魔王のステータス
≪葉山 隼人≫
「さて、設定を続けろ」
直立して腕を組んだドリエルが、キーボードを操作するようあごで促してくる。ふるちんのくせに横柄なもんだ。悪意がないことは分かっているので別にいいんだけれども。
画面を見ると、いつの間にかアシスタントの設定に関する内容は消えており、初期設定を促す項目が点滅している。
カーソルを合わせ、クリック。
※
◆ダンジョンの設定
・ダンジョン名――
・拠点――
◆魔王の設定
・魔王の名前――
・容姿の変更――
・初期ステータス――
・初期スキル――
確認____。
※
うーむ、なるほど。確かにゲームだなこりゃ。
上から順番にまずはダンジョン名か。しかし、ダンジョン名とか言われても、いきなり困る。なんかコンセプトを決めて、それに沿った名前をってのが理想なんだろうけど……。
「この辺は後で変更できるはずだ。とりあえず深く考えずに付けとけ。だいたい、オマエが決めた名前で皆が呼んでくれるとも限らん」
ごもっとも。じゃあとりあえず――――
「瀬戸内国際ダンジョン……っと」
「まて。なんだそのふざけた名前は……温泉ホテルかなにかのつもりか?」
「仮だってば」
別に、ふざけているわけでもないんだけど。
ダンジョンの役目は侵入者を殺すことだって分かってるけど、だからといってガチの殺戮ダンジョンを造るつもりもない。
気がめいる。
なんなら本当に温泉郷でも造ってしまおうかと思ってみたり。
「……まぁいい、次だ。これは決定したら変更できないから、よく考えろよ」
拠点である。
「世界中のどこでもいいの?」
「どこでもいいし、言葉も通じるはずだ。ゲームなんでな。まぁ、あまり辺ぴな場所はやめておけ。オレたちにとって得るものがない」
ゲームの最終目的が全魔王を倒すことなんだから、辺境に拠点を置いたところで、最終的にはこぞって攻め込んでくるわけだ。ただ、序盤からわざわざ出向いてくる奴も少ない。
平和でいいじゃないかと言いたいところだけど、ある程度は荒波にもまれてレベルアップしなければ、先々生き残れないってことだ。
「魔王ってダンジョンの外へは出れないの?」
「そんな制約はないな。ただし、ダンジョンコアを持ち出したり、移設することはできないから、外出中の対策は取らねばなるまい。コアが破壊――――ダウンさせられた時点でオマエは死ぬ」
こわいこわい。
ちなみに拠点ってのは、ダンジョンの所在地という意味に違いないのだが、厳密には“ダンジョンコアがある場所”なんだそうだ。
ダンジョン自体はポイントが許す限りどこまでも拡張することができるので、ダンジョンの入口自体は拠点の座標からは外れる。
最も、ダンジョンコアのすぐそばに入口を造るならその限りではないが、そんな大胆なことをするやつはいないだろう。
実は拠点の候補地はもう決めてあったりする。ダンジョン名からも推測される通り、瀬戸内海をまたいで本州と四国を結ぶ瀬戸大橋のたもと、岡山県倉敷市児島である。
俺自身が岡山県在住なので、まずは土地勘がある。それにこの辺りはなかなかに面白い要素が豊富だ。
鉄道と道路を通す二階建て構造である瀬戸大橋。
瀬戸内海とそこに浮かぶ大小多くの島々。香川県側には工業地帯が広がり、岡山県側の海岸線にはそれら全てを眺望できる鷲羽山が裾野を広げている。
これらの地形と、穏やかで明媚な瀬戸内の景観を、うまくダンジョンに絡められれば、きっと素敵なダンジョンが出来上がるはず。
ことダンジョン造りの企画・開発としての観点からズレてるとは思う。分かってる。うん。
で、さらに、岡山という土地は、東に関西、西に中・九州へとつながる山陽筋の要所だ。北は山陰へ、南は四国へと通じる交通の十字路ともいえる。
多方面からくる流通は常に新しい情報を落としてゆくだろう。この場合の流通とは冒険者など、このデスゲーム関連のものを指す。
シミュレーションゲームの定石は、敵を多方面に作らず後顧の憂いを残さない状況をもって、前面展開していくってものだろうけど、まぁ、これが吉とでるか凶とでるかはまだ分からない。
これはシミュレーションゲームじゃないだろうし、そもそもゲームの概要がまだほとんど明らかではないのだから。
