魔王と愉快な仲間たちと変態
眷属を召喚することができるシステム。
眷属とは、自分が親分であるときの従者、あるいは部下って意味か。
システム上の項目名としては「眷属を召喚する」となっているので、あくまで、他所にいる人物をこの場に連れてくるもの、と解釈できそうだが、しかし、その人物のひととなりや能力までをも設定することができるのだから、やはり“創造”としか考えられない。
もしかしたら、設定した人物像に近しい者を探し出した上で能力を付加し、改造するということかもしれないが、その場合、その人物の人格を奪い、つまり、いったん殺して再生させるということになるんじゃないだろうか?
どちらにしても、非人道的で背徳的な所業といわざるを得ない。
でも――――もう、後には退けないんだよな。
俺の最終目標は、こんな意味の分からないゲームから地球を救うことなのだから。
大義の前の小事。
そんなに悪いことじゃないよな。否応は召喚された眷属の側が決めることだし。
こんな風に割り切ったつもりになって、ことを正当化しようとしている俺は、本当は、凶悪犯罪者たる他の魔王よりもずっと偽善的で、質の悪い人間なのかな。
考えるのは、よそう。
――さて。
「眷属を召喚する」という項目をクリックすると、ドリエルの時と同じく、まずは性別の設定を求められた。
ただし、同一ページ内に容姿や年齢など複数の設定項目が列挙されているので、勝手は全く違うようだ。ドリエルの時なんて、男で、バランス型としか選択の余地がなかったもんな。
順番に設定していく必要もないようだ。
ページのトップに、必要ダンジョンPtの合計値が表示されていて、いわゆるカスタマイズを加えるごとに上下するという仕組みだ。
レベルを上げたり、スキルを追加すれば、召喚に必要なダンジョンPtはかなり増えるし、容姿を良くするだけでも多少は増える。
美男美女ってやつはそれだけでポイントが高いってこと。
当然といえば当然なんだろうけど、せちがらいなぁとは思う。
とりあえず、1人目。
上から目線の筋トレマニアとは逆に、素直で明るい同世代の男性、って感じでいってみようか。
※
召喚に必要なDP:現在 5pt
各項目に指定する内容を入力してください。
・名前
・性別
・年齢
・体型
・容姿
・道義
・性格
・特性
・行動
・身体能力
・知能
・知識
・健康
・趣味
・特技
・レベル
・スキル
※
それぞれの設定項目ごとにダイアログボックスが複数、設置されており、そこに例えば「身長173センチ」「右耳の裏にホクロ」「面倒見がいい」「女好き」などと指定する内容を入力していくわけだ。
ダイアログボックスはポイントが許す限り無制限に追加できる。
未入力項目はランダム設定となり、そして入力した項目についても、指定内容以外はランダム設定とされてしまう。
つまり「右耳の裏にホクロ」だけでは、他にもホクロがある可能性は残るわけで、形や位置を限定したいのなら「右耳の裏にのみ小さなホクロ」としなければならない。
語彙が豊富であればあるほど、多彩で細かな個性付けができるわけ。
その点を考えると、日本語って文章のみで細かなニュアンスを表現できる言語であるから、お得感はある。なんとなく。
最初は、面倒くせぇなんて思ったけど、よくよく考えれば、そんなところまで設定することができますよーというだけであって、する必要はないのだ。
なんのカスタマイズも入れていない時点で、召喚に必要なポイントは5ポイント。それを支払えば“完全ランダム”な眷属が1人、召喚できるということ。
試しに、健康の欄に「余命一ヶ月」と入れてみたら、合計値がマイナス4され、1になった。
不謹慎だとは解っているのだが、今後のためにもある程度の検証は必要である。
容姿を「絶世の美女」にしてみると、なんと、プラス15ポイントが加算された。余命一ヶ月のマイナスよりでかい。
もちろん、合計値からの割合で計算されるのかもしれないし、計算式はわからない。
現実のゲームのように、その内、誰かが検証・考察を重ねて“まとめ”てくれないかな。
レベルをドリエルと同じ49にしてみると、プラス2105ポイント。
おいおい。
たまたま5000ポイント近くもあるから考察の幅に入るけど、最初の説明通りの1000ポイントだったとしたら、結構、なんにもできないのか?
