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編集中119  作者: 黒木マチ
8/23

現場事務所で決起会

≪葉山 隼人≫



 俺が暗闇で目覚めてから、実はまだ6時間ほどしか経っていない。


 なんとも密度の濃い6時間であった。しかし、今の俺はそんな思いにふけっているわけではない。


 光だ。


 暗闇で目覚めてからこっち、このスクリーン画面の光しか浴びていない。

 コアルームに照明を取り付ければ済む話だが、照明ごときに1ポイント使うのは惜しい。


「あー、光合成してぇ……」


「ハヤト、人間は光合成なんかしなくてもいいのよ? もしかして、魔王は体内で澱粉でんぷんでも作って生きてるのかしら……」


 新しく眷属として加わったマリーベル・レッチェが、真顔で言う。


 長身、スレンダーながら出るところは出たロシアンビューティだ。つか、出すぎて目のやり場に困る。


「いやいや、あのさ……」


 ものの例えだっつーの。


 そんなやり取りをしていると、ガテン系現場監督の渋川しぶかわ龍平りゅうへい兄貴が、


「なんでもかんでも物品購入システムで揃えようとしてっからダメなんだよ。コレ、見てみな」


 画面に目を配せる。



・対象:コアルーム全域

・意匠:

 トータルコーディネート(自動設定)

◆特記設定次項

 ・プレハブ風内装

 ・打合せスペース(長机とパイプ椅子)

 ・喫煙コーナー

 ・仮眠コーナー(畳敷き)

 ・給湯室完備

 ・仮設トイレ完備(水洗すいせん

 ・照明設備(逆富士型直管蛍光灯)

 ・ロッカールーム(スチール製ロングロッカー人数分)

 ・備品(冷水機、製氷機、ポット、ヘルメット、ヤングジャンプ)


・環境:通常


・個別設定:


 合計:4pt使用します。

 残りダンジョンpt:2557



 物品購入からではなく、ダンジョンの意匠設定から内装を変更し、それに付随ふずいしたアイテムを得るという方法か。なるほど、そりゃこっちの方が合理的だわな。


 というよりは、こちらが本来、スタンダードなやり方なのだろう。


 それはいいとして、


「まんま現場事務所じゃん、これ!」


 神聖なコアルームに何してくれとんねん……。


「落ち着くだろ?」


 仮にもダンジョンの中枢部が現場事務所風とか、あり得んでしょ?

 もっとこう、荘厳な感じで、白大理石貼りとかさあ。


「おっしゃ、承認するぜ」


「あ、いや、ちょっ……」


 承認しちゃったよ、おい。


 空間全体にキラキラと瞬き始める何らかの粒子。次第に密度を濃くしてゆくそれらは、コアルーム全体を別空間へと装飾していく。


 およそ一分ほど経っただろうか。地面をくりぬいただけの地下空間は、建設現場の現場事務所(風)へとその姿を変貌させた。


 コアルームは、小学校の体育館ほどの広さがあるため、一見しただけではそのコンセプトが分かりにくいが、要は、巨大なコンテナハウスの中にいると想像すれば、分かりやすいだろう。


 ダンジョンコアを囲むように、コの字型に配置された長机とパイプ椅子。前面の電子モニターを見ながら、皆で打合うちあわせがはずむことだろう。


 その隣には、カラーだたみを置いただけの6帖ほどの仮眠コーナーが続きで2つ。パーテーションで区切られていて、これは男性用と女性用ということか。


 畳の上には、ヤングジャンプが無造作に積まれている。


 少し離れた位置には、喫煙コーナーがある。白字で「すいがらいれ」と書かれた赤いバケツを、簡易的なベンチ椅子が囲っているたけだが。缶コーヒーを片手に、現場の親睦しんぼくが深まること請け合いだ。


 その奥には、給湯室や仮設トイレ、その他の備品が配置されているようだ。

 並びのスチール製ラックには、ヘルメットが整頓されてあり、安全第一としるされたラミネートがぶら下がっている。



 完全に現場事務所です。本当にありがとうございました。



 いやいやいや、無駄に再現性が高すぎんだろっ!


