日頃から荒事があるわけでもないので重機代わりに使われるほうが多いのだろうが、即座に戦闘用だと決め込んでいるあたりは、


(ロボットアニメに毒されてるなあ)


 思いながら、トリセルの町を慎重に観察する。望遠モードを使い、映像を拡大すると外壁の崩れた部分にガンベルがめり込んでいる。本当に何があったというのか。



「なんですかこの有様……!?」


 町までたどり着き、その光景を見たパトラネリゼが絶句した。町の様子は今までにないものだった。

 外壁が崩れているだけではない。その中の街並みがかなり損壊し、通りは荷駄をまとめる人々でごった返している。


「町を捨てようとしておるのでござるな」


 腕を組み、目を細めて重々しい口調で言うハッスル丸。セルシアこそいつもの調子で何か口に含んでいるが、アウェルもその様子に臆しているのか、冷や汗を垂らしている。

 なにより外壁に仰向けにめり込んだガンベル、よく見ればその損壊具合は尋常ではない。装甲があちらこちらへこみ、抉れており、装甲が引きはがされた部分からは金属でできた筋繊維のようなものが引きちぎられた様が見て取れる。

 胸部に見えるコアのみ傷一つないが、あの機体が稼働できる状態でないのは一目瞭然だ。


(何度か見た機体だが、俺だってあんな風に壊せてないんだぞ?

 一体何を相手にしたらああなるんだ)


 全力で、破壊目的で行けば目の前の鉄屑のようにできる自信は無論ある。

 だが、できるのとやるかどうか、となると全く別問題だ。そんなこと考えていると、衛兵が呼び止めてくる。


「おい、お前らは何者だ!? その魔動機はお前たちのものか?」


「あ、私たちは旅の者で――」


「子供ばっかりか……ちょうどいい、痛い目見るのが嫌ならその魔動機を置いていけ!

 この町はもう駄目だ、脚になるものが要る――え?」


 気づけば衛兵の喉元に切っ先が突きつけられていた。下手人はこちらに目で合図をしてきた。殺るか、と。


「ああ、それまでそれまで。セルシア殿も落ち着いて」


 と、穏やか調子で宥めに入ったのは、いつの間に乗り込んだのか、頑張姿のハッスル丸だ。


「拙者らは旅の者でな。南のモルッドにも立ち寄ってきたのでござるが、ドラゴンが出て大変でござった。

 まあ我らの手で退治したのでござるが……それでモルッドの方々からこちらの町が匙を投げたという話を聞き、いかなる仕儀かと尋ねて参った次第。

 一体何があったのでござるかな?」


「ど、ドラゴンを退治した? いや、見た感じ古式魔動機なんだろうしガンベルよりかは強いんだろうが……」


「いやもう大変でござったよ? 二匹も出たでござるし」


 そう言いつつ、どこから出したのかこれまた大袋を地面に置くハッスル丸。中に入っているのは大量の鱗。何の鱗かは言うまでもない。


(いつの間に剥いでやがったんだこの野郎)


 抜け目のなさに呆れつつも、この場の話を進めてくれるのは助かる。

 外見上はどう見ても不審者だが、パトラネリゼやアウェルでは舐められるし、セルシアでは交渉にならない。


「して、何があったんでござるかな?」


 口調こそ穏やかだが、雰囲気は剣呑そのもの、多分に脅しの含まれた調子で問われ、衛兵は怖気づきながら、叫ぶように答えた。


「え、エルフだよ、エルフが出やがったんだ!」


(エルフ? というとファンタジーによく出てくるあのエルフか?)


 ゼフィルカイザーはそう思った。だが、それを聞いたパトラネリゼが杖を取り落として衛兵に詰め寄った。


「お、大事じゃないですか!? 近くの町に救援は頼んだんですか!?

 いえ、それ以前にエルフが出るって、どれだけ森を切り開いたんですか、この町の人たちは!」


 パトラネリゼがこんな剣幕で怒っているのは皆初めて見た。それだけに、この町を襲っているのが容易ならざる事態だということをうかがわせる。

 その時、町の雑踏の中から一人の老人が歩み出てきた。


「仕方なかったんじゃよ、家が必要だったのでな。

 ほれ、お前らも旅の方に失礼をするんじゃない。見たところこの御嬢さんは賢者様じゃぞ?」


「ちょ、長老」


「ほれ行った行った。御嬢さん方にはワシが説明するでの」


 そう言って、衛兵を追い払う老人。それから、パトラネリゼへと話を振ってきた。


「さて、確か御嬢さん、ミグノンのエンホー殿のお弟子さんじゃなかったかの?

