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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第五話 うずくトラウマ 忍者戦士見参!
25/292

001

 かつて、魔法を主として隆盛を誇った文明があった。

 その文明は魔物の脅威を退け、いつしか全世界を統治下に置き、その栄華を極めたという。

 山すら砕く魔法、夜を昼に変える魔法、空を渡る魔法、またそれらを誰でも行使できる魔法の道具。

 さらには強大な魔物たちを凌駕する力を持った鉄身の巨人の軍団に、精霊の力を借りて巨神となる秘法。

 人の歴史において最も豊かで満たされていた時代であったと言われている。

 だがその黄金時代は唐突に終わりを告げた。

 異界より現れた邪悪の化身、大邪神と眷属たる邪神族、さらにその信俸者である魔族の到来によって。

 突如現れた邪神族と魔族の力には魔法文明の技術の粋を用いる間もなく、魔法王国の王家は一夜にして崩壊。

 玉座を奪った魔族の長は己たちがこの世の王であるとして自らを魔王と号し、人類に死か服従の二択を迫った。

 だが、それに立ち向かう人々がいた。

 魔法王国において王家に次ぐ地位を有していた大貴族、それぞれが四大の力を司る大公家とその軍勢。

 そしてどこからともなく現れた、光の精霊機を駆る勇者である。

 彼らの奮闘と多大な犠牲によって邪神は彼方の異界へと封じられ、魔族たちも住処である魔界へと押し戻された。

 しかし邪神の眷属や、邪神に呼応した竜を筆頭とした魔物たちの暴虐によって大地は荒らされ、かつての技術は時の流れの中に遺失し、文明は大きく後退した。

 かつて普遍的に用いられていた魔法はごく一部の才あるものに必要度の高いものが伝承されるのみとなり、魔法の道具はごく稀に発掘されたものが秘宝として扱われるようになった。

 時は流れ、今。

 いかなる文明が作り上げたともしれない白の機体、己をロボットと称するものがこの大地に降り立った。




「て、いうのが一般的な伝承をもう少し突っ込んで説明したものですね。半分くらいはおさらいですが」


『いろいろと解説を求めたい部分はあるのだが、とりあえずその精霊機(エレメンタライザー)とはなんなのだ? 魔動機(マジカライザー)とはどう違うのだ?』


 このロボットにとって最重要なのはロボットに絡む用語である。他にも大切そうな部分は多数あるが、真っ先に気になったのはそれだった。


「もともと魔法が隆盛した時代に、人よりはるかに巨大な魔物と戦うために魔力で巨体を生み出し、それを操る魔法というのがあったそうで。

 それを真似て作られた、魔晶石マナタイトのコアと魔鉱石マナニウムの駆体を持つ鉄身の巨人が魔動機なのですよ」


 ちなみに魔晶石はいわゆる魔法の宝石、魔鉱石は魔法金属の総称らしい。


「そして技術が栄えていくと、鉄の体すら要らない、使用者の魔力で機体を一から作り出す魔道具というものが生み出されたんです。それが精霊機です。

 膨大な魔力を必要とし、魔動機以上に操れる人間は稀だったそうですが、その力は並の魔動機をはるかに凌駕するものだったとか。

 とはいえ私も実物を見たことはないですけどね」


『技術が一周したということか。やはり数が少ないものなのか?』


「この大陸だと、トメルギアの公王機くらいしか聞いたことないですねえ。

 それにしたって今は使用できる人間が不在らしいですし」


 などなど。街道を歩く白いロボットは、己の肩に腰かけた少女と会話を交わしていた。一方、コックピット内では呑気そうに干し肉を齧るセルシアが、不機嫌そうなアウェルをからかって遊んでいた。


