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026-003

 ゼフィルカイザーが唐突に、劇的に変化するのをパトラネリゼは何度も見てきた。

 だがパトラネリゼが己の目を疑うほどに、今回の変化は異質、かつ凶悪だった。

 取り込んだ神剣との帳尻を合わせるかのように機体が膨れ上がる。厳密には膨張しているのではない、内部から食い破られるように、機体の組成が組み変わっているのだ。

 元々ゼフィルカイザーの一部ではない背部のハンガーアームも、貪られるように黒の色の浸食され、肥大していく。

 トリコロールカラーの装甲を塗り替えていく黒鉄の色は紛れもなく神剣のそれだが、かたどられていく機体の形は流線型のラインとは似ても似つかない。


「なんなんや、あれ……ゼッフィーなん?」


 ツトリンが呆然と呟いた。変わり果てた、刃物を思わせる鋭利な装甲。

 小鷹丸に近いと言えば近いが、鋭いだけの小鷹丸と違い重厚感を備えたこちらは、しかしやたらと禍々しさを覚える。

 禍々しさの象徴というように、黒に塗りつぶされ肥大化したハンガーアームは二枚の翼と化していた。フラムフェーダーのそれを思わせるが、やはりこれも歪だ。


「あの色は、神剣アースティアの……エル兄になにかあったから……?」


 ゼフィルカイザーには、搭乗者の魂、感情をエネルギーとする能力がある。だが逆に、ゼフィルカイザー自身の感情によっては機能しないものだった。

 それが、何かの間違いで機能してしまった結果が今の姿なのではないか。

 パトラネリゼの声に怯えが混じる。禍々しくも雄々しい、魔獣グリフォンの如き姿からは、皇帝機キマイラに匹敵する圧力が感じられる。

 だがパトラネリゼには、その姿がひどく悲壮に見えたのだ。それはいつも抜けた言動をしては突っ込まれているあのポンコツとは似ても似つかない。

 尖塔から落ちる自分を、自身の性能を損なってまで助けてくれた力強さと優しさを備えた白いロボットとは、似ても似つかないのだ。

 頭も黒く塗りつぶされ、後頭部が左右にせりあがって隆起し、雄牛の二本角を思わせる形をとる。

 作りだけはいい自慢の顔に至っては、目は血涙を思わせる赤い光を灯し、なかったはずの顎が開いていた。

 唯一、胸部のフェノメナ粒子炉だけが元通りの緑色の輝きを放っていた。


『ふ、ふん。こけおどしじゃ! 少しばかり膨れてみた程度で、皇帝機とまともにやり合えると思ったのかえ!?』


『待て愚妹、この機体、様子が――』


 危惧は、現実となった。

 両腕や両足の装甲が爆ぜ、O-エンジン起動時のフィンがせり出す。だがフィンから立ち上るのは、


「赤い、光?」


 炎のように立ち上る光の赤は、しかし炎のそれとは似ても似つかない血のような紅。瞳からも溢れる紅は、血涙を思わせた。


『――殺シテ』


 言葉に合わせて鋼鉄の顎が軋みをあげて上下する。声も、ゼフィルカイザーが時折狙って出すドスの効いた声を何倍にも重くしたようなもの。

 黒いゼフィルカイザーが翼を立て、やはり血色の光を羽のようにはためかせ、


『殺シテヤルゾ皇帝機ィイイイイイ!!』


 黒いゼフィルカイザーが突撃した。搭乗者を欠いたはずのゼフィルカイザーはろくな動きができないはずなのに、その加速度はフルドライブ時のそれに匹敵した。




 リオ・ドラグニクスに黒い機体が激突する。そのあまりの速度に、ラクリヤをしても防御して受け止めるのが限界だった。

 だが霊鎧装を纏ったリオ・ドラグニクスに物理攻撃は通じない。だというのに、


「押し込まれる、だと……!?」


「それに、何故砕け散らぬのじゃ!?」


 コックピット内、ベーレハイテンの兄妹が驚愕の声を漏らす。超重量のリオ・ドラグニクスが押さえこまれ、その腕力でも振りほどけない。

 触れた物体を問答無用で粉砕する霊鎧装の爪を立てても、神剣と同じ色の装甲には傷一つつかず、どころか黒鉄のかいなが触れる場所から霊鎧装が歪み、欠けてゆく。大魔動機の力を手にした最強の魔動機が。


