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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第8章『終焉の茶会、艶鬼と月と招かれざる使者』

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06.聖女と艶鬼と、年齢の壁

夕方、学園に設けられた仮設の職員室。

時計の針は、まもなく一日の終わりを告げる午後五時を指そうとしていた。


 


月は机からすっと立ち上がると、柔らかな笑みを浮かべて声を上げる。


 


「それでは私、ギルドに行ってきますね〜。鬼影さんもご一緒に〜」


 


軽やかにそう言いながら、鬼影に視線を送る。


 


「ほいほ〜い。じゃあ、案内よろしくね〜聖女ちゃん♪」


 


その瞬間、部屋の空気が変わった。

夜行、カグラ、ラットンの三人がほぼ同時に立ち上がり、厳しい視線を月に向ける。


 


「……待て、月。一人で鬼影と行くつもりか?」


夜行の低い声が響く。


 


「ダメよ。あんな節操なしと二人きりにするなんて、正気の沙汰じゃないわ」


カグラの眉間には深い皺が刻まれる。


 


「吾輩も同行しよう。何かあったら、噛みつく覚悟はできているぞ!」


ラットンはいつになく真剣な口調で言い放った。


 


しかし、月はどこまでも穏やかな笑みを崩さない。


 


「んー……。でも大丈夫ですよ。鬼影さんはそこまで脅威じゃないですから〜」


 


「うわ〜……ひどいな〜聖女ちゃん……。俺、君の身体の秘密を全部暴くくらい造作もないよ?」


冗談めかして鬼影が言う。


 


「………んー……でも、鬼影さんってそういうこと、本当にはしないですよね?」


 


にこにことしたまま、言い切る月。


 


鬼影はしばし沈黙し、ため息をついた。


 


「…………………はぁ……まあいいや。泊まる場所、教えてよ」


 


「はーい。それじゃあ案内しますね〜」


 


そのまま、月と鬼影は並んで職員室を出て行った。


 


──静寂。


 


残された教師たちは、ぽかんと口を開けたまま、誰一人として動けずにいた。


 


「…………」


 


その場を打ち破ったのは、橘だった。


 


「……なんか、月さんって……危機管理能力、ないんですか?」


 


「危機管理って授業に入れるにゃ?」


ミミがぽそりと呟く。


 


「必要……かもな……」


グレンも低く頷いた。


 


そんな中、神崎が湯呑を手に、のんびりとした調子で口を開く。


 


「まあ、彼女もまだ16歳の少女じゃしの……」


 


「……えっ?」


 


教師陣、全員が神崎に視線を向けた。


 


「えっ!? 16歳!?」


 


「うむ。言ってなかったかの?……以前、飴ちゃんを渡したときに“子供扱いしないでください、16歳ですから”と言われたんじゃ」


 


場が凍る。

時間が止まったかのように、誰もが動きを止めていた。


 


「えっ……ちょ、待って……じゃあ今、あの艶鬼と二人きりって……」


橘が恐る恐る言葉を紡ぐ。


 


「それってもう……色んな意味でアウトじゃない……?」


カグラが顔を引きつらせる。


 


「通報案件……」


柊が眉をひそめた。


 


「保護対象だ、あれは!」


ラットンが叫ぶ。


 


夜行は溜め息交じりに、ぽつりと呟く。


 


「……気づくのが遅い」


 


「まあまあ、異世界じゃしのう……この世界にはそういう法律は……」


 


「黙れジジイ!!」


 


神崎の言葉を最後に、教師陣全員の怒号が重なるように響き渡った。

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