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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第7章『終焉の茶会、笑顔の裏の断罪記録』

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02.担任決定、そして闘技場へ

「では、続きまして〜」


 


入学式と始業式の余韻が残る中、壇上に立ったままの月が、柔らかく笑みを浮かべて手を挙げる。


 


「各クラスの担任を発表しまーす」


 


その瞬間、教員席にざわめきが走った。


 


「なあ……オレら、担任って……どうなってんの?」


 


柊が隣に座る橘に小声で尋ねる。


 


「私も……聞いていません」


 


橘は困惑を隠さず、メガネの奥で眉をひそめる。


 


他の教師たちも、どこか居心地悪そうに視線を交わし合っていた。

――誰一人、聞かされていない。


 


「まずは〜、初等部2年A組の担任からですね〜」


 


月の声が軽やかに響く。


 


「2年A組は、橘 葵先生で〜す!」


 


壇上から指名された橘が、反射的に背筋を伸ばす。


 


その名前に反応したのは、カノン・帝・ゴローの三人だった。


 


「……姉さん、ありがと」


 


小さな声でカノンが呟く。


 


「ふーん。お姉ちゃんは、時々ああしてカノンを甘やかせるのだ……」


 


帝もどこか納得したようにうなずく。


 


「次に〜、初等部1年A組の担任は〜、柊 湊先生!」


 


「……あー、ね。なんか納得」


 


柊は頭をかくようにして、軽く肩をすくめた。


 


「1年B組は〜、ヒサメ先生で〜す」


 


「…………うん。もう何も驚くまい」


 


ヒサメは落ち着いた様子で受け止める。


 


そして最後に、中等部の発表。


 


「中等部1年A組は〜、セレナ先生〜」


 


「まぁ……うふふふ」


 


セレナは浮かぶように壇上を見上げ、いつものように微笑んだ。


 


中等部生たちは、その名に頷くだけで、特に反発の声は上がらなかった。

彼らは知っているのだ――月の、昨年度の“蛮族”ぶりを。


 


だが、違ったのは初等部の新一年生だった。


 


「えっ、人間が先生!?」


「なんで魔力もないのに!」


「教わる意味がないじゃん!!」


「見た目で判断してはいけないとは言うが……これはない!」


 


1年A組の生徒たちが、ざわざわと騒ぎ出す。


 


1年B組の生徒たちは口に出さないものの、その表情には明らかな不満が滲んでいた。


 


その空気に、月は目を細める。


 


「……なるほど」


 


静かに呟いたその声に、中等部生たちがざっと顔色を変えた。


 


「や、やめとけ……」


「ほんと、やめた方がいいって!」


 


「お姉ちゃんを怒らせると、本当に死ぬのだ……」


 


帝が真顔でつぶやく。


 


「合掌……」


 


ゴローがぼそりと、誰にも聞こえないほどの声で呟いた。


 


壇上の月は、変わらぬ笑みを浮かべたまま、ゆっくりと口を開く。


 


「……わかりました。そこまで言うなら、場所を変えましょう」


 


その場に、空気が凍るような静寂が訪れる。


 


「体育館横の“闘技場”に移動します。不満のある方々、まとめてお相手しますね〜」


 


笑顔のまま、月は軽やかに宣告した。


 