 さっそく喫煙コーナーに座り込んで一服いれちゃってる龍平兄貴。めっちゃリラックスしとるやん……この人はもともと土建屋なんだろうな。


 畳コーナーでは、こちらもいつの間にか、老紳士のリチャード・クァンが胡座あぐらをかいて、週刊紙に目を通している。

 パラパラとページをめくりながら、にやけ顔で「ほほう……なるほど」とか呟いている。


 巻頭グラビアを見て、ほくほくしているに違いない。


 こいつら……。


 頭を抱えながらパイプ椅子に腰を下ろす。


 対面には、退屈そうにキーボードを叩くマリーベル。


 するとそこへ、


「隼人、マリーベルさん。コレどうぞ。あっちに自販機があったんで買ってきました」


 けいが缶ジュースを3つ持ってやってきた。


「わぁ。ちょうど喉が渇いてたところだわ。ありがとう、ケイ」


「いえいえ、たまたまポケットに小銭が入ってたんですよ」


 自販機まであったのね。


 って……カネ取るんかいっ! ここのあるじは俺のはずだけど、そのカネ、いったい誰のふところに入るわけ?

 そもそも、こいつらなんでこんな当たり前に順応してんの!?


 うーむ。


 もしかして、俺ってちょっとカタイ?


 いや……これは恐らく団体の中でのポジション、あるいは個性付キャラクターというものを、皆が無意識のうちに実践しつつあるということではないだろうか。


 俺のポジションは、今のところ、完全にツッコミだ。


 めんどくせぇ…………ん?


 キャラが濃いといえば、第一人者のあのおかたはどこへいったんだ?


「先生~待ってくださいよ~」


 遠くの方で女の子の声が聞こえる。


無駄口むだぐちを叩くな。オーラが散るぞ」


 こちらは変態オヤジ……もとい、ドリエルの声だ。


「よし、コアルームに付いたぞ。そのまま跳躍ちょうやくして一気に叩きつけろ!」


「はいぃ!」


 ここ鷲羽山わしゅうざんにあるコアルームから、与島よしまへ向けて通した地下道の入口から、おっさんと女の子が走り込んできた。


「むっ。部屋の感じは幾分いくぶん変わったが、関係ない。そのままブチ込め!」


 部屋に入ってくるなり、思いっきりジャンプをかます二人。

 二人の握りこぶしには、青白いオーラがまとわっている。


 かんがみるに、このまま二人、オーラをめた拳で地面をぶん殴ろうって流れだ。


 誰でもわかる。


 しかし、今、このコアルームはプレハブ仕様である。以前のように地山じやまの空洞ではない。

 つまり、音を吸収しない。反響する。


「マリーベルさん、圭。耳、ふさいどいた方がいいかも……」


 そう言って、両耳に人差し指を突っ込んだ瞬間、



 ――――爆音。



 ですよねー。震度いくつだ、これ?