「今度はあんたが機嫌悪くなってるとかどうなのよ」


「別に、なんでもないさ」


「なに? 白いのが自分以外とばっかり喋ってて寂しい?」


「そーいうんじゃないってば。

 ただまあ、オレらだとこういう役には立てないなって思ってさ」


 などと言いつつも、口をとがらせるアウェル。

 ミグノンの町を出てから4日になるが、この道中はずっとこんな感じだ。ゼフィルカイザーはひたすらあれやこれやとパトラネリゼと問答を繰り返している。

 自分で言ったとおり、アウェルもセルシアも所詮は辺境の村の子供だ。

 そもそも自分たちの村が町から八分にされた者の村だったということすら知らなかった。村の空気が悪かったのにはそういう事情もあったのだろうが。

 とにかくそうしたこともあり、ゼフィルカイザーはこの道中、知識を得るためにパトラネリゼにあれこれ訪ねてばかりいた。

 アウェルよりもさらに年下の少女は、しかし賢者というだけあって大変博学だ。彼女の話すことはアウェルにとっても興味深く、ためになることが多い。

 だがそれはそれとして思うところがあるあたり、年ごろの少年らしいと言えるだろう。


「それで、ゼフさんはロボットって言うんでしたっけ?」


『ああ。あとゼフィルカイザーだ』


「長くて呼びにくいしいいじゃないですか」


『それはお前のことだと思うぞ、パタラリネゼ』


「ぱーとーらーねーりーぜー、です!

 はい、アウェルさんとセルシアさんもちゃんと覚えてください!」


「めんどい。ちんまいのでいいじゃん」


「ひどっ!?」


『諦めろ。その娘は私の名前も憶えてないぞ』


「まあセルシアだしなあ」


「どういう意味よ?」


 などなど。道中は意外と和気藹々と進んでいた。

 とはいえ何事もなかったわけではない。

 今まで描写する機会のなかったゼフィルカイザーの背であるが、翼が生えていたりキャノン砲が搭載されていたりということもない。

 バックパックらしきものはあるのだが、これといって特別な機関などが見え隠れしているわけでもない。

 ブースターくらいあればいいのに、とゼフィルカイザーは思っているが、マニュアルにもそれらしきものはない。

 だが、そんな部分は今大変賑やかしいことになっていた。道中の獲物のせいで。


『しかし、山脈から遠ざかるにつれて魔物との遭遇率が上がるなあ』


「それはオレも思った。てえか、うちの村じゃ魔物なんて年に2、3回襲撃してくるかどうかってところだったぞ」


「大概弱いしねえ。父さんやあたしが出るまでもなく村の衆が退治してたし。

 どういうことだったのかしら」


 ゼフィルカイザーの背には道中遭遇した魔物から剥ぎ取った諸々がぶら下がっていた。毛皮や甲殻、角、ほか値段のつきそうなものである。中身がどうなったかはお察しの通りだ。

 ミグノンで遭遇したファングボアほどのものはおらず、セルシアがさっくりと仕留めるかゼフィルカイザーが軽く拳を振るかで済むので特に苦労もなかった。

 もっとも素手で動物を仕留めるという所業にゼフィルカイザーの精神はかなり参っていたが。


(骨の砕ける感触……慣れん。

 しかしロボットで本当によかった。生身だったら生きてる自信ないぞ。

 いや、生身でもロボットに乗っていれば嫌な感触を味わわずに済んだのか?)


