分かち合う
彼女は言った。
「この悲しみを分かち合うことができればいいのに」
少年は言った。
「この喜びを分かち合うことができればいいのに」
人々は言った。
分かち合うことを。
人々は願った。
分かち合うことを。
やがて人々は
全てを分かち合うようになった。
喜びを。悲しみを。苦しみを。悔しさを。全てを。
人々の個性は凹凸を失った。
飛び出た場所があれば
均等に他にわけられた。
へこんだ場所があれば
均等に他にわけられた。
人々は平等を訴え
人々は平等になった。
そして人々は
“同じ”になった。
皆同じかおをし
皆同じ性格や経験をし
すべてが同じになった。
そして彼女は言った。
「この悲しみを分かち合えればいいのに。」
そしてその悲しみを分かち合い、彼女はその他大勢と同じように笑った。