ってことで、
「岡山県倉敷市児島…………」
と、ここまで入力したところで画面に航空地図が展開された。場所は倉敷市児島周辺だ。
瀬戸内海に突出した鷲羽山の鼻先が岬を作っており、少し外れた位置から南に向かって瀬戸大橋がのびている。
インターネット上の地理情報システムとほとんど同様のインターフェースなのだが、驚くべくはその解像度だった。スライドバーを操作して山裾の辺りを拡大してゆくと、なんと樹木の一本一本まで詳細に表示されるのだ。
さらに拡大すると、葉っぱと、そこにとまっている羽虫を見つけることすらできた。
「これは日本か?」
ドリエルが画面を覗き込んでくる。
「ほう。なかなか面白そうな場所じゃないか」
地形や立地について、俺なりの考えを伝えると、
「上出来だな。少々考えるべき内容からズレてる気はするが……結果的には悪くない立地だ」
そりゃどうも。
航空地図の中心を鷲羽山の山頂付近に合わせ、適当な位置でクリックする。併せて深度の入力を求められたが、適当にマイナス100メートルほどにしておいた。
さて、ちゃちゃっと終わらせようか。
続いては魔王の設定――――つまり、俺自身の設定だ。
まずは名前と容姿だが、これはそのままでいくことにした。
他の魔王連中が、嬉々として中二病全開の名前を付けてニヤけてるのかと想像すると、なんだかほっこりする。
容姿についても、こちらは見た目をある程度変更できるというだけで、身体能力には影響しないらしい。俺はイケメンってわけでもないが、別段、自身に不満もない。
そして次の項目はお待ちかねの“ステータス”である。俺の能力値。いやが応にもワクワクしてしまう。
いざ――――
※
◆ステータス
葉山隼人(魔王#99)
クラス:魔王
称号:善良な一般市民
Lv:21(+20)
経験値:607
《Lucky!!》経験値607pt上昇
HP:107(+80)
SP:115(+80)
体力:26(+20)
筋力:28(+20)
耐久力:27(+20)
器用:25(+20)
知力:27(+20)
精神力:34(+20)
魔力:20(+20)
敏捷:27(+20)
魅力:75
運:50
根性:77
カルマ:0
ボーナスポイント:40
・ボーナスポイントを振り分けて下さい。
※
これが俺の能力値……なんか感動。ただ、これらの数値が高いのか低いのかは全くわからない。
レベルが21になっているのは、グリーゼが言ってた“魔王たる力”を与えられた結果ということか。
「レベルが20上がって、それぞれ右側の数値分上昇したということだ。ボーナスポイントは、オマエの目指すスタイルに合わせて振り分ければいい」
ってことは、例えば、俺の元々の体力は6ってことだ。一桁って……俺ってそんなに体力なかったの?
「ちなみに一般人の平均は5~7程度だ。それから考えれば、オマエは総合的に高い方だな」
なるほど。そして魔王の力を手に入れ“超人”になりましたってか。
「ほらよ……ッ!」
!?
ドリエルが唐突に俺の背後へ回り込んだ。
とっさに振り向くと、ファイティングポーズを取った全裸のマッスルボディは、左足を一歩踏み込んだ。足先に重心を乗せ、そのまま――――
「……なっ!?」
全身を鞭のようにしならせ、俺に向けて蹴りを撃ち出した。
超重量級のそれは、まるで抜刀からの斬撃を思わせる速度で綺麗な弧を描く。脇腹の辺りを狙った中段の回し蹴り――――
このまま突っ立っていては、攻撃が届いた時点で内臓破裂間違いなしだ。
まじかよ!!
俺は右足を軸にくるんと全身を翻してドリエルに正体し、すねを上げてガードを試みる。ぎりぎり間に合った!
だが、しかし、どこからどう見てもパワーが桁違いだ。このまま体ごと弾き飛ばされる――そんな憂いがかすめた刹那、
ドン――――と、衝撃がはしる。
内蔵が…………破壊されたわけではなかった。ぶっ飛ばされてしまったわけでもない。
ドリエルの蹴りを見事にガードしていた。
ドリエルが寸止めしたわけでもないし、それがとんでもなく重い一撃であったことは受けた俺が一番よく分かる。
「オレの蹴りは野性動物の突進力並みなんだがな」
なんなんだよ、いきなり!