「ひっ……何をしてくれておるのじゃ!? 我が高貴なる霊鎧装に!?」


 霊鎧装がたわむ姿に、リュイウルミナはレドックスの機道奥義を思い出した。あの一撃も、実はリュイウルミナの喉元に届いていた。

 ならばこれも己の命取りとなりかねないと雷撃を放つ。だが黒い機体はたじろぎもしない。そもそも、雷自体が装甲に通っていない。

 今度こそ、ラクリヤの先の操作を見覚えていたリュイウルミナは、もう一本のクローアームで別のコアを捉えた。冷気を操る機体のものだ。

 その機道魔法が発動した。黒の機体が放たれる冷気に凍り付いていくが――


『下ラン……!!』


 凍結が、一瞬で砕け、蒸発した。黒い機体の出力が、熱量が、凍結の威力を、それを支える皇帝機の魔力を遥かに凌駕しているのだ。


「なんなのじゃ……なんなのじゃ貴様は……!?」


「落ち着け愚妹、この程度で抜けるはずが――――」


『アア、ソウダッタナ、皇帝機。前モ(・・)ソレハ抜ケナカッタ』


 アウェルのそれとは違う声。だが先ほどまで聞こえていたそれとは違い、今の声は砂嵐越しのような異音が重なっていた。

 ゼフィルカイザーの力がさらに増し押し込まれるリオ・ドラグニクス。だがゼフィルカイザーはそこで左腕を離した。

 好機と見たラクリヤはこの機にゼフィルカイザーを砕こうとし――――凍りついた。


「っ、隙を見せた、な――――」


 左腕が、咲いた。そこから鈍さと鋭さを兼ね備えたものが姿を現した。ラクリヤにとって、両親を奪った忘れ難い武装――杭だ。

 手の平から杭を生やしたような、あるいは射出口周りに指を生やしたような形状に変化した腕。それがリオ・ドラグニクスのコアへと狙いを定め、


『ダカラ――マタ(・・)コイツデ貫イテヤル……!!』


 杭が射出され、霊鎧装を貫き、コアを直撃した。一瞬己の命を疑ったラクリヤだが、コアは無傷。機体の魔力の流れにも異常はない。

 当然だ。これが本来の魔動機戦、その定石を無視した結果だ。コアを砕く渡九郎が異常なだけなのだ。

 だが、コアがを打たれればその衝撃は機体全体に伝播する。コックピット内もただでは済まない。


「がっ……! ぐ、父上の仇の武装を真似てくるとは……!! だが奴のように貫くことは――なっ、があああっ!!」


 皇帝機が持ち上げられた。霊鎧装越しにコアを掴んだゼフィルカイザーは、あろうことか超質量のリオ・ドラグニクスを片手で持ち上げ――掲げた皇帝機目がけ、杭を再度射出したのだ。


