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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第8章『終焉の茶会、艶鬼と月と招かれざる使者』

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09.底知れぬその魔力に

鬼影が入居を決めたのは、「ツキグラ」の四階の一室だった。


 


「……なにこれ、快適……え? うそでしょ……?」


 


部屋に足を踏み入れるなり、鬼影は素直に驚きの声を漏らす。


 


「まあ、そうなるにゃ」


 


ミミがあっさりと答え、グレンも黙って頷く。

教師陣は、もはや驚きに慣れてきていた。


 


 


その後、一同が建物の外でひと息ついていると、月が笑顔で説明を始める。


 


「このマンション、『ツキグラ』っていいます〜」


 


「『月のグラウンド/グラビティ/暮らし』の略っぽい響きで!」


 


「略“っぽい”ってなんだよ……」


 


柊がやや呆れた声を出した。


 


「ふふっ、でも語感がいいでしょう〜?」


 


満面の笑みでそう返す月に、教師たちは黙って首をかしげるしかなかった。


 


 


やがて、セレナがぽつりと疑問を口にした。


 


「でも……これ、全部月さんの魔術でしょ? 魔力、どれくらい使ったの?」


 


「そうにゃそうにゃ、倒れたりしてないにゃ?」


 


ミミが身を乗り出す。


 


「……倒れたこと、ありましたよね……」


 


橘が小声で言いかけて、慌てて言葉を切る。


 


月が首を傾げる。


 


「??? え? なんか言いました?」


 


「い、いえいえいえいえ!!!」


 


教師陣が一斉に否定の声を上げた。


 


 


「……月、ちょっと気になったんだけど」


 


ヒサメが前髪を払いながら、興味深そうに尋ねた。


 


「一回、魔力量を測ってみない?」


 


「え〜? うーん……まあ、いいですけど」


 


月が近くの機材に手をかざす。

魔力測定装置が光り出し、数秒後――


 


《測定不能》


 


と表示された。


 


 


「え……壊れてるんじゃ……?」


 


セレナが眉をひそめる。


 


「もう機械壊れたにゃ?」


 


ミミも目をまるくする。


 


「いや、これは……」


 


ラットンが静かに、紳士的な声音で言った。


 


「魔力量が桁外れで、機器が上限を超えたということでしょうな。つまり……底なし、ですぞ」


 


 


「聖教会にいたときから、ずっとこの表示なんですよ〜」


 


月はあっけらかんと笑って続ける。


 


「魔力切れも経験ないですし〜」


 


 


「………………」


 


教師陣は無言になった。


 


「……もういっそ、彼女の魔力量を“世界”単位で測るしか……」


 


カグラがため息混じりに言うと、


 


「…………無理………」


 


グレンがぽつりと重い声を漏らした。

その沈黙は、ただ静かに広がっていくばかりだった。

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