 そう思うのも事実だ。以前セルシアが仕留めたものより巨大なコガネジカやら、同じようなサイズで四本腕にやはり甲殻を持つ熊やら。

 何が驚いたといえば、パトラネリゼからそれらの分類が虫だと聞いた時だ。言われてみれば六足だが、つくづくこの世界の生態がよくわからない。


「竜巣山脈にそんなに竜が巣食っていたっていうなら、それを恐れて動物や魔物なんかが近寄らなかったのかもしれませんね」


『というか、竜巣山脈という時点でそうとしか思えない名称なのだが、何故そのように呼ばれているのだ?』


「トメルギア初代王はこの大陸を支配していた竜の王を倒してこの大陸への入植を果たしたと言われています。

 その竜、天竜王が根城にしていたのがあの山脈だって言われてたんですよ」


『天竜王、というとまさかこいつか?』


 ゼフィルカイザーのカメラアイが輝くと、向いていたほうの木陰に映像が映し出された。六翼四腕の漆黒の巨竜の姿が。


「ええと、六枚の翼、腕が二対、あと確か建国期によれば初代王は天竜王の顔面を叩き割った、と……あのう、私もいろいろお聞きしたいのですが。

 この竜の群れ、どうなったんですか?」



「消えた」


「いなくなった」


『消滅させた』



 三者三様の回答に、パトラネリゼが笑顔をひきつらせた。


「どう見ても伝承上の天竜王なんですがこれ。子孫とかそういうのじゃなく」


『なるほど、大物だったのだな』


「じゃないですよ!? 今みたいに衰退してない全盛期の魔法文明の大貴族の、その全力でどうにか倒せたような相手ですよ!? それもちゃんと倒せてなかったみたいですし! どうして一体だけで倒せるんですか!」


『倒せるような兵器が積まれていたのでな。ただ今は使用できない』


 フェノメナ粒子メーターはいまだに一割の目盛の、その半分にかろうじて達している程度。

 胸部から発射された大出力の粒子砲、ギャザウェイブラスターにほとんどの粒子を持っていかれただろうことを考えると、現時点ではとても使えないし、また使用可能だからと言ってそうそう使っていいものでもない。二次被害が恐ろしいからだ。


(というか。そんな大ボスっぽいものを一番最初に倒してしまったのか。それってどうなんだ)


 天竜王。どう考えても四天王とかより上のポジションではないか。それがああもあっさりと倒せてしまうとは。

 否、むしろチートの特権をそれで使い果たしたのではないか。

 そんなことを考えるとコックピット内から反応があった。タッチパネル式になっていたデータ表示ディスプレイをたたくアウェルが、ディスプレイに顔を寄せると、ひっそりとした声で、


「なあ、こないだのも映せるのか?」


 息を荒げながらそんなことを聞いてくる。後ろのセルシアに気取られまいとしているようだが当のセルシアは干し肉にかかりっきりだ。

 こないだの、が何を意味するか分からないほどゼフィルカイザーも野暮ではない、が。


『すまんが戦闘相手のデータが自動収集されてるだけなのだ』


 この道中も機能確認をしたところ、戦闘対象のデータライブラリが自動作成されているのを発見したのだ。今の映像もそこから出したものだ。

 一応機能確認したところ、見た光景を任意に保存することは可能なようなのだが。


『そういうわけなのでな。諦めろ』


「わかった。撮ろうと思えば撮れるんだな?

 じゃあ次の機会に頼むわ」


『諦めろと言っただろうが……!』


 こいつこんな性格だったのかと思う一方で、思春期ならそんなものだろうと思う己もいる。まあ自分が14の時のことを思い返せば、



「くっ、あとここで3秒縮めればSSSランクに……!」


「掲示板のレビューの通りいい性能だ! ムラなく塗料が乾いてこの値段!

 最高だぜこの食器乾燥機!」


「DVDとVHSで別の特典だと!? くっ、どうしたらいいんだ……!」



 見えないなにかに異様なハイテンションで挑んでいた自分の姿を思い返してやや後悔。


(鋼色の青春してたなあうん。他にもロボットSLGで無改造無育成プレイやったりとか、そんなことしかしてないなあ)


 もっとも、今もテンションが落ち着いただけでやっていることは変わっていないのだが。


(そういや人生二度目のフルスクラッチ中だった俺メカ32号改、あのまま放置なのか。そうだ、セーフルームで作ってみるか)


 そんなことを考えるうちに、丘の向こうに看板や柵が見えてきた。次の村なり町なりが近いようだ。

 はたして何が待ち受けているのか。

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