スキルの付与についても確認してみる。
こちらもポイントが高くつくんだろうなと予想するが、見るだけなら無料である。
容姿や性格は表現力次第で自由に設定できたが、スキルはゲームの仕様上用意されたものからの選択となるようだ。
リストを表示させると、属性攻撃、属性防御、武器術などなど、多くのスキルがずらりと並んでいる。
ただし、リストの後半に目を進めると、スキル名が「???」となったものが増え、それは確認も選択もできないようになっていた。
理由はまぁ想像できる。
全てのスキル情報を開示してしまうということは、魔王は全てのスキルの存在を知ってしまうことになる。
そういうスキルがある、という情報だけでもかなりのアドバンテージだ。それはゲームバランスを損なうことに繋がってしまうだろう。
その考えを裏付けるように、俺が所持している――つまり、すでに“知っている”スキル、操作(時間)などは、ちゃんと表示されているのだ。
ドリエルの所持スキルも全てオープンとなっており、選択もできる状態。
今後、スキルの情報収集に力を入れていけば、眷属に設定できるスキルが増えていくってことかな。
ちなみに、操作(時間)Lv1を付加しようとした場合、必要ポイントは2500でした。
うーむ。
情報を得たところで、レアスキルの付与は無理っぽいか……。
※
召喚に必要なDP:現在 535pt
・名前:
・性別:男
・年齢:20歳
・体型:極端ではない
・容姿:平均点以上
・道義:義理堅い/基本的に善人
・性格:素直/明るい/社交的
・特性:
・行動:
・身体能力:運動は得意な方
・知能:バカではない
・知識:一般教養はある
・健康:至って健康
・趣味:悪趣味ではない
・特技:
・レベル:20
・スキル:
武器術(剣)Lv2
属性攻撃(氷)Lv2
属性防御(火)Lv1
特殊防御(眠り)Lv1
強化(物理防御)Lv1
治癒Lv1
*ランダム*
合計:535pt使用します。
残りダンジョンpt:3794
※
名前は空欄でいいだろう。
体型には、必要ポイントの増加がないニュアンスで矯正を入れておく。容姿はまぁ、見た目、平均点以上ぐらいにしてあげておこう。
ちなみにこれだけでも2ポイントの増加である。
道義とはつまり悪人か善人か、あるいは正義というものの根拠だ。
俺に対して妄信的に忠節を誓わせることもできるが、そういうのはあまり好みじゃない。
性格は一言でいえば“いいこ”だな。
身体能力や知能などには「低すぎない」というニュアンスで矯正を入れた。
ここまでは、何だかんだでそれほどポイントを必要とはしないが、ここからが高い。
レベル20で、122ポイントの増加。ドリエルを除いて最初の眷属ということもあり、魔王軍の要になってもらうことを考えて、高めに設定する。
20を越えると一気にポイントが跳ね上がるのでここまでにしたが、俺のレベルも21なのだから、これから一緒に鍛えていけばいいだろう。
スキルには、最低限必要とされるであろう一般的なものの他に、治癒を入れる。
はっきりいって高い。
治癒Lv1だけで300ポイントほど加算された。ただ、俺も欲しかったスキルだし、誰かが持っているべき要素だろうという判断だ。
もうひとつは「*ランダム*」というもの。100ポイントもするのだが、ランダムに1つ、スキルが選択される。
「???」のスキルを得る可能性もある、ガチャガチャのようなものだ。
合計、535ポイント。
大型新人登場の予感が漂ってくるが、少々、ポイントの使いすぎだろうか。
まぁ、治癒の割合が大きいし、ポイントにはまだまだ余裕がある。
「承認」でいいや。
ピシッ――――と、放電線が瞬いた。
ドリエルの時と同じく、ダンジョンコアの横辺りに何かしらのエネルギーが集束し、質量が成型されてゆく。
そして、しばらくの後…………
そこには、ちゃんと服を着た、俺と同年代と思われる男が立っていた。
顔立ちは日本人のそれだ。
「こ、こんにちは。俺の眷属になってくれる方ですよね?」
「…………」
男は、きょとんとした顔で、辺りをキョロキョロと見回している。
「ここは……僕はいったい……?」
え?