「ちょ、ちょっと! さくらちゃん、ナニしてんのよぉ! 鼓膜が破れるかと思ったじゃない」


 耳栓が間に合わなかったのであろうマリーベルが、一瞬の放心状態から立ち直り、抗議の声を上げる。


「ご、ごめんなさいっ! でも、与島から全力で走ってきたのにオーラを保つことができたの。先生のおかげですっ」


「ふん。まぁまぁだな」


 相変わらずのドリエルぶし


 マリーベルと同じタイミングで眷属けんぞくとして迎えた、犬神いぬがみさくらは、小柄ながら運動神経抜群、*ランダム*で得たスキルは気功術Lv3であった。


 見た目を一言で表すなら“女子高生”である。今もセーラー服を着用している。

 洗練されているとは言いがたいが、愛嬌のある可愛らしい顔立ちと、細身の肢体。


 マリーベルとは対照的に“ぺたー”っとしてはいるが、そこはそれ、需要はあるのだろう。俺にはないが。


 走りながらオーラを練りつつ、それを散らさない特訓。うんうん、体育会系だね……うん。


「ドリエル…………与島まで行ったんなら、外でやってくれよ」


 いい加減、ダンジョンが壊れるっつーの。


「ああ、そうそう。トレーニングついでに、外へ出てみたんだがな。なんか飛んでたぞ」


 反省の色はやはり微塵もなさそうな顔で、ドリエルがいった。


「そうなんですよ、隼人様! かなり低空を、謎の非行物体がですね、こう、ぐるーっと、島を旋回してたんです」


 ドリエルとさくらは、とりあえず見つからないよう身を潜めたのだという。


「結論からいうと、今の時点で動いているということは、他所よその魔王連中でしかない。視察だろうな」


「ここが、バレたんでしょうか?」


 圭が訊く。


「定かではないが、コアルームの位置は通通つうつうなのだから、バレてもおかしくはあるまい」


 ――――早いな。


 まだ開始から6時間あまりだというのに、もうこのゲームの特性を理解し、おそらくダンジョン作成などにも一区切り付けた魔王がいるということか。


 人類は独力で空を飛ぶことなどできないのだから、それをこなしているということは、少なくともスキルをも使いこなしているということ。


 どうする?


 幸い、こちらの戦力は充分だろう。7人全員がレベル20オーバーだし、ドリエルに至っては底が知れない。


 今は放っておこう。先にやることが、まだまだ山積さんせきしている。


みんな、一度、集まってくれないかな?」


 一同に声を掛ける。


 龍平兄貴とクァン老師が、こちらを一べつし、ゆっくりと腰を上げる。


 ドリエルとさくらが、なんだという面持ちでふと顔を見合せる。


 呼び掛けに応じて会議スペースへ集まってくる面々。


 すでに席に着いていたマリーベルと圭の合間からそれぞれパイプ椅子を引き、着席していく。


 コの字型に配列された会議テーブルの両列に席次せきじをとった各々は、当たり前のように中央の座席を空けてくれていた。


 そうだよな。


 若造わかぞうだし、頼りないけど、リーダーなんだ、俺は。


 中央の議長ぎちょう席についた俺は、仲間――眷属けんぞくみなを見渡した。


 右の並びには、まず“獣王”ドリエル・ロイドが座っている。


 ここへ来て初めて出会った超越者。レベル49という数字は、現時点の地球上でおそらく最強だと予想する。

 そこに、変身(獣人)Lv4というスキルが相乗したとき、いったいどれほどの戦闘能力を発揮するのか、計り知れない。


 続いて“超兄貴”渋川しぶかわ龍平りゅうへい

 温泉郷の企画・設計を含めた建設担当であり、戦闘員としても十分に期待が持てる。


 ガッチリと筋肉質なボディに作業服を着込んでいる。ズボンの裾は靴下にイン。浅黒く焼けた顔は強面こわもてながら人懐っこさも兼ね備えており、角刈かくがりなのもテンプレ通りだ。


 右並びの末席は“魔王代理”宇津木うつぎけい

 ドリエルを除いて、初めて眷属として召喚した俺と同年代の彼は、こゆいメンバーの中で唯一、普通フツウのキャラである。良い意味で。


 貴重な治癒スキルを所持しており、*ランダム*により入手した、具現(武器)Lv2にも期待大。


 左の並びには、手前から“老紳士”リチャード・クァン。

 中国人なのだろうが、英語の通名を名乗っているところから、香港や台湾国籍なのかもしれない。


 全長6キロを越えるダンジョンの仕上げを担当してもらう予定だ。骨格は完成しているが、区画整備、環境設定、モンスターの配置など、まだまだやることは多い。


 最後に、ドリエル待望の女性陣が2人。


 一人目は“ロシアンビューティ”マリーベル・レッチェ。

 歳は二十代の中ほどだろう。

 胸元の大きく開いたトップスに黒ジャケット。その美脚をこれでもかと誇示するスキニーパンツにピンヒール。


 キャリアウーマンを彷彿ほうふつとさせるその風格は、「ねえさん」という呼称がしっくりと来そうだ。


 特筆するべきスキルは*ランダム*から得た、操作(物体)Lv1と、ハッキングLv2である。

 操作系のスキルはおそらくレアだ。ハッキングについても、機械音痴の俺にはない能力だし、貴重な人材だといえる。

 

