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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第7章『終焉の茶会、笑顔の裏の断罪記録』

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08.それぞれの想い

職員室の空気は、深い沈黙に包まれていた。


 


帝は椅子に腰掛けたまま、視線を伏せ、ゆっくりと語り続ける。


 


「……これがすべてというわけではないのだが……」


 


言葉を選ぶように、慎重に、そして静かに口を開く。


 


「お姉ちゃんには……記憶がないのだ。

神時代のことも、“最悪の魔女”として断罪されたことも……

はっきりと覚えているわけじゃない。

けれど、ときどき……断片的に、思い出してしまう時があるのだ。

そのたびに、混乱して……苦しそうで……」


 


語る声が、微かに震えた。


 


「……カノンは、今では弟だけれど。

前世ではまったく関係のない……ただの他人だったのだ。

……けど、カノンがいてくれたから、オレは……」


 


そこまで言って、ふっと口を閉ざす。


 


「……カノンが…調子に乗るとダメなのだ…」


 


自嘲気味に呟くと、椅子から立ち上がった。


 


「オレは……お姉ちゃんと、カノンのところに行ってくるのだ」


 


そう言い残し、帝は職員室を後にした。


 


──静寂。


 


その余韻のなか、教師陣は誰も口を開かない。


 


ようやく、ぽつりとセレナが呟いた。


 


「神の因子……間違いないですわね。あの技は……」


 


それに応じるように、シルフが腕を組んでつぶやく。


 


「風が言ってたよ。あれは、“神の御業”だって」


 


夜行は目を細め、静かに吐息を漏らす。


 


「初めて会った時……“記憶がない”と言っていた……

そうか、そういうことだったか……」


 


ミミはぽかんとした顔で、首をかしげる。


 


「月ちゃんが……神様って、ほんとにゃの……?」


 


誰もが言葉を失いながらも、脳裏に浮かぶのは──

闘技場で倒れた、あの少女の姿。


 


小さな身体で、大きすぎる力を抱えながら。

誰にも助けを求めず、ただ静かに、あたりまえのように。


 


「……あの子の命を削ってまで、なにを守ろうとしてるんだ……」


 


誰ともなく、絞り出すような声が、部屋の空気に落ちた。


 


教師たちは皆、その問いの答えを探せぬまま、ただ黙って──

少女の笑顔を、思い浮かべていた。

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