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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第10章『終焉の茶会、眠れる姫君と紅き守護者』

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05.目覚めを待つ者たち

保健室に静けさが戻っていた。

空に舞い上がった赤き龍の残光が、まだ窓の外に微かに残っている。


その場にいた者たちは、しばしその余韻に囚われていた。


クロマは小さく息をつき、一歩だけ後ろに下がると、そっと月の寝顔を見つめた。


「月の状態がわかって、よかったんだよ。あとは、皆よろしくなんだよ」


どこか安心したような表情を浮かべ、けれど目には僅かな寂しさがにじんでいる。


その隣で、カノンが小さくつぶやく。


「姉さん……」


目の前の姉を前にして、それでも何もできないことがもどかしいように、拳を握り締める。


帝もまた、伏し目がちに呟いた。


「お姉ちゃん……」


その言葉には、心細さと悔しさが滲んでいた。


そんな三人の背後から、優しい声がかけられる。


「大丈夫。我輩たちが交代で面倒を見る。君たちは、安心して帰りなさい」


ラットンが柔らかく微笑みながら、語りかける。

続いて、ミミが両手を腰に当てて言う。


「にゃにゃっ、あたしに任せときなってば!」


橘は静かに眼鏡を押し上げながら一歩前へ。


「……ここは我々にお任せを。君たちが無理をしても、月先生は喜びません」


その言葉に、クロマはうなずいた。


「うん……。お願いなんだよ」


カノンと帝も続けて無言でうなずき、三人は扉の方へと向かっていく。

閉じた扉の先に、彼らの足音が小さく遠ざかっていった。


保健室には、教師たちだけが残された。


橘が、深いため息をついた。


「なぜ、相談してくれなかったのか……。我々が何のためにここにいるのか、月先生はわかっているはずなのに……」


その言葉に、セレナが眉をひそめながら口を開く。


「一人で抱え込むにも、ほどがあります。……本当に、困った方ですね」


その言葉に、グレンがゆっくりと小さくうなずく。

その無言の肯定が、むしろ重みを持って響いた。


そして――ラットンが、目を閉じて静かに言う。


「目覚めたら……説教だな」


保健室の空気が、少しだけ引き締まった。


それは、月を想う者たちが交わした無言の誓いのようだった。

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