しかし…………そうだよな。
色々と思考しつつもドリエルの動きに対応できたのは事実だ。蹴りを受け止めたときも、相当の衝撃だと体感しつつも、実はまだまだ余裕があった。
「それが、レベル21だ。オマエはもはや人間の次元を超越したのさ。ただし。これからどんどんインフレが加速するだろう。怠けてたらじきに追い付かれ、追い越される」
しばし、呆然とする。
……すげえ。
これが魔王の力。寝て起きたら改造人間にされてたって感じだ。
拳を握ってみると、凄まじい力がみなぎって来る。
「俺は……こんな力、使いこなせるのかな?」
「すでに使いこなせるようになっている、というのが正解だ。経験から培われた力とは言い難いが、オマエは現に“経験値”を得ているのだからな」
分かったような、分からないような。まぁ深く考えるのはよそう。これはゲームだ。
とりあえず、残っているボーナスポイントを振り分けようか。
少し考えてみる。
まず、体力や筋力といった数値は、自身の身体能力――つまり個人的な戦闘能力を強化するものだろう。しかし俺は魔王だ。常に最前線に出張って戦うなんてわけにはいかないはず。
そこら辺は配下に任せて、自分は社長業務、もとい魔王業務に勤しまねばならない。
ドリエルに訪ねてみたところ、やはり、人間や魔物を眷属として従えることができるらしい。となれば、重要視されるものは、知力や魅力などのリーダーシップに関する能力ではないだろうか。
「下の4つ、魅力、運、根性、カルマに、ポイントを振り分けることはできない。ステータスというよりは個性だと考えろ。オマエ次第で勝手に上下する。それと、カルマってのはいわばオマエの悪人レベルを表したバロメーターみたいなものだから、高ければいいってもんでもない。まさか0だとはおそれ入ったがな」
魅力や運にポイントは振れないのか。最大値は100らしいので、魅力や根性は決して低くはない。
しかし“運”ってやっぱり存在したんだなぁとしみじみ。数値化されるってことはそういうことなんだろう。100分の50ってのがなんともいい感じだ。これが50を切ってたりしたら絶対に鬱ってた。
カルマが0ってことに驚くドリエルだけど、俺だって嘘ぐらいついたことはあるし、人が大勢死ぬような戦争物語を娯楽として手に取ることだってある。これで0なら一般人はほとんど0じゃないだろうか。
魔王に選ばれたのは凶悪犯罪者ばかりらしいから、その基準で考えればまぁそんなものなのかもしれないけど。
で、
「結局のところ、おすすめのステ振りってどんな?」
まぁ、聞くのが早いわな。
「なんだ? 自分なりに試行錯誤してたんじゃないのか?」
「難しいよ」
「オマエの好きなバランス型にでもしておけ」
身もふたもない応え。
「あ、そうだ、魔力ってなに?」
「おそらくオマエが想像している通り、特殊なスキル――魔法などの効果量に影響する能力だ。MPの最大値にも直結する。逆に精神力はそれらへの耐性にも関わってくる」
正直、魔法ってのは憧れる響きである。
ただ、よくよく聞いてみると、なにかしらのスキルを使うにしても、魔力だけが高ければいいというものではないらしい。全ての能力が複合的に必要とされることが多いとのこと。
要するに結構リアルで、そりゃそうだよなって話である。
ということで、それなりに悩んだあげく、満べんなく5ポイントづつ振り分けることにした。
※
HP:127(+20)
SP:135(+20)
体力:31(+5)
筋力:33(+5)
耐久力:32(+5)
器用:30(+5)
知力:32(+5)
精神力:39(+5)
魔力:25(+5)
敏捷:32(+5)
魅力:75
運:52
根性:77
カルマ:0
※
――これでよし、と。
「いいんじゃないか? まあ、まだまだオレの方が強いけどな」
人類の平均は遥かに上回ったつもりだけど、それよりもまだ強いとか、おっさん、いったい何者やねん。
つか、魔王よりアシスタントの方が強いとかアリ?
