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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第二十話 ガルデリオン、初めての変装
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020-005

 三機と三機は、双方示し合わせたかのように敵と対峙した。

 腕を断たれた頭目のヌールゼックは、その分のハンデを見切って一番雑魚と見た白い機体へと向かって行く。残る二機のヌールゼックは、それぞれヌールゼック改とミカボシと対峙していた。


『へっ、ナリだけは大層だが、所詮は骨董品だ』


 ミカボシと対峙するヌールゼックは威勢よく啖呵を切る。

 実動可能な骨董魔動機に驚きがないではない。だが、骨董魔動機には共通した欠陥が存在する。それは致命的なまでの燃費の悪さだ。

 膨大なミュースリルを使ってこそいるが、その配置は実用化された魔動機のそれに比べれば乱雑そのものだ。フレームの構造の脆弱さも相まって、魔力から力への変換効率は最悪である。

 対してヌールゼックはどうか。アウェルはその設計思想を前時代的と言っていたが、実際にはデスクワークが突飛すぎるのだ。ベーレハイテン帝国が研鑽してきた魔動機技術の粋を結集した高性能量産機、それがヌールゼックだ。

 膨大な量のミュースリルによって生み出される力は新物はおろか、下手な古式をも上回る。それゆえに古式の機道魔法に対抗しうる重装甲を積んでも稼働可能。

 搭乗者エンジンの性能に高い水準を要求するという問題点さえ除けば、ヌールゼックは最強の新物魔動機モダン・マジカライザーと断言できる。


『このヌールゼックに、そんなオンボロが敵うわけねえだろうがぁ!!』


 地響きを立てながら突っ込んでくるヌールゼック。武器は大振りな双剣だ。並みの機体であれば両手で取り扱うべき刃渡りのそれを、ヌールゼックは片手で同時に扱っていた。

 奇しくもミカボシが手にするのも双剣だ。こちらは細身かつ小ぶりな直刀、それをだらりと両手に構えている。


『はっ、やっぱり最初ので魔力を使い果たしたみてえだな! ろくに動けもしないらしい! もらったぁああああ!』


 鋼と鋼が交錯する刹那、風が地を薙いだ。すれ違った二機は、ヌールゼックは武器を振るい終えたまま、ミカボシは最初の体勢のまま、お互い微動だにしない。


『――確かに、この機体は馬鹿馬鹿しいくらいに魔力を食う。正直立たせておくだけでも恐ろしく疲れるんだがな』


 ミカボシからシングの苦笑が漏れる。それに応えるかのように、ヌールゼックの四肢から軋みが上がった。


『だが、その全力は貴様らの機体の比ではない』


 一部の無駄もない所作で二刀が鞘に納められたとき、ヌールゼックの両の手足が断ち割られ、崩れ落ちた。


『て、め……なに、しやがった……!?』


 何よりも驚いたのはヌールゼックの搭乗者だ。両の二の腕と大腿部、その四か所の装甲が滑らかな断面を見せている。

 だが、そこから覗くミュースリルには傷がついた形跡がない。整備がよく行き届いているのだろう、魔法合金の筋繊維は白銀の輝きをたたえている。

 デスクワークのような外骨格構造を採用した機体は別として、魔動機は装甲がやられてもミュースリルの損傷が軽ければ問題なく動けるのだ。

 だが、このヌールゼックは四肢のミュースリルが無事なのにその場でじたばたともがくだけだ。魔力が流れミュースリルが伸縮するたび、手足がばたばたとのたうって大地を抉る。

 搭乗者は何が起こったのか理解できない。いや、理解できているが理解したくないのだ。


『てめぇ、どうやってフレームを壊しやがった!? まさか機道魔法か、その機体は骨董魔動機じゃなかったのか!?』


『生憎と、ただの骨董魔動機アンティーク・マジカライザーだ、今はな』

 シングは静かに答えた。

 今の一撃、正確には四連の斬撃は機道魔法も何も使っていない。ただの斬撃だ。剣にしても、一応は魔剣であり凄まじい切れ味を誇るが、特別な力を持つというわけでもない。

 ただ、その斬撃は鋭利すぎ、その上重すぎた。ミカボシの重量とそれを支えるミュースリルから放たれた斬撃は、腕の力のみでありながらヌールゼックの四肢を容易く両断するだけの威力を有していたのだ。