「何を――そんなことで、皇帝機が倒せるとでも」


 知ったことかとばかりに連発され、機体全体が軋む。引きはがそうにも、これだけコックピットを衝撃が襲えば操縦にも専念できない。

 そうこうするうちに、リュイウルミナが内壁に打ち付けられた。打った頭から血がしたたり落ちてくる。


「痛い……血……貴っ様ぁああああ!! 高貴なる朕に血を流させるなどと――」


『殺シタンダ』


 牙を剥き、殺意の滾る紅の眼光を燃やす機械の悪魔。

 リュイウルミナは言葉を失った。憎悪でもない、敵意でもない。己を見上げる、明確な殺意を、生まれて初めて受けたリュイウルミナは――


『殺サレモ――シロ……!!』


「い、嫌じゃああああああっ!!」


 霊鎧装を、爆発させ――準決勝と違い、粒子による防壁もないままに攻勢防壁が炸裂した。




「う……ツトリン?」


「大丈夫かパトやん!? てぇかこのやりとり、さっきもしたような……くっそ、んなろ……!!」


 パトラネリゼを抱えたまま、瓦礫を押しのけて立ち上がったツトリンは、様変わりした闘技場の様子に宝石の瞳を震えさせた。

 闘技場際の観客席は根こそぎ崩れ、滑落している。闘技場も中心部が崩落していた。

 準決勝、ゼフィルカイザーがリオ・ドラグニクスの攻撃を防がなかったらこうなっていたのかとぞっとする。


「ちゅうか、ゼッフィーもクーやんも姿が見当たらへんな。皇帝機も……まさか下か!?」


 大闘技場は魔法文明期の魔動機の実験場だ。だが、危険な実験をするための空間が大闘技場の地下に用意されているとキティに聞いたことがあった。キティが作った試作兵器の試験はもっぱらそちらでやっていたとも。


「心配やけどこっちをどうにかせんと、こっちは……みんな無事、みたいやな」


 乱暴にどけた瓦礫が、容易く崩れて砂礫になってゆく。幸か不幸か、フォッシルパイダーのコアの力で建材がどんどん脆くなっているのだ。闘技場が派手に崩れているのもそのせいだろう。


「ぐっ……思い出すであるな。あの大蜘蛛が動き回った範囲は、根こそぎこうなったのである。レリー、大丈夫であるか」


「どうにか――ムー、君、血が」


「この程度はかすり傷だ。けど、魔動機の残骸があの有様なのにこの程度で済んでくれるとは――赤シャチさん!?」


 闘技場に転がっていた帝国魔動騎士団の残骸は、衝撃と圧力で曲がり、砕け、へし折れていた。同様に、ムーが見つけた紫の装甲、影鯱丸も、四肢があらぬ方向にねじ曲がっていた。


『ぐ――貴殿ら、大丈夫にござるか』


「赤シャチはんが防いでくれたんか!?」


『気が食われておるせいで大した防壁は成せなんだでござるがな。奇門遁甲はこういう枯れた地ではろくな力にならんでござる。

 済まぬが、手を貸して下さらんか。頑張のほうも中でひしゃげてしもうてな、出るに出れんでござる』


「お安い御用である、どれ。悪いがちと壊すぞ」


 ゼロビンとムーが影鯱丸の装甲を引きはがしていく。


「ラクリヤ、リュイル……ぐっ」


「黙ってなさい大陸最強。傷が中から開いてはらわたが腐るわよ」


 ディーに肩を貸された、虎面を脱いで血の気のうせた隻眼を晒したトーラーの姿もあり、どうにか皆無事のようだ――と、思ったところで、


「あれ、ねーさま? ねーさまはどうしたんや!?」


 影色の色彩がどこにもないことに気づいた。その姿を求めて視線を巡らすが、目より鼻のほうが敏感だった。良質な機械油の臭いにつられてみれば、


「あ――ねー、さま……?」


 大きめの瓦礫の端に、砕けた義腕と義足が転がっていた。最初はそう見えた。だが、臭いはもう少し先から漂っている。それに転がっている手足はどちらも右のもので、


「あ……ああああああ……」


 いざ顔を合わせても何を話していいか分からなかった。その機会が永遠に失われたことにが、嗚咽になって漏れた。あちこち打った痛みをこらえるパトラネリゼも、声をかけあぐねいていた。

 頼みの綱のハッスル丸もトーラーも戦えるような状態ではない。セルシア達を信じて逃げるほかないのか、そんな考えが頭をよぎっていた時。ガンガンと、何かを叩くような音がして、


