表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第8章『終焉の茶会、艶鬼と月と招かれざる使者』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/162

05.艶鬼、就職活動

エルミナ学園の仮設会議室には、緊張というよりは妙な空気が流れていた。


 


中央に設けられた机の正面には、月が真剣な顔で腰かけている。その背後には、控えとして夜行とカグラが並び、緊張というよりは警戒に近い視線を向けていた。


 


「それでは、面接を始めましょうか」


 


月の柔らかな声に、面接を受ける側──赤髪赤眼の青年、鬼影がひらりと手を上げて応じる。


 


「よろしくお願いしまーす。いやあ〜、ちゃんとした面接なんて久しぶりだな〜。緊張しちゃうな〜」


 


彼はあくまで軽い口調で、椅子に深く腰かける。対するラットンは、鬼影の隣でぴたりと構えながら、いつでも飛びかかれるような姿勢で睨みを利かせていた。


 


「我輩は非常時には噛みつくからな。覚悟しておけよ」


 


「こわっ! でもそういうの嫌いじゃないな〜。お手柔らかに頼むよ、ラットンくん」


 


「くん付けするな!!」


 


カグラが眉をひそめる中、月は笑顔を崩さず、所定の用紙に目を落とす。


 


「では、志望動機をお聞かせください」


 


鬼影は椅子の背にもたれたまま、にやりと笑った。


 


「なんか面白そうだし〜。あと、聖女ちゃんが可愛かったから〜」


 


「ふざけてるわね……」


 


カグラが低く呟き、すかさず夜行が睨みを効かせる。


 


「真面目にやれ」


 


「はいはい。じゃあ真面目モードいきますよ〜。こういう学校って滅多にないでしょ? 色んな種族が一緒に学べるなんて、なかなか刺激的だと思ったんだよね。自分でも何か力になれたらって、そう思ったんだ」


 


一瞬だけ、会議室に静けさが戻る。


 


月は軽く頷きながら、質問を続ける。


 


「ありがとうございます。では、これまでの経歴について教えてください」


 


「まあ、色々なところで講演とか教育補佐とかはしてきたよ〜。艶鬼だけどさ、子どもにはちゃんと優しいし、礼儀も教えるよ? エッチな話とかは大人限定って、そこはきっちり分けてるから」


 


「子どもへの対応は重要視しています。授業中の不適切な言動は厳禁ですので」


 


「もちろん! そこはTPOってやつ、ちゃんと弁えてるからさ。心配ご無用!」


 


カグラはじと目で睨み続けていたが、鬼影はまるで気にしていない様子だった。


 


やがて、面接の最終段階に入る。


 


月は一拍置いてから口を開いた。


 


「では……すべてを踏まえた結果、試用期間として採用しましょう。いつから来られますか?」


 


「今からでもいいよ〜」


 


「今からと言っても、何の授業をお願いするかはまだ決まっておらず……」


 


「まあ、それは後でいいんだけど……ひとつ、いいかな?」


 


「なんですか?」


 


「俺、こっちに住むとこないんだよね。どっかいいとこある? あ、なんだったら聖女ちゃんと同じベッドでも——」


 


「ラットン、やれ」


 


「任された!!」


 


がぶっ。


 


「おっとぉ〜!? こわいこわい! 冗談冗談〜っ!」


 


ラットンが鬼影の腕に飛びつく中、月は微妙な笑顔で応じた。


 


「………………………………しばらくはギルドの宿泊スペースを貸し出しますね」


 


「助かるよ〜、さっすが聖女ちゃん!」


 


ようやくラットンが牙を引くと、鬼影は赤くなった腕をさすりながらへらりと笑った。


 


そして──


 


「でも、そのうち仮住まいじゃ不便になりますからね……建てましょう、鬼影さんの家。DIYで!」


 


その一言に、室内の空気が凍った。


 


教師陣「………………え?」


 


「材料はこの前、裏山の魔物さんから貰ったのが余ってますし♪」


 


教師陣「………嫌な予感がする……」


 


鬼影は楽しそうに笑っていたが、教師たちは誰一人笑っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