 もう一人が“獣王の愛弟子”犬神いぬがみさくらである。


 ちなみにそれぞれの称号は、自動付与されるものなので、獣王――――つまりドリエルの愛弟子だという称号は、ドリエル自身が認めているか、あるいは俺たちから見てそう見えるという事実だ。


 とにかく活発で明るく運動的な少女である。セーラー服を着ているので高校生なんだろう。短めの髪の毛を耳の上でツインテールにっている。


 格闘術Lv1は俺が設定したのだが*ランダム*で気功術が付くとは思わなかった。しかもレベル3だ。

 さらに、武器術(パチンコ)Lv3や、移動術Lv1も持っており、小柄で可愛らしい見た目とは裏腹に、完全な戦闘要員である。


 素手で戦ったら、俺、負けちゃうかもね……。


 さて、


みんなでちゃんと顔を合わせて、打ち合わせをするのは初めてだけど、まずは、現状を受け入れてくれてありがとう」


 深く頭を下げて、謝辞を述べる。もちろん、これは本心からだ。


「このゲームの中での魔王の存在意味は、人類の平和をおびやかし、世界を蹂躙じゅうりんし、プレイヤーたちを打ち倒すこと。つまり……ゲームを盛り上げるためのパーツなんだよね」


 皆は黙って俺に注目し、言葉の先を待っているようだ。


「他の魔王たちはその役割を存分にたのしみながらこなしてゆくんだろうけど、俺は違う。嬉々としてそんなことやってる奴らから……こんなデスゲームを仕組んで、世界を無茶苦茶にしようとしている奴らから……世界を救おうと思う」


 だから――――、


「だから、俺と一緒にたたかってほしい」


 もう一度、頭を下げる。そのまんまの姿勢で皆の反応を待つ。


「……今さらだょな。俺たちァ、あんたに召喚されようがされまいが、ゲームに巻き込まれたわけだろ? んなら一緒のコトじゃねぇか」


 龍平兄貴がいった。


「どちらにしろ僕たちだって、隼人と同じ思いにたどり着いたはずです。だったら、それをくつがえす力を得ることができた現状の方が、ラッキーってもんです」


 圭。


「おぬしに呼ばれた我々の中に悪人はおるまい。悪人を倒そうという気概のある者ばかりじゃ。まぁ、善人と設定して召喚したんじゃから出来レースもはなはだしいがのぅ」


 クァン老師が笑う。


「私は、隼人様に呼んでもらって本当に良かったですっ! 他の魔王に召喚されてたかと思うとぞっとしちゃいますっ」


 さくら。


「私たちの敵は……全人類と、ゲームのプレイヤーと、それからゲームの開発者、さらには他の魔王たち。四面楚歌ですわね。ぞくぞくしますわ」


 マリーベル姐さん。


「…………」


 ドリエルは、なにか考え事をしているようで、黙っている。まぁ、ドリエルらしいけどさ。


「ありがとうございます。長い闘いの日々になるのかな……今後ともよろしくお願いしますね」


「おう!」


「上等ですね、やってやりましょうよ!」


「仕方ないわねぇ」


「ほっほ」


「がんばりましょうっ!」


 ――――ありがたい。


 俺に巻き込まれたと言われても仕方がないと思っていたが、彼らの視野はちゃんと全体像を見据えてくれている。


「おい」


 ドリエルが唐突に口を開いた。


「ん?」


「先生……?」


 普通ではないと感じ取ったのか、さくらが心配そうにたずねる。


「オマエらになら言ってもいいか…………オレにとって、今回のゲームスタートは奇跡きせき的な好条件なんだ。運が良いというだけでは片付けられないほどにな」


 意味深な台詞。


「前回まで、プレイヤーとしてゲームに潜入せんにゅうしてきたが、成果を得ることはできなかった。今回は初めて魔王側として潜り込んだが……今のところ、上手く行きすぎている。これはたまたまなのだろうかな」


