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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第11章『終焉の茶会、忘却と蛮族と通過儀礼』

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04.護衛と教師と、時々魔導具

静寂が戻った夜明け前。


ギルドの前には、月だけがぽつんと立っていた。


三人──シキ、樹、リエは、騒ぎが収まった途端に、まるで風のように姿を消した。


何があったのか、どうして現れたのか、そしてなぜあんなにも当然のように去っていったのか。


寒さも忘れて、月はしばらく呆然としていた。


「…………何だったんでしょうか、あの人たち……?」


ぽつりと漏れた声は、夜明け前の冷たい空に溶けていく。


「というか、街を滅ぼしたとか言ってませんでしたか……?」


さすがに冗談であってほしいと願いつつ、月は深くため息をついて扉を開けた。


***


翌朝。

エルミナ学園、職員室。


普段より少しだけ早い時間にもかかわらず、教員たちの間には奇妙なざわめきが漂っていた。


何かを言いかけては口を閉ざし、視線を交わし、誰かが何かを待っているような……そんな空気。


その扉を、月が勢いよく開けた。


「おっはよーございまーす!」


元気いっぱいの声が室内に響く。

だが──


「………………」


誰一人、返事をしなかった。

全員が黙って、月の背後を見つめている。


「えっ……なに!? なんかついてます!?」


慌てて振り返る月の目に入ったのは──


「よっ、月」


すぐ背後で立っていた樹だった。

いつの間にか一緒に職員室に入ってきていたらしい。


そのまま樹は当然のように空いていた椅子に腰を下ろし、脚を組んだ。


「え!? なぜ!?!?!?!?!?」


月の声が跳ね上がる。


「昨日帰ったんじゃ!? 帰ったでしょ!?!?」


「まあな。

けどシキから命令があってな。お前のそばにいて護衛しろって。……まあ、そうなるよな」


樹はあくまで当然といった顔で返す。


「つまり……?」


「教師してやるよ。

ただし、シキの護衛が本業だからな。シキがどっか行くときは、そっち優先する」


「わかりました!!」


月は即答だった。


「担当科目は!!」


「理系全般はいけるな。魔術系もいける。

好きなのは魔導具の開発だけどな」


「っしゃあああああああ!!」


月は拳を握り締めて叫んだ。


「魔導具の専門家手に入れたぜええええ!!」


その瞬間、職員室の空気がぐらりと揺れる。


椅子を引く音、書類を落とす音、小さく息を呑む声。

教員たちがざわつき始めた。


「キャラぶれしてんぞ〜、月」


樹が笑いながら呆れた声を投げる。


「だって……!

こっちはずっと足りてないんですから……!

もう! ほんとにありがとうございます!!」


月はぺこりと深々と頭を下げた。

その様子に、樹は苦笑しつつ肩をすくめる。


「……ま、よろしくな。教師仲間さんよ」


朝の陽が差し込む職員室で、月と樹の新しい日常が、あっさりと始まった。

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