「俺も、ドリエルのステータスを見れないの?」
「初期設定が終われば見れるだろう。オレはオマエの眷属だからな。まぁ、楽しみにしておけ」
にやりと不敵な笑みを浮かべるドリエル。だんだんとキャラが固まってきた。
くそ……いつか形勢逆転してやる。ま、頼りになる味方ってことなんだろうけどさ。
「気になるなら、さっさと終わらせろ。後はスキルの設定だ」
はいはい……と。
※
◆スキル
以下、A~Fグループの候補よりそれぞれ1つ選択して下さい。
【グループA】
・酒豪Lv5
・操縦(自動車)Lv3
・楽器(フルート)Lv3
【グループB】
・武器術(ハンマー)Lv2
・強化(魅力)Lv3
・属性攻撃(風)Lv2
【グループC】
・武器術(刀)Lv3
・属性防御(火)Lv3
・具現(ゴーレム)Lv2
【グループD】
・特殊攻撃(眠り)Lv2
・属性攻撃(雷)Lv4
・移動術Lv2
【グループE】
・操作(天候)Lv4
・強化(敏捷)Lv3
・治癒Lv2
【グループF】
・化身(闇)Lv1
・対消滅Lv1
・操作(時間)Lv1
※
ざっと目を通してみた。
Aグループには、努力次第では現実世界でもなんとか修得できそうな技能が並んでいるが 、下に行くほど“ゲーム”という感がぷんぷんとしてくる。
Fグループに至っては、詳細は分からずとも、相当にヤバいスキルであろうことがスキル名から容易に推測される。
ステータスを決定した際に、ドリエルの攻撃を受け止めた事実から考えても、これらはガチだ。
他の魔王やプレイヤーたちも同様にこういったスキルを携え、いつか対峙することになると考えたら、ぞくっと全身に戦慄がはしる。
いや、今はまだ深く考えるのは止めよう。怖すぎる。
レベルが上がって精神力が鍛えられたからこそ耐えていられるんだ。きっと。
どうするか。上から順に決めていこうか――
それぞれのグループから1つずつ選べということなので、合計6つのスキルを手にいれることができるらしい。
「さすがは魔王ってヤツか……かなり優遇されているな。いいか、全体を見てイメージしろ。与えられた選択肢の中から自分の戦闘スタイルを組み合わせ、作り上げるんだ。漠然としたものでいい。無駄にするなよ」
戦闘スタイルか……。とりあえず「酒豪」が要らないってことは薄々分かるんだけど。
「スキルって今後も手に入るの?」
「ああ。武器術や属性攻撃などは店売りもしているし、他にも入手手段は様々だ。敵を殺すことで相手の所持スキルを入手することもできるな。ただしそうして入手したスキルのレベルは1だ。鍛えればレベルは上がっていくが」
殺して入手とか、いちいち野蛮なんだよなぁ。
まぁ、でも後々入手できるのなら、取り返しがつかないってことはなさそうだ。
ドリエルのアドバイスを受けながら、考察してゆく。
まず、武器術というのはその種の武器を扱う技能ということで、最低限一種類は欲しいということ。
属性攻撃というのは、いわゆる攻撃魔法だ。
ドリエルいわく、戦士だとか、魔法使いだとかいうタイプを“くくり”つけ、こだわることは愚かだという。
望むスキルを入手することは困難なのだ。
取得したスキルを常に取り入れ、柔軟にスタイルを変化させてゆくべきなんだそうだ。
与えられた選択肢を見てイメージされたスタイルは――――
サムライだった。
武器術(刀)からのインスピレーションが大きいのだが、強化(敏捷)や移動術など、素早く動いて一刀両断、みたいな。忍者に近いかもしれない。
なんせ、オシャレだ。
C・D・Eグループはその3つで暫定としよう。特殊攻撃(眠り)や治癒もかなり魅力的だが、第一印象は大事だ。きっと。
「ドリエル、スキルのレベルって最大はいくつなの?」
「レベル5だ。どんなスキルでもレベル5まで上げれば、もはや奥義と呼べるだろうよ」
うーん。酒豪はレベル5なんだよなぁ。
「酒豪レベル5って、端的にいえば酒がもの凄く強くなるスキルってことだよね?」
「ザルだな」
「使いみち…………は?」
「直接戦闘ばかりが能じゃないだろ。諜報や調略に役立つこともある……かもしれん。無いかもしれんが」
よし。はい消えたー。
Aに関して残るは2つ。
操縦(自動車)と、楽器(フルート)だが、前者は車の運転が上手くなるというものだ。レベルが上がれば、F1ドライバーなみのドラテクを身に付けることだろう。
いや、もっと人間離れした技術に違いない。
魅力的だ。
魅力的だが“サムライ”のキャラからは外れるんだよなぁ……大外れ。別にそんなこだわってるわけじゃないんだけれども。
ならば、楽器(フルート)はどうだろう。
これが横笛とか、尺八ならば即決なんだけど、フルートって……欧米かっ!