 どういうことだ? 突然、何を言い出すんだろうか。


「オレは地球人ではない」


「え!?」


 圭が思わず驚きを上げる。


「オレは100年以上、ポラリスというゲーム会社を追っている。オレは捜査官そうさかんだ」


 ドリエルのカミングアウトは続く。


 知的生命体が存在する数々の惑星をゲームのフィールドとして侵略し、そこを舞台としたオンラインゲームを開発して販売する会社、ポラリス。


 宇宙の果ての超文明下 でもそのような事業は禁忌きんきとされているが、一般人というものは物事の実状ウラなんて、意外と知らない。


 オンラインゲームとして売り出されたそれらを楽しむのみなのだ。略奪をしようが人を殺そうが、それはバーチャル世界での出来事であって、自分本来の所業ではない。本当は、本当のリアルであるということを薄々と感じつつも。


 ポラリスは、超文明をも一線越えた独自の技術力を持っているため、易々とその禁忌をあらわすこともなかった。

 外側からの捜査では何一つの手掛かりも得られない。ならばゲームの内側から探ってみてはどうか、と。何かしらの綻びから内部に繋がる糸口に引っ掛かるかもしれない。


 これはドリエルの人生で3つ目のゲームだ。


 まだ若かりし頃のドリエルは、一つ目の潜入捜査で何も出来なかった。


 そのゲームは最終的に、一人のプレイヤーと、一人の魔王の、一騎討ちとなった。世界は崩壊寸前。最後に勝ったのはプレイヤーだった。


 物語は大団円。ハッピーエンディングを迎えた。だが、後に残された大地は、世界は、人々は、何が大団円であったのだろうか。


 その後、その惑星は用済みとなって、放置され、後に滅びた。


 利用するだけ利用して、しぼりかすとなった星は、棄てられる。


 二つ目のゲーム。ドリエルはプレイヤーの一員として最期の決戦へと望んだ。だが、勝利したのは魔王であった。その魔王は強すぎた。数々のプレイヤーは、アカウントを再取得して何度も挑んだ。だが、魔王を倒すことはかなわなかった。


 プレイヤーは減少し、その内、ゲームはすたれていった。


 ポラリスの対応は――――、


「ゲームの打ちきりだ」


 重々しく語るドリエル。


「ゲームを打ちきったところでその星は存続するのだ。魔王をそのままにな。魔王軍に蹂躙されたその星は、今頃どうなっているだろうか……」


 そして、今回のターゲットは俺らの地球。


「オマエらなら、期待できそうだ。今度こそは救ってみよう、オマエらの“地球”をな。そして、ポラリスにはなわをくれてやる」


 ドリエル……。


「まあ、そんな経緯いきさつがあった。昔の話だがな」


みんな!」


 声を張り上げる。


「やるぞ!」


 大声で気合いを入れる。本当はそんなキャラじゃないんだけどな、俺。


 席を立って、ダンジョンコアの隣へ移動すると、皆がその後を付いてくる。


 円陣を組み、全員、握り拳を作る。


「クァンさん、お願い」


 最年長のリチャード・クァンに音頭をゆだねる。


「仕方がないのぅ。わしは生い先長くはないが、最期の戦場じゃ。お主ら…………世界でも救うかの」


「やりましょう、皆で!」


「おりゃああー!」


 龍平兄貴の雄叫びと共に、全員で拳を合わす。


 痛い。


 だけど、なんか、一体感。地球を玩具おもちゃにされてたまるかよ。


「先生、一緒にがんばりましょうっ」さくらが目をうるませながらドリエルにいう。


「ちょっと、貴方あなたいったい何歳なわけ?」マリーベルは、空気を読まずに率直な疑問をぶつける。


「よーし! やるぞー」圭はどうやら、やる気スイッチが完全に入ったようだ。


 俺は、ドリエルの横に行き、


「行き先は一緒だね。俺たちは同士……なのかな。頼むよ、ドリエル」


 分厚い背中を手のひらでぶっ叩いてみた。ちょっと勇気がったが。


「……ほう。いい度胸だ」


 ドリエルがすごむ。


 ……怖ええっす。




 その時、ドリエルがふと目尻をぬぐったように見えたが、俺は何も見なかったことにした。



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