「ぜっ、そりゃ、ふんっ……!! あー、ようやく開いた。死ぬかと思った」


 近場に転がっていた魔動機の残骸、そのハッチを蹴り破る鳥脚。続いて出てくるのは、血で汚されながらも澄み渡る空色。

 本人の傷もあるだろうが、それにしては血の量が多すぎる。おそらく、本来の搭乗者がコックピット内にまき散らしたものだろう。


「あ、あんたは……皇帝殺し!?」


「くるっぽー、そういう金物くさい娘さんは、あれか、キ印の知り合いとかの」


 唐突におどけた青い鳥が気安く声をかけてくる様に、誰もが困惑の色を示した。アウェルが男に感じたのと同じもの。

 おそらくは皇帝機とゼフィルカイザーが戦う最中、ずっと魔動機の残骸の中で死体と共に息をひそめていたのだろう。

 初手のクオルの一撃が闘技場を焼いたときも、今しがたの攻勢防壁にしても辛うじてしのげただけで、下手をすれば死んでいたというのに、男の様子はあまりにも平然に過ぎた。 

 怪訝な顔の皆に目もくれず、渡九郎は瓦礫に潰されたキティの死体へと足を運ぶ。その有様にため息をつくと、あろうことか遺体を鳥足で踏みにじったのだ。


「おう、なに呑気に死んでやがるキ印。オレへの依頼はどうするつもりだ、ああ?」


「ッ、なにしとんねん、おま――」


『――――相変わらず猫使いの荒いことで』


 渡九郎の足元、キティの手足だったものが崩れ、泥のように溶ける。瓦礫の下からも同じものが這い出てきて、


『ア゛―――あ、く――――ふぅ、と」


 瞬く間に、モノトーンの女が形成された。左の手足を欠いた全裸の女にすぐに影がまとわりつき、それが一瞬で服と白衣に転じてみせる。


「えらく時間食ったな」


「さっきの太陽の剣でごっそり削られたからね。

 ――どしたのツトリン?」


「ねーさま、いや……あんた、ホントにねーさまなんか? 今、何をしたん――」


霊鎧装エレメイルです」


 答えを口にしたパトラネリゼは、ひどく怯えていた。


「この人の体、生身の部分なんてどこにもないです。全部霊鎧装でできてます。まるで精霊か何かみたいな――」


「人間よ、昔はね」


 パトラネリゼの言葉を遮ったキティの言葉は、多分に自重を帯びていた。


「元々霊鎧装(エレメイル)の魔法は使えて、それでそこの失敗作を殺しにいったら手足もがれて、トドメ刺されて、でも気づいたらこんな姿で生きてたわけよ。

 霊鎧装っぽいけど、あたしの意志なんてお構いなしに復元するし、実際には何を使ってるのか自分でもわかりやしない。

 おかげで今じゃちょっとした不老不死よ。魔力が尽きても魂がある限りすぐ甦る。

 好きなように生きて、好きなように死ぬ――そのために帝国を潰そうとしたのに、今じゃ死ぬことすらできやしない」


「なるほど。道理で、五行いずれにも当てはまらぬ気を纏っておったわけでござる。いや、気をそもそも感じられぬと言ったほうが正しいでござるか」


 魔動機から引っ張り出された、こちらもあちこちにけがをしたハッスル丸だ。


「……つまりあれやな? ねーさまは機体が無うても戦えるんやな? なら、ゼッフィーらを助けてくれへん!? 今も下で戦っとるみたいなんや!」


「無理」


 ツトリンの頼みを、キティは一蹴した。


「死なないってだけで、大したことができるわけじゃないのよ。あんたら逃がしてくれって程度ならなんとかしてあげるけど、それ以上は――」


「おい金属娘、いくら払う?」


 キティの言葉を遮って、渡九郎が質問した。途端、キティは凄く嫌そうな顔をする。


「え、なに? やるつもり? スケアクロウもスケアリィもぶっ壊してギリギリ黒字だってのに?」


「その辺は報酬次第だ――どうだ?」