 そして斬撃が鋭すぎたがためにミュースリルは切れるそばから癒着し、装甲とフレームのみが断ち割れた奇怪な残骸が出来上がったのだ。ミュースリルの摩耗が少なく、乗り手も魔力が充実していたのもある。

 透過の機道魔法を持つ機体であれば、同じことはできるだろう。だがそれを、機体を操る技のみで成したというのは常軌を逸していた。


「……っふう。とりあえずフィッティングのほうも問題ない、か」


 コックピット内でシング――ガルデリオンは息を吐いた。額に浮いた汗が顔を伝っていく。

 ゼフィルカイザーの察した通り、この機体は紛れもなく魔王軍が旗機、黒騎士エグゼディだ。その外装をすべて取り外し、この黒い武者鎧、ミカボシを装着してある。コアについても、赤い魔晶石でカバーを造り被せてあるのだ。

 この武者鎧は、元はガルデリオンの母がエグゼディを手に入れる以前に乗っていた機体の外装で、それをエグゼディ用に仕立て直したものだ。本来の外装に比べれば防御力が高く重心もより安定しているが、重く、飛行機能も使いづらくなっている。


「まあ、修行と思っておくしかないな」


 シングは己の敗北を思い返して一人納得した。先ほど敵に向かって吐いた言葉も嘘ではない。魔力カウンターをカンストこそさせたが、今のシングは魔族としての力を封印している。

 ハーフであるシングだからこそできることで、これによって魔族が持つ闇の気の発露を完全に抑えることができるのだ。

 しかしその代償として、魔力も本来の半分も出ていない。

 エグゼディはもともと軽々動かせるような機体ではない。しかし今のわずかな戦闘機動の疲労感は、丸一日剣の鍛練をし続けたときのそれに匹敵していた。


「だが、こうした過負荷の中でのトレーニングは基本、母さんもそう言っていた……!」


 思い出す。年齢一桁のころ、母に受けた虐待じみた修行の日々を――おかげで背筋が凍りついたが。


「いやいや、それどころではない。他の二人は?」


 アウェルは問題ないだろう。己に勝った相手がこの程度の相手に後れを取るはずはない。だがあの細いなよついた少年は無事では済むまい、そう思い見回すと、


『ぐっ、くそ、動けねえ……!?』


『ふっ、これぞベーレハイテンに伝わる組打ちの闘法!』


 レルガリアのヌールゼック改が、もう一機のヌールゼックをフォールしていた。

 自分の相手と己の機体に集中していたシングは見ていなかったが、敵が接近するや否やレルガリアは得物のポールアックスを捨てて低めのタックルを敢行、そのまま寝技に持ち込んだのだ。

 改の四肢はヌールゼックの関節要所を固めており、固められたヌールゼックのもがきによって装甲同士の擦過音と火花が散っている。

 ヌールゼックは動かせる魔力があるならばいい機体だ。正面から斬撃や打撃で倒そうとするならば相当苦戦する相手だろう。同じ機体同士ならば魔力が尽きるまで千日手もありうる。

 ならばどうすればいいか。相手に魔力の消耗を強いればいいのだ。これ自体は魔動機同士の戦闘における基本だ。この定石を極めれば機体性能に勝る(ジャイアント)相手を倒すこと(キリング)も不可能ではない。

 そうした意味で、レルガリアの戦闘技術は極めて巧みと言えた。固め方には遊びを持たせ、相手にもがく隙を与えている。だが肝心な部分はヌールゼック改の四肢によって固められているので抜けることができない。

 もがくことができているのも相手がヌールゼックだからだ。ヌールゼック改の重量とレルガリアの極め方からすれば、並みの機体ならばもがくごとに関節が軋みを上げ、可動部に不良を起こしているところだろう。


『てめっ、何もんだ……!?』


『我が名はレルガリア・ジンガーサマー! ゼロビン・ジンガーサマーが嫡子にして、アーモニアの門番を任されし者……!』


『なにっ!? あの魔動機操縦以外能無しの!?』


『魔動機操縦に長けたと言え……!