予想とは異なる第一声だった。
召喚された者は、魔王の眷属としてのポジションを当然のごとく理解しており、その瞬間から話が噛み合うものだと思っていたからだ。
まるで、俺が真っ暗闇に放り出された当初と同じような反応である。
「えっと……」
「まだゲームシステムが安定していないのかもしれんな。コイツの反応は明らかにおかしい。眷属は生まれながらにして魔王に従うことを理解しているはずだ」
ふいに現れたドリエルがいう。
「……確か、真っ白い光に包まれて、僕は……そのあと、どうなったんだっけ……」
男が呟いた。
!?
北極星の衝突を経験している!?
ってことは、俺と同じ地球人で、日本人で、現実にあの時、そこで生きていた人間ってことじゃないのか?
「おい。とりあえず、そこのオマエ」
「は、はい?」
ドスの効いたドリエルの一言に、男が慌てて返す。
「オマエは魔王の眷属として召喚された。この青臭いのがウチの魔王だ。挨拶ぐらいしたらどうだ?」
ドリエルに紹介された俺は、男に向かって歩み寄る。
しかし、青臭いってなんだよ。威厳もなにもあったもんじゃないわ。
「……ま、魔王? あなたは魔王なんですか」
「一応、魔王ってことみたい。これからよろしく頼むよ」
「よろしくって……僕はここでいったい何をすればいいんでしょう?」
「そうだね…………んと。俺たちと一緒に温泉を経営したり、地球を救ったりしない?」
「…………?」
意味がわからないという顔。
そりゃそうだよな。こんな唐突な状況で、さらに意味不明なことを言っちゃう俺も悪いんだけど。
「ドリエル、彼に全てを話してもいいかな?」
「そうせざるを得まいな。このままでは埒が明んだろう」
そうして、男と共にその場へ腰を下ろした俺は、ことの経緯を語った。
グリーゼという謎の女のことや、これがゲームで俺たちがその世界の住人であるということ、ドリエルから聞いたメタ情報をも、包み隠さずに。
「……すぐに得心するのは無理ですね……話が壮大すぎる」
「そうだろうなぁ。俺だってやっと実感が伴ってきたぐらいだし」
「とにかく、僕はあなたの部下――――眷属ってことなんですね」
「うん。まぁ、絶対服従みたいなことは無いよ。実際、俺と君はレベルも能力も同じぐらいだし、主従という関係の中でなにか強制力が働いている様子もない。ドリエルだっていつもあんなんだぜ」
相変わらずトレーニング中のドリエルを指差す。
受けの構えから正拳突きのモーションをとったドリエルは、拳にオーラを纏わせる。
青白いオーラは徐々に膨れ上がってゆき――――
「す、すごい……」
実際に、非現実な現象を目の当たりにした男は、感嘆の声を上げ、戦慄している。
握り拳を中心にさらに膨張するオーラが、ドリエルの体を包むほどに肥大した瞬間、
「ハァ――――ッ!!」
気合いの声と共に、拳を地面に叩き付ける。
凄まじい轟音と地響きが鳴り、砂塵が舞い上がる。
つか、こっちまで衝撃波が届いてビリビリきてるし、石やらなんやらが飛んできて痛いんですけど。
なにしてくれとんねん、このおっさんは……。
「ちょ、ドリエル、もうちょっと離れてやってよ……」
「……ふむ。少々、タイミングが乱れたようだ……打撃が散ってしまった、悪かったな」
言っている意味はよく分からないが、あまり上手くいかなかったようだ。
顔にいくつかの傷を負っており、血が滲んでいる。
そりゃ、あんな間近であの衝撃波を起こしたら、当の本人だって怪我しますわな。自業自得じゃ。
そんな心とは裏腹に、
「大丈夫?」
「ふん。かすり傷だ」
そうだ。ちょっと試してみようか。
実感を得るには体現が一番だろうし。
「ねぇ、君。ドリエルの怪我を治してあげてよ」
「え!? どうやって?」
「治癒Lv1のスキルを持ってるはずだから、治せると思うんだ。どうやるのかは俺も知らないんだけど……」
そういえば、スキルの使い方ってどうやるんだろ?
