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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第9章『終焉の茶会、静寂を焦がす者』

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07.名を呟いた者

職員室に突如走った悲鳴に、室内の空気が凍りついた。


「えっ……!? 月先生が……!?」


資料の山を抱えていた教員が声をあげた瞬間、周囲の者たちが次々と駆け寄る。

倒れたのは、間違いなく月だった。

机に手をついたまま、ゆっくりと崩れ落ちるように倒れた彼女は、まるで壊れ物のように静かだった。


「誰か……保健室に運ぶぞ!」


柊の声に、ミミとグレンがすぐに動いた。

熊のような巨体のグレンが、その大きな腕でそっと月の体を抱え上げる。

ミミが布を掛け、保健室へと連れて行く。


――職員室に残された者たちの間には、言いようのない不安が立ち込めていた。



---


保健室。白い寝台の上に、月は静かに横たわっている。


その顔に苦悶の表情はなかった。

けれど、目は閉じたまま、呼吸も浅く、まるで時間すら止まったような静寂が漂っていた。


……と、そのとき。


「……セレス……さん……」


わずかに揺れた唇から、掠れた声が漏れた。


それは、まるで風の音に紛れて消え入りそうな一言だった。


が、それでもはっきりと──誰の耳にも届いてしまった。


「……今、なんて言った……?」


「セレス……? 誰……?」


室内の教員たちは顔を見合わせ、思い出す限りの名前を脳内で探す。

だが、“セレス”という人物に心当たりがある者は、誰ひとりとしていなかった。


「聞いたことない名前だな……」


「……家族か何か……?」


誰かがそう呟いた。


その言葉に、夜行が軽く頷く。


「弟たちになら、何か知っているかもしれんな」


その一言で、数人の教員がすぐに動いた。


「カノンくんと帝くんを呼んできます!」


そう言い残し、教師の一人が職員室を飛び出していく。


──月の“呟き”がもたらした波紋は、静かに、けれど確実に広がりはじめていた。

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