表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第9章『終焉の茶会、静寂を焦がす者』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/161

04.再びの指令

夜の帳が静かに降り、月の自宅には凛とした空気が漂っていた。

平屋の一室。窓から差し込む月明かりが、机の上を照らしている。


その中央に、ひとつの黒い封筒が置かれていた。

まるで最初からそこにあったかのように、違和感なく。


月は淡々とその封筒を手に取り、封を切る。

中には、またしても短く簡素な文言が一文。


──「今度は、ここを浄化しろ」


それだけ。

地図も、位置情報も、名前すら記されていない。


しかし月は、ため息ひとつつくこともなく、手紙をそっと封筒に戻す。

その瞳には、微かな光も揺らぎもなかった。


「…………」


月は静かに立ち上がり、押し入れの奥から旅装束を取り出す。

厚手のローブ、小さな袋に最低限の道具と携帯食。

全てが流れるような所作で整えられていく。


準備が整った頃には、空はまだ藍に染まったままだった。

誰にも何も告げず、戸口に立つと、月は一度だけ振り返る。


「…………行ってきます」


誰に向けたものでもない、空気のような言葉だった。


そのまま静かに扉が閉まり、闇の中へと彼女の姿は消えていった。


──それは、夜明けのすぐ手前の出来事だった。


◇ ◇ ◇


月が旅立ったその後、遠く離れた場所。


暗がりに包まれた、何も見えない空間。

そこに佇む存在が、手元の黒い封筒をひらりと放り投げる。


「うーん……今度の場所は少しばかり厳しいか? でも……まあ、何とかするだろう。」


どこか他人事のような口調でつぶやくと、その人物は隣の皿に手を伸ばした。


載っていたのは、香ばしく焼き上げられた小さな焼き菓子。

ひとつ口に含んだ瞬間、目を細めて呟く。


「それよりも………この菓子うまいな!」


その言葉に返事はない。


ただ、闇の中に笑みのようなものが滲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