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第21話 金髪クズギャルを分からせたい

 ん……? これまさかとは思うが……。


「なんでまたそんな事を」


 なんとなくこいつの目的は分かってきた気がするが、確信を得るべく重ねて聞いてみる。


「その、山添君って彼女いないんでしょ? あーし、実はちょっと山添君の事気になっちゃってさ」


 これみよがしに髪の毛をいじりながら視線を逸らし、頬を紅くする芦木に、背後ではポニテ先輩が軽くため息をつく。

 渡良瀬もまさかの発言にやや驚いているのか目をぱちくりさせていた。


 あーなるほどね、完全に理解。

 こいつあれだ、俺の事篭絡しようとしてるな。


 喫茶店の時、俺が月ヶ瀬を助けたのだという事は薄々気づいていたのだろう。その上で気づかないふりをして接触。月ヶ瀬から味方であると思われる俺を奪おうという魂胆に違いない。そうでもなければ普通ありえないだろ、特に面識もなくイケメンでもない後輩にそんな事言ってくるの。前例もあるしな。


 ああ、なんていうか、そうまでして月ヶ瀬を傷つけたいのかこの女は。

 ……つくづくイライラさせてくれるな。


 ただ俺は本倉のようにはいかない。なんならちょっと分からせてやるのもいいかもしれない。


「それで、どうかな……?」


 もじもじしながら芦木が猫なで声で聞いてくる。

 うわきっ。


「しょ、そーですねー」


 危ない、本音が漏れかけた。


「あ、噛んじゃってかわい~」

「ハ、ハハー」


 都合のいい解釈なのか分からないがまぁ本音は気取られなかったのでヨシ!


「土日はちょっと空いてないので、この後どっかいくのはどうです?」


 流石にこれのために休日まるまる潰すのは嫌だったのでそう提案する。


「え、全然いいよ!」


 芦木が瞳孔を開き、笑いかけてくる。

 まさか前向きの返事を俺がするとは思ってなかったのか、渡良瀬が勢いよくこちらへ顔を向けてきたのを視界の端に捉えた。


 俺だって当然行きたいわけないのだが、せっかくの機会だしちょっとくらい仕返ししてもいいかもなと。


「えーじゃあどこいくー?」

「お腹空いてるので何か食べたいかもしれないですね」

「お、いいじゃーん、流石男の子~」


 芦木が調子よく持ち上げてくる発言をしてくるが、あくまで俺を篭絡する手段であり、それが本心じゃないのは分かり切っている。

 正直この女がどこまで本気で俺を落とそうとしているのかは知らないが、またかつてと同じような事を実行しようと言うのなら、多少痛い目は見てもらわないと。


「あーでも……」

「どしたどした?」


 悩んだ素振りを見せると、前のめりで促してくる芦木。

 何を期待しているのかは知らないが、俺をそこらの常識と節度あるパンピーと一緒にしてもらっちゃあ困る。


「実は今月、お小遣いほとんど使っちゃいましてぇ……」


 にやりと告げる。


「バイトもしてないから貯金もないし、どうしよっかなぁ」


 これ見よがしに芦木の方へと視線を送る。

 金が無いと言いあからさまに集る気満々のクズ後輩ムーブ、発動ッ!

 もしそれで金を出してくると言い出したなら、ありがたぁくそれにあやからせてもらいますとも。逆に無理なら無理で別に俺はいいしな。

 まーでも、流石にこんな……。


「え、じゃあ全然あーし出す出す!」


 渋る様子を一切見せず、芦木があっけらかんと言い放つ。


 ほーん、出してくれるんだ。

 正直露骨過ぎてこの話は無かったことになるかなあと思っていたのだが、それなら仕方がない。

 もうちょっと、踏み込んじゃおっかなぁ?


「ほーん、マジですか。え、やったな渡良瀬。先輩出してくれるってさ」

「???」


 突然俺に話を振られ、渡良瀬が大量の疑問符を頭の上に浮かべる。


「えと、ちょっと待って、どういうこと?」


 流石に芦木も俺の行動を理解しかねたのか、困惑気味に尋ねてきた。


「え、てっきりここのみんなで行くのかと思ったんですが、違うんですか?」


 鈍感難聴系主人公もびっくりなくらいすっとぼけた発言に我ながら苦笑いが漏れそうになる。

 ポニテ先輩がえ、私も? みたいな顔してるが、まぁそりゃそうなりますよね。


 さぁどうだあ? さりげなく負担額を二倍に増やした上に俺と二人きりという択を潰されたことになるが、芦木は承諾するのか。


「あー、なるほど……なるほどね? まーでもそっか、この小さいのもさっき……」


 ぶつぶつと何か呟く芦木だったが、やがて大きく頷く。


「いいよ! あーしにまかせな~!」


 芦木が腕を組みさもサバサバした性格ですよと言わんばかりに告げる。

 なるほど? よく分かった。こりゃあ相当本気で俺の事を落としにかかってるな。

 ま、幾ら努力したって天地がひっくり返ろうとも俺がお前の手に落ちることは無いんだけどなぁ!


「え、やったあ!」


 と、喜ぶの流石に俺ではなく、ポニテ先輩だ。


「いや、あんたは自腹だから」

「なんだよ~まぁ、いいけど」


 ポニテ先輩ががっくりと肩を落とす。あ、いいんだ。

 正直ちゃんと話が進むとは思ってなかったので予想外な部分はあるのだが、こうなった以上しっかりとお灸を据えさせてもらう。


 このままおごらせるだけおごらせて一方的に縁を切るのも良し、あるいは相手がさらに踏み込んで来ようものなら思いっきり裏切ってやるのも良しだ。


「じゃあさ、とりあえずインスタとラインのともだち交換ね~」


 ふと芦木がそんな事を提案してくる。

 ふむ。正直いらなすぎるのだが、まぁ頃合いを見てブロックすりゃいいか。


「あ、じゃあうちも~」


 陽キャのノリというべきか、ポニテ先輩まで便乗してきたので、いらない連絡先が二つ増えてしまった。


 まぁポニテ先輩についてはどんな人間か知らないが、特に恨みは無いからな。割と美人だし、別に下心があるというわけではないが、ブロックまではしなくていいかもしれない。


「ここらへん度いい感じに食べれるのはハンバーガーとかー? マクドかーモスかー」


 ポニテ先輩が言う。

 特にどこに行きたいとかは無かったが、ハンバーガーか。


「ならモスとかですかね」


 しれっと希望を伝える。

 ちゃんと近くにマクドもあるがモスだ。そっちのほうが美味しいし高い。


「モスかあ……まぁ、いいか、行こ行こ」


 やはりコスパの事は気になったか、やや乗り気じゃなさそうだが、一応はモスを奢ってくれるようだ。

 くっく、人の金で食うハンバーガーはきっと美味いに違いない。

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