 わしは何度かミグノンまで行ったことがあっての、御嬢さんは覚えておらんじゃろうがその白い髪は見覚えがある」


「あ、はい。今は見分を広めるために旅を……それで、どういうことなんですか? エルフが出るほど森を切り開くなんて」


「ここ数年、トメルギアがごたついておる、というのはご存知かな。そのせいでトメルギアからの流民が絶えんのよ。

 上のほうの村や町でもいっぱいで、こうしてここいらまで落ちるものが絶えん。

 家が足りなくなるのでと材木を切りだしていった挙句がこのザマよ」


「なんてことですか……被害は?」


「見ての通り。エルフ退治にガンベルと村の腕自慢を出しましたが帰ってこん。どころか、逆に町を襲ってきよった。

 おかげで大勢の町の者が攫われてしもうた。今はこうして逃げ出そうというものばかりじゃよ」


「その、長老さんは?」


「ワシは御覧の通り老い先も短いしの。この期に及んで町を離れるのも忍びない」


「救援は……期待できないんです、ね」


「そういうことじゃの。もっとも近い町で上のノギリアか下のミグノンじゃが、どちらも急いで一週間近くかかる。

 カーバインまでなら三週間といったところか。とてもではないが、それほどの間耐えることなどできんよ

 なにより昔話に言われるとおりのあの魔力、それにあの美貌、とまあそれはおまけじゃがの。並みの手段でどうこうできるものではあるまいて」


 と、二人で話を進めているが一向に事態の呑み込めないものがいた。

 一人はそもそも話を聞く気がないセルシア、もう一人はエルフがどういったものなのかわからない一人、いや一機。


『なあアウェル。エルフとはいったい何なのだ?』


 ゼフィルカイザーはコックピット内のアウェルに尋ねる。正直こういった知識の話になると当てにできる相手ではないが、知恵袋も世情に詳しい者もどちらも外だ。この状況で自分が喋ると騒ぎになりそうなので選択肢が他にない。案の定、


「確か森を切り開きすぎると現れる魔物、だったような?

 母ちゃんが話してくれたけど、オレもよく知らないよ」


 こんな程度の話である。魔物扱いされているということが分かっただけでも僥倖だが。


「悪い子はエルフがさらって行くぞーって。いやもう、セルシアなんかそれ聞いて大泣きしちゃってさあ」


『なん、だと……!?』


 想像できない、と一瞬思うが、つい今朝のあのびくついた表情を見たあとだと納得できなくもない。


『なんというか、意表を突かれると弱いのか、お前の姉』


「ていうより母ちゃんが怖い話得意だったんだよ。セルシアなんかそれのせいで何回漏らしたか」


『アウェル、下、下』


 へ、と画面を見た先ではセルシアが殺気を込めた目でゼフィルカイザーを睨んでいた。正確にはカメラ越しに中のアウェルを。


(どうしてこの距離で聞こえる、と言ってもセルシアだしなあ)


 いい加減、セルシアの非常識さには慣れてきたゼフィルカイザーだ。先日もなんだかんだでドラゴンを倒してしまったし、この娘は埒外にあるものと思ったほうがいい。

 とりあえず青ざめて苦笑いするアウェルの冥福を祈りながら、聴覚センサーの注意をパトラネリゼ達のほうへと戻す。


「まあそういうわけじゃから、御嬢さん方も早くこの町を離れなさいな。またいつ奴らが襲ってくるかわからんしの」


 と、老人は言うが、だがパトラネリゼはかぶりを振って否定した。


「いいえ、そんな事態になっているのを見過ごしては賢者の名が廃ります。なにより……とにかく。ゼフさん。それにみなさん。エルフを退治しましょう」


 後から思えば止めておくべきだったのかもしれない。だが、パトラネリゼの目はかつてないくらいに真剣だったのだ。だからこそ、ゼフィルカイザーはそれに頷いた。

 なにより、賢者の名が廃るといった。そんな子供の助けにならないようでは、正義のロボットの名が廃るのだ。

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