「なるほど。そういうことなら治してもらおうか。スキルを覚えているならそのスキルはすでに使える状態だ。どうやって使うかは“知っている”はず。感覚的にやってみろ」
こんなもの蚊に刺された程度なんだが――とかなんとか呟きながらも、治癒の実践に協力を示してくれるドリエル。
「感覚的に――――か。じゃあちょっと失礼して」
ドリエルの前に立った男は、ドリエルの顔に手のひらをかざした。
俺と同じで175センチほどの身長だが、ドリエルとは頭1つほど違う。
挙手するような格好で、目をつむり、おそらく心の中で「治れ~治れ~」と繰り返し念じていることだろう。
そして、
「ほう……治ったな。便利なものだ」
およそ10秒ほどののち、傷はすっかり無くなっていた。
「本当に、治った……っ!」
ぱっと表情をゆるめた男は、自分の手のひらを見つめながら、感情を昂らせているようだった。
「少しは今の状況を理解できたか? ウチの魔王は悪いヤツじゃない。とりあえず協力しておけ」
「…………」
男は真顔になって、なにかを考えているようだ。
「君からしてみたらさ……こっちの都合でこんなデスゲームに急に呼び出されて、眷属として参加しろって言われてるわけだ……解ってる。俺って勝手だよな」
「…………」
「怒ってる? 今の俺には謝ることしかできないんだけど……」
自分の役目は終わったとばかりに、再びトレーニングへ向かうドリエルの後ろ姿を、なんとなく目で追っていると、男が口を開いた。
「僕の名前は、宇津木圭。魔王殿、僕を呼んでくれたこと、本当に感謝します。地球を弄んで、無茶苦茶にしようとしているやつらを倒そうとしているんでしょ? 上等です。先陣きってやりますよ!」
そして一礼し、上げた顔は笑顔であった。
「……ありがとう」
「怒りの矛先は、ゲームの開発者たちにであって、魔王殿は僕と同じ被害者じゃないですか。そんな奴等と戦うことができる力をくれたことにこそ、感謝ですよ」
ゲームの開発者と一戦を交えるとしても、それはまぁ、ゲームの最終盤ではあるだろうけど。
そう言ってくれることは素直に嬉しい。
「よろしく頼むよ、圭。あと俺のことは隼人でいいから」
俺が魔王だってことはトップシークレットだからなぁ。
「分かりました、隼人。で、これからどうします?」
「まずは人材が欲しい。モンスターもね。動くのはそれからかな」
他の魔王対策にモンスターを何匹か召喚して、ダンジョンに配置する。ダンジョン自体にも手を加えたいし、それらを任せられる人材も必要だ。
次に温泉郷建設のための人材。多少の建築知識やマーケティング知識が必要だろうし、なんなら温泉に詳しいとベターだ。
他の魔王たちの視察もしたい。
それから現世界の情報収集。すでにゲーム仕様の色が出始めているのかどうか、武器屋だとかそんなものがあるなら見ておきたいし。
時間停止している人々が今どういう状況なのかも知っておきたい。
まだ1ヶ月もあるんだから、それらひっくるめて自分でやってもいいんだけど、こういうのは向き不向きやセンスってあるからなぁ。
「ダンジョン作成指揮者が1人と、温泉郷の現場管理者を1人、まずは召喚しよう。視察には俺とドリエルで行くつもり。圭には、基本的に魔王代理をして欲しい。コアの操作法を覚えてくれよ」
「せ、責任重大ですね……」
「あ。それ壊されたら俺、死ぬから……眷属がどうなるかは知らないんだけどさ……」
「まじっすか……」
「まぁ、ここへ侵入者が現れる確率自体、微々たるもんなんだろうけどね」
さて。ダンジョンと温泉の担当者を決めていこう。
眷属の召喚に対する抵抗は、随分と薄らいだが、後々、戦闘にも加わってもらわなければならないことと、あくまで相手は“ヒト”だということを考えれば、1人につき、最低300ポイントは注ぎ込みたい。
それが、被召喚者に対するせめてもの敬意だと考える。
まぁ、ポイントが豊富だからこそ言えることなんだろうけれども。
圭と相談しながら、ダンジョン部門の担当者を設定してゆく。
圭の事例からして、眷属にはその元となる人物が存在する可能性が高い。個人の人格を奪い、殺すようなカスタマイズは避けつつ、
「これでいいかな」
※
召喚に必要なDP:現在 351pt
・名前:
・性別:男
・年齢:
・体型:極端ではない
・容姿:
・道義:悪人ではない
