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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第10章『終焉の茶会、眠れる姫君と紅き守護者』

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07.包囲網、逃げ場なし

「みんなーっ!! 月が目を覚ましたにゃーっ!!」


朝の冷たい空気を引き裂くように、ミミの声が学園内に響き渡った。

尻尾をピンと立てたまま、彼女は一心不乱に保健室から駆け出していく。


「ほんとなのか?」「目覚めたって?」「ようやく……」


教員たちがそれぞれの教室や準備室から顔を出し、次々とミミのあとを追い始める。


一方そのころ――保健室の前に立ち尽くしていた橘は、扉の前でふと立ち止まっていた。

だが、手は伸びない。少しの間だけ静かに考え、そして呟く。


「……皆が来てからにしましょう。私一人で怒っても、意味がありませんからね」


数分も経たぬうちに、保健室の扉が乱暴に開かれる。


「月ちゃん!!」


「ようやく起きたのかのう……」


「君はどこまで我々を心配させるのかね、まったく!」


シルフ、セレナ、グレン、カグラ、ラットン、ヒサメ、柊、神崎、鬼影、夜行――

エルミナ学園の教員たちが、勢揃いで押し寄せた。


保健室の布団の中、目をうっすらと開いた月は、戸口に立ち尽くす彼らの姿を見て、そっと口を開いた。


「…………おはようございます………」


瞬間、室内の空気が凍りついたかのように、全員が静止する。


(………………これは…………マズい……)


空気を読んだ月が、ゆっくりと上体を起こしたかと思えば――


「……逃げねば……!」


布団から音もなく抜け出すと、そろりそろりと窓際へと向かう。


が。


「どこに逃げようとしてるのかな? 月ちゃん?」


ぴたり、と背後から声がかかる。振り向けば、そこには満面の笑みの鬼影。

その笑顔は、冷や汗が出るほど穏やかで――怖い。


「えっと……散歩とか……?」


「ダメに決まってるでしょ♪」


そのまま鬼影にがっちりとホールドされ、月は身動きが取れなくなる。


「っ、く……こうなったら!」


「おっと、姫君……いや、月殿。今、起きられたら……吾輩がベッドから転げ落ちて大怪我してしまう」


ラットンがどこからか現れ、月の膝の上に座り込んで動きを封じる。


「うぅぅ……これは……詰み……!」


「ほっほっほっ………。覚悟することじゃの、月さんや」


神崎が笑いながら目元を細める。


学園の空に、静かで騒がしい朝が訪れていた。

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