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転生機ゼフィルカイザー ~チートロボで異世界転生~  作者: 九垓数
第三話 樹海、遭難、お礼参り!
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001

 夜の森の中、開けた場所にいくつものテントが立ち並んでいる。そしてその中に、緑色に塗装された鋼の巨躯、魔動機の姿が2体あった。一方は損壊し、片腕がもげている。

 アウェルやゼフィルカイザーと戦った量産型魔動機(マジカライザー)、ガンベルである。


「で、てめえらはそのまま逃げ帰ってきたと」


「しゃあねえだろ。大体こいつがいきなり突っかかるのが悪いんだよ」


 反論した男は同じくとがめられているもう一人の尻を蹴り飛ばす。

 三者とも、いかにも山賊や盗賊と言った風体をしていた。しかしながら三者の区別がつかないなどということはない。

 最初に咎めた男は犬のような頭をしており、反論した男は普通に人間の姿。

 今一人もシルエットは人間だが、部分部分を鱗が覆っている。

 この中では犬頭の男が格上なのだろうか、ほかの二人とは違い肩当てをしている。

 あたりには彼ら同様、どう見ても堅気には見えない風体の男たちが火を囲んで物を口にしたり酒を煽ったりしている。


「痛えじゃねえか!」


「おう兄弟、てめえが先にノビちまうからこんなことになるんだろうが!」


「うるせえ、誰が引っ張ってきてやったと思ってんだ!」


 益体もない口論をしながら互いの襟を掴みあい、メンチを切る二人。犬頭の男はため息をつきながら二機のガンベルを見やる。

 盾と剣持ちのⅠ号機は盾がひしゃげており、盾を構えていた左腕も動作不良を起こしている。

 識別のために肩の色を黄色にしたⅡ号機に至ってはより深刻だ。

 全身の関節が過負荷を受けており、主兵装のバトルハンマーは完全に損壊し、左腕が完全欠損。

 幸いにして部品は拾ってきているから修復できなくはないが、これを完全に修復するよりは下取りに出して新しい機体を求めたほうが安上がりだろう。

 なにより異質なのがその損壊痕である。剣で切られたとは言うが、左腕も前面装甲もまるでなにかに引きちぎられたか、あるいは内側から爆ぜたかのような痕が残っている。


機道魔法(ライザースペル)だな、どう考えても。

 てえことは古式ヴィンテージか。どうしたもんやら」


 今夜何度目になるかわからないため息をついていると、主犯の二人が先ほどのいがみ合いもどこへやら、馬鹿なことを持ちかけてきた。


「兄貴! 落とし前だ、あの村を焼き払いに行こうぜ!」


「そうだ、元はと言えば急に依頼を変えやがったあの村の奴が悪いんだ!」


「ナメられたら終わりだからな! 兄貴、いっちょうやろうぜ!」


「焼き討ちじゃあああ!」


 周りのむくつけき男たちも同調し、歓声が上がる。

 焼き討ちとまでは行かないが、今回の件の損を補填させてもらう程度はいいだろう。

 なによりこの辺りは辺境のさらに辺境のその果てだ。少々の荒事もなかなか広まるものではない。そんな計算を犬頭の男が頭の中でめぐらせていたその時、



「ドロフ、皆を黙らせて集めな」



 広場の奥。それだけは作りが違うのだろう、いくらかしっかりとした作りのテントの中から声が響いた。この場にそぐわない、よく通る女の声である。

 ドロフと呼ばれた犬頭の男が手振りで指図すると、喧騒が一気に止んだ。そのままテントの近くへと寄ってくる。


「どうかされましたか姐さん」


「落とし前はつけなきゃならん」


 先ほどよりトーンを落とした声でそう告げる。


「ただし、落とし前をつける相手はその白い魔動機のほうだ。わかるかい?」


「しかしそれでは」


「セベック、ギュパド、その魔動機はそんなに強力だったのかい?」


「どうだったんだ。特にセベックのほう」


「へえ、恐れながら」


 ガンベルに乗っていた二人のうち、人間のほうが返事をする。


「並みの機体じゃねえのは確かです。

 ギュパドのガンベルを大振りに殴っただけでノビさせて、俺のほうもハンマーを掴んでへし折りやがった」


「それだけかい?」


「いえいえ! 最初突っかかったときもよくわかんねえ感じで弾き飛ばされましたし。

 あと俺が切られる前に機体が重くなって、動けないままぶった切られたんすよ。そこで俺もノビちまって」


「助けてやったの俺だぜ? 感謝しろよ兄弟」


「うるせえよ! まあ、俺もその時体が重くなった感じがしまして。

 正直今も腰が痛ぇんすが」


「実際、Ⅱ号機はみたこともない壊れ方をしておりやす。そういう機道魔法を持った古式魔動機って線が妥当かと。

 うかつにちょっかいをかけるのは……」


 最後にドロフがそうまとめた。だが、姐さんと呼ばれた女はそれを否定した。


「強力な機体なんだろう? なら奪えばいい。こんな辺境の村なんか襲ったってガンベル一機分にもなりゃしない。

 なぁに、二人とも生きて帰ってきてる。他のことからしても、たぶん乗ってる奴は素人だよ」


「あ、そりゃ俺も思いましたわ」


「おう。避けるのはやたら上手かったが殴り方が妙にへっぴり腰だったな」


「なるほど……では姐さん」


「ああ。その白い魔動機を追いかけるよ」

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