・性格:
・特性:
・行動:
・身体能力:
・知能:バカではない
・知識:
生物学に明るい/地学に明るい/化学に明るい/空想生物への興味
・健康:至って健康
・趣味:
・特技:
・レベル:20
・スキル:
武器術(鞭)Lv1
属性攻撃(土)Lv1
属性防御(水)Lv1
特殊防御(毒)Lv1
解析Lv1
調査Lv1
魔物(調教)Lv1
魔物(使役)Lv1
合計:341pt使用します。
残りダンジョンpt:3453
※
――――続いて、温泉郷の建設担当者だ。
※
召喚に必要なDP:現在 299pt
・名前:
・性別:男
・年齢:
・体型:がっちり
・容姿:ガテン系
・道義:悪人ではない
・性格:豪快/繊細/根は優しい
・特性:
・行動:喫煙/飲酒
・身体能力:力持ち
・知能:バカではない
・知識:
建築知識がある/土木知識がある/マーケティングに明るい
・健康:至って健康
・趣味:サウナ
・特技:喧嘩
・レベル:20
・スキル:
酒豪Lv4
操縦(重機)Lv2
武器術(ハンマー)Lv1
格闘術Lv1
鑑定Lv1
*ランダム*
合計:299pt使用します。
残りダンジョンpt:3154
※
温泉郷の建設担当者に関しては、ちょっとカスタマイズしすぎてしまった感はあるが、現場の男はなめられちゃいかんしね。
漢っぽいイメージだ。
ただ、現場つっても、作業員も居なければ、重機が動くわけでもないのだ。夢のフルオート建築システムなので、なめられるもくそも無い。
途中で気がついたんだけど、まぁ、イメージも大事よね……ってことで。
どちらも「承認」っと。
ダンジョンコアを挟んで両側の空間が、例のごとく瞬き、二人の人物が召喚される。
一人は、目付きの鋭い小柄な老紳士。いきなりの状況に動揺している様子もない。
もう1人は三十代半ばといった見た目の超兄貴。イメージ通り、コテコテのガテン系だ。
共に東洋系――おそらく日本人だと思われる。
「どこだァ、ここは?」
超兄貴が吠える。
「…………」
かたや無言で様子を伺う老紳士。
やはり、圭の時と同じだ。魔王の眷属として召喚されたことを理解していない。
「突然、こんなところへ呼んでしまって申し訳ありません。俺は魔王の葉山隼人です。こっちが宇津木圭、あっちの筋トレマニアがドリエル・ロイドです」
「魔王、だと……?」
「あなた方に協力してもらいたいんです。この状況については今から説明しますので」
「……訳が分かんねぇな。お前らいったい何者だ?」
……かまを掛けてみるか。
「空――――。真っ白な空に、飲み込まれた経験はありますか?」
老紳士の眉ねがひくりと動いた。
「思い出した! そうだ……俺ァ、眩しすぎる夜空に飲み込まれて……死ん、だ?」
「ここは、その続きの世界みたいです。誰がどんな目的でやってんのかは分かっていませんが、全人類はこの身勝手な“ゲーム”に巻き込まれたのです」
ゲームという言葉に、ますます訝しげな表情を見せる超兄貴。
しかし、
「なるほどのぅ。つまりわしらは、一般の者とは異なる巻き込まれ方をしてしまったのじゃな」
さすがは年の功。理解が早いと話が早い。
「……ちっ。まぁよ、俺も話の分からネェ人間じゃぁないつもりだ。まずは、説明してもらおうか」
おかげで、超兄貴も少しはほぐれたようだ。
さて、二人に説明をしようかと口を開きかけたところで、ドリエルがやってきた。
ドリエルは基本的に無表情のはずだが、目を細め、怪訝な面持ちだ。
少し苛ついているようにもみえるが……どうしたんだろうか?
「おい!」
「え? どうしたの、ドリエル」
「……オマエ。正気か?」
なんなんだよ、藪から棒に。
「え? なにが?」
「オッサンばっかりじゃねえか!」
どーん。
「華はどうした? まさか、このメンバーで決定しようと思ってるんじゃねえだろうな?」
そこ? そこなの!?
女子がいないって文句いってんの?
このオヤジ……硬派なのかと思ってたら、とんでもない変態じゃねーかよ!
「最低、2人は確保しろ」
「はぁ……」
ため息が漏れる。
そんな様子を見ながら、圭がニコニコしている。
老紳士はにやりと微笑を浮かべ「ふぉっふぉっ」と笑っている。
超兄貴は爆笑。
まずは説明しろとか言っておきながら、なんでもう、馴染んじゃってるの?
……まぁ。悪くないのかもね。
こんな感じも。