「うぐっ……ウチにゼニはないし……ウチのカラダが目当てなんやな!? くっ、ウチにはゼッフィーが……でも、これも惚れたオトコのため……!!」


「なんか勝手に盛り上がってるが、払う気はあるみたいだし、ま、いいだろ。おいキ印」


「はいはいわかった。ま、ツトリンの腕が買えるならトントンか――――」


 キティの影がぞわりと広がり、そこから機体がせりあがってくる。

 スケアクロウと同型なのだろうが、そのフォルムはさらに細い。当然だろう、胴体と関節部以外、装甲らしい装甲がほとんどないいのだ。

 両手もワイヤーガンとハンドガンのみだ。ただ、ハンドガンは弾倉が回転式ではない。ツトリンの知らない形状だ。


「あれはどーいう――ちゅうか、こんなことができるんやったらねーさま、さっき自分で来る必要なかったんやない?」


「暖機が必要だったし、ごらんのとおり時間かかるからね。タイムラグ考えたら上から放り込むのが一番確実だったのよ。大体、あたしがいるところにしか呼べないし。

 はぁ……これで今ある電動機は全部オシャカか――ちょっとツトリン、食べないでよ」


「じゅるり……おっと、あかんあかん。浮気はあかんで。

 ちゅうかねーさま、一つ聞いときたいんやけどな。あの青カラスがご自慢の最高傑作やっちゅーんなら、あのスゴ味のあるイケメンはなんやったんや」


「ウィゼルさんのこと? あの人ならそこの失敗作の取り巻きの一人よ。失敗作、変な人望があってね。今回の件でも交渉の場なんかで影武者務めてくれたりしてるのよ」


「へー、なるほどなぁ……」


 よだれをぬぐうツトリンは、新たなモーターライザーをしげしげと眺める。実際間近で見れば、何とも美味そうなそそる機体だ。

 ヌールゼックの四分の一か五分の一の重量の機体には、しかしツトリンがかつて口にした技術の発展系がこれでもかと積み込まれている。

 さらに匂ってくる高品質な魔鉱石の香り。この機体、決して安いものではないはずだ。ミュースリルの相場次第では、ヌールゼックとトントンかもしれない。

 そう考えれば、今のキティの悲壮感にあふれる目つきもわからなくはない。


「ちゅーか、そんなにヤならなんで機体出したん。とっとと逃げりゃええやん」


 ツトリンが尋ねると、キティは視線で渡九郎を指した。


「――あいつの何が特別かってね。あいつ、死なないことに異様に長けてるのよ。

 そのあいつが戦うのを選んだってことは、他に道がないってことよ。

 下でやらかしてるのを始末しなきゃ、逃げ切れずにみんな死ぬわよ」


 キティの確信の籠った一言に、思い出したように懐をまさぐったパトラネリゼは、取り出した通信機へ必死で呼びかける。


「ゼフさん、答えてください! ゼフさん……!!」




『ゼフさん!! 答えて……答えろって言ってるでしょうがこのポンコツ!!』


「――――ん? あれ? パティ?」


 キンキンと響き渡るパトラネリゼの声に、アウェルは目を覚ました。だが途端に妙な感覚に襲われる。

 起き上がり己の居場所を見回すが、そのたびに視界に妙なノイズが走る。


「オレ、あいつの一撃食らって、右腕がグチャグチャになって――あれ、腕、あるな。

 それで……ここ、どこだ?」


 右腕はしっかりあった。握って戻して、感覚もちゃんと正常だ。首や脇にも傷のある感じはない。

 改めて部屋を見渡す。草を編みあげた床敷きに丸いテーブル。敷きっぱなしと思われる布団。白い壁はどう成形したのか完全な平坦。

 棚の上には、今までアウェルが見てきた魔動機、精霊機、災霊機が、まるでそのまま縮小したような造形で陳列されている。

 ゼフィルカイザーのセーフルームの中だった。

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