 大体、魔動機で武働きができたらそれでいいいだろうが!?』


『ぎゃあああっ!? 機体中からフレームの割れる音があああ!?』


 激昂して極めから砕きに入るレルガリア。そこに背後からの斬撃が襲ってきた。


『なっ――』


 鋼の二刀はヌールゼック改を通り越し、組み伏せられたヌールゼックの四肢の腱を両断していた。


「あー、君。偉そうなことを言うわけじゃないが、こういうこともあるから他の敵がいるときに長時間の寝技はやめたほうがいいぞ?」


『む。ご助力かたじけない。魔力ある貴殿の手を煩わせるとは』


「魔力関係なく戦闘慣れしているかどうかだと思うんだが」


『そうなのか……! ご教授感謝します、魔力ある者よ』


「いや、だから魔力があるとかないとか関係なくな?」


 なんかもうめんどくさい。シングはアウェルの機体、ゼフィルカイザーの姿を求めて視線を巡らせ――


『……は? なんだあれ?』


 レルガリアが代弁したとおり。そこには未知の戦術が繰り広げられていた。




 片腕を失ったヌールゼックはゼフィルカイザーに突進してきた。対するアウェルはゼフィルカイザーに指示されたとおり、バックステップを踏みながらリボルバーの引き金を引いた。