「例えばだが、楽器の演奏と属性攻撃を上手く組み合わせることなども可能だ。スキルってのは、こうすればこうなるという凝り固まった概念ではなく、発想力次第でどうにでも応用がきくものだ」
なるほど。
属性攻撃――つまり魔法も一つぐらいは欲しいと思っていたし、グループBの属性攻撃(風)と、楽器(フルート)を上手く組み合わせた技を考えるのも悪くない。
欧米うんぬんは気にしないことにしよう。
さて、残るはグループFだ。
・化身(闇)
・対消滅
・操作(時間)
レベルは全て1なのだが、どれもどう見ても“レア”ですよ。
「化身ってのは、オマエそのものがその事象に転化するというものだ。化身(火)であればオマエは火になる。闇なんだから闇になる。はっきり言って、レア中のレアだ」
「闇になった俺って、要するに無敵だよね? 実体が無いってことでしょ?」
「対抗手段を持たない相手には確かに無敵だ。だが例えば、相手がその下の“対消滅”を持っていれば、転化状態を強制解除させられる可能性もある。恐ろしく強力なスキルであることには違いないが」
なるほど。こんなスキルを持ってる奴に出会ったときは対消滅が有効ってことだ。
なんとなく地味なイメージなのがたまに傷だが。
「操作(時間)ってのは?」
「名前の通りだろ。時間を操作できる。オレも詳しく分かっているわけではないが、反則技の部類だろうな」
時間を操作する…………か。
…………ヤバイ。カッコイイ。
「ドリエル、これでどう思う?」
※
◆スキル
・楽器(フルート)Lv3
・属性攻撃(風)Lv2
・武器術(刀)Lv3
・移動術Lv2
・強化(敏捷)Lv3
・操作(時間)Lv1
※
並べてみると、若干、バラエティに欠けるチョイスで、意外に手堅くまとまった気がする。
化身持ちの相手に対して、今のところ対抗手段が思い付かないのだが、それは今後の課題ってことで。開始早々、そんな輩に襲われるとも限らないだろう。
「ほう。治癒や化身を切ったのか。まあ、それなりに面白そうなスタイルだ。足りない部分は仲間――――いや、眷属で補えばいいしな」
「仲間でいいよ。眷属……ってのはなんだか、俺って何様? て感じだしさ」
「魔王様だろ」
まぁ、そうなんだけどさ……。
つか、そう思ってんならもうちょっと言葉づかいとかさぁ……。
※
初期設定完了――――
ダンジョンコア移転完了――――
登録完了。
ダンジョン解放まで残り:29日 12:15…………
※
ふぅ。やっと初期設定完了か……いよいよデスゲームの開幕というわけだ。あっそうか。まず1ヶ月間は、ダンジョンを造らなきゃいけないんだった。
さてと。何から始めようか――――と、そう思ってふと周りを見渡してみると、
「つか、真っ暗なままじゃん!?」
確か、初期設定が終わったら視界が開けるとか言ってなかったっけ?
「よく見てみろ」
モニター画面が放つ唯一の光に全身を照らされたドリエルが、くいっとあごを上げた。
言われた通りにもう一度、周囲を観察してみる。
まず最初に気付いたことは、地面がちゃんと地面だということ。手を当ててみると固くざらざらとした地肌の感触があった。土だ。
目を凝らしてみると、遠くの四方に薄ぼんやりと光が反射していて、見上げた空には天井がある。
およそ小学校の体育館ほどの広さだと判断できる空間は、しかし、真っ暗闇であることに違いなかった。
「ここは…………」
先程までの宇宙空間とは明らかに違う場所。
「オマエが選んだ拠点、鷲羽山とやらの深度100メートル地点だろうな」
「ああ。そういうことね…………で、どうやって外に出たらいいの?」
「ダンジョンの入口を造ってそこから出るしかないだろう。ただし、ここがこのダンジョンの“終点”の間だからな。逆順で造らなければならないことを理解しておけよ」
はぁ…………ってことは、まだしばらくの間は、ダンジョン生活が続くってことね。
なんだか、どっと疲れたな。
とりあえず、温泉でも作ってのんびりしようかしら。いやいや、まずは仲間が欲しいよなぁ。
全裸のおっさんと二人きりとか、この先、キツいわ。
「おい!」
「ん?」
「なぜ、オレは服を着ていないんだ?」
…………ファッ!?