 バン、と爆発音がして、腕に反動が来た。だが、何も変わったことはない。


『ああ? てめぇ、なんだそりゃ。でけえ音で脅かそうってか!?』


「いやこれは――おいゼフィルカイザー!?」


『安心しろ。今のでとりあえず――』


 言うなり、画面にターゲットサイトが出た。レールガンの時の物と同じだ。それに加えて画面の端に残弾数が表示される。


『今銃口が狙っているポイントがそこに表示されているから、そちらで照準を合わせて撃て。あと足は絶対に止めるな。着かず離れずの距離を維持することを心がけろ』


「わかった、やってみる」


 引き金を再度引くと、またしても爆発音。だが、今度は違った。ヌールゼックは頭部に衝撃を受け、頭がかちあげられたのだ。


『――あ? て、てめ、一体何しやがった!? そいつは魔道銃――うおっ!?』


 四連続、続けざまにボディのあちこちから衝撃がひびく。当たった左肩を見れば、装甲に見覚えのない傷がついている。逆を言えばその程度だ。


『てめえ、脅かしやがって……! ただで済むと思うなよ!』


 剣を片手に距離を詰めようとする。だが、その距離が一向に詰まらないのだ。

 一方のアウェルは、弾切れになった銃に生成機構から取り出された弾を装填していた。


「ツトリンには悪いけど、ショボい。ヴァイタルブレードに比べたらまるで威力ねえな」


『自分で言うことではないが、私と私の武器の性能がおかしいだけだからな?』


「ビームで仕留めちゃ駄目なのか?」


『逆にこう考えろ。いざとなれば楽に仕留めれる相手だ、のんびりと試し撃ちができると』


「まあわかるけどさ」


 装填し終わったリボルバーを再度構え、追いすがるヌールゼックに連続射撃。放たれた6発の弾丸のうち、3発が直撃した。

 もとより片腕になって重量バランスを崩しているヌールゼックは、次々襲い掛かる衝撃にもんどりうってその場にすっ転んだ。

 今まで装填されていたのはシキシマル工廠製の弾、今のはゼフィルカイザーがそれをコピーして作った物だが、特に威力にも差はないようだ。


「なー、これヴァイタルブレード並みの威力の弾とか作れないのか?」


『この弾丸、薬莢内の火薬で弾を飛ばしているのだが、調子に乗って超威力にすると銃本体が破損する』


「つくづくヴァイタルブレードほどじゃないなー。狙ったとおりに当たらないし」


 ぼやきながら再度装填。その間も足は止めていない。


『ヴァイタルブレードは重力式だから低反動で弾のブレもほぼなかったしな。だが、実際の銃器などこんなものだ。

 それに私自身のエネルギーを使わないからな』


「なるほど、こっちはこっちで便利なのか」


 一人納得しつつ、ようやく立ち上がったところにさらに連射。今度は放った弾丸が、ガードしていた左腕に全弾命中した。流石に集中砲火を受けたせいか、その装甲が徐々に欠け、あるいはへこみだす。


『あの重装甲にちゃんと効力があるとは、弾の構造自体も相当だな』


「ところで、さっきより命中しやすくなってないか?」


『私がこの銃と弾丸に少しずつ慣れているのだ。それによってFCSも徐々に最適化されている』


「えーと、使うほど当たりやすくなるってことなのか?」


『大雑把にいうとそういうことだ。しかし本当によく当たるな、この銃』


 ゼフィルカイザーはスピーカーを巻いた。流石にここまで当たると思っていなかったのだ。

 元々ゼフィルカイザーはロボットアクションゲームなどで、相手の未来位置を予測しての射撃、いわゆる偏差射撃がそこそこできているクチだった。

 その上、慣性制御能力を筆頭に、ゼフィルカイザーはこの機体の能力を徐々に己の感覚の延長として使いこなしつつある。


(で、その結果どうなったかというと)


 立ち上がり、さすがにこちらの武器の性質を理解したらしいヌールゼックはこちらの射線から逃れようと横に移動しだした。だが、移動しているはずのヌールゼックに面白いように銃弾が突き刺さった。


「……ひょっとしてオレってすごい?」


『半分はな。あとの半分は私の仕事だ。いや、銃の性能も考えれば三分の一か』


 ディスプレイ上に出ているターゲットサイトは銃口の向いている位置を示していると言った。だが厳密には、ゼフィルカイザーが予測した相手の未来位置に向いている。

 すなわちゼフィルカイザーの射撃管制能力と、完全なマニュアル操作でありながら銃口をロックし続けていられるアウェルの技量、そしてそれらが不満を持たないだけの命中精度を誇る銃砲の三位一体だ。


「つーか、これひょっとして相手を一方的に叩きのめせるんじゃ?」


 こちらも横周りにシフトした。だが、重力制御で高いキレを誇るゼフィルカイザーにヌールゼックの旋回性ではついてこれない。


「この戦法、もっと前から使ってたら楽に勝てた勝負もあったんじゃあ」


『一つ、ヴァイタルブレードなら一発で終わる。二つ、ヴァイタルブレードが通じん相手にはこれも当然通じん。霊鎧装持ちとかフラムフェーダーとか、あとこの前のスライムとか』


「あー……」


『なによりあの頃はブースターも使えなかったしな』


 いかにゼフィルカイザーと言えど、ただサイドステップを踏むだけでここまでの速度を出せるわけがない。ステップを踏むたび、各部のブースターをわずかにふかして加速しているのだ。

 これによって省エネと動きの不規則化を同時に実現している。


『畜生、卑怯者め! それでも魔動機乗りか、正々堂々勝負しやがれ!』


 とうとう、敵から泣きが入った。有効打と言えるほどのダメージが無いとはいえ、ひたすら周りをぐるぐる回りながら得体のしれない武器でつるべ打ちにされれば恐ろしかろう。が。


「奴さん、言ってるが」


『勝てばいいのだよ、勝てば。大体人質取っといてよく言うわ』


「だな。それはそうと、さっきから気になってるんだけど」


『なんだ?』


「少しずつ、本当に少しずつなんだけど、お前の機体が軽くなってるんだよ」


『それは銃弾を撃てばその分軽く――いや待て』


 ゼフィルカイザーの物質製造機構は等価交換を無視できないのだ。故に、銃弾に必要な金属をどこから集めるかと言えば、機体が接触してる地面、大気中からだ。

 だがステップを踏んでいるせいでまともに地に足がついておらず、このすがすがしい空気に重金属成分が混じっていることもなし。

 となればどうなるか。慌てて機体のステータスを表示すれば、銃弾を生成するごとに金属分が少しずつ目減りしている。

 ゼフィルカイザーもまるで気づいていなかったというのに、相変わらずアウェルの操縦センスや機体把握の鋭敏さには恐れ入る。


『こういう欠点もあるのか。仕方ない、トドメと行くぞ』


「おう! で、どうやって? ビームか?」


『今回のコンセプトは新兵器のテストだ。というわけで発射』


 足のミサイルランチャーから二発のミサイルが発射された。銃撃に臆して足を止めていたヌールゼックによけられるはずもなく、右足に爆発が起こった。

 いつもからすればえらく小規模な爆発のあとには、ミサイルの口径と変わらないくらいの穴が開いていた。まるで型で鋳抜いたかのように。


『があああっ!? く、くそ、俺をなぶり殺しにする気か!?』


『そこまで悪趣味ではない。アウェル、次の銃弾をあの穴に叩き込め』


「お、おう!」


 アウェルは最早手慣れた様子で銃弾を装填し、引き金を引いた。放たれた一発は違わず装甲に開いた穴に突き刺さり、装甲内部のミュースリルを抉り――その足が、内部から爆発した。

 内部からの爆圧でミュースリルと装甲が千切れ飛び、爆発の反動にヌールゼックが尻を突いた。どう見ても行動不能だ。


「……なあ、さっきのミサイルと今の弾丸、なに?」


『ミサイルのほうは成型炸薬弾頭、最初に言っていた装甲を貫くためのミサイルだな。そして次に撃った弾丸は榴弾――内部で爆発する炸裂弾だ』


 欲を言えばミサイルだけで仕留めたかったのだが、装甲に穴が開いた止まりだったので駄目押しに炸裂弾を叩き込んだのだ。

 ミサイルが通じない敵ロボットの頑丈さを喜ぶべきなのか、己がチートというにはいまいち足りない性能なのを嘆くべきなのか微妙なところだ。


「つーか、やっぱ初手でビームでよかったんじゃ? じゃなきゃもっと強力なミサイルとか」


『逆に考えろ。ビームが使えん状況でも使える武器が増えたのだと。それに強力なミサイルは使えん状況も多い』


「まあそれもそうか。海じゃ苦労したもんな」


『次に逢ったらあのセイウチ血祭りに上げてやる』


「魚雷やら爆音のやらでさんざん上げただろ、と。おう、兄ちゃんたち」


 あちらは早々に決着がついたらしい。遠巻きに見ていたヌールゼック改とミカボシが歩み寄ってくる。だが、二機ともどこかおどおどした様子だ。


『き、貴様、一体今のはなんのまじないだ!?』


「はい?」


『貴様があのヌールゼックの周りをぐるぐると回り続けたら、ヌールゼックが爆発したではないか! まさかその機体は古式、いや、貴様自身が魔法使いなのか!? ならばあの魔力の数値はフェイク……私はなんという無礼なことを……!』


(俺の呆れるほどに有効な戦術が呪いの儀式扱いされている……!?)


『待つんだ君、いくらなんでも失礼だろう。とにかくアウェル君、無事でよかった。とにかく一旦戻――』


 シングが最後まで口にすることはなかった。背後から斬撃を受け、その場に崩れ落ちたのだ。


「なっ、シングの兄ちゃん!? あ、あの機体は……!」


 黒の機体が崩れ落ちた向こうには、さらに黒い機体が待ち構えていた。

 アウェルにとって忘れようもない機体。漆黒の鎧をまとう黒騎士の魔動機。エグゼディの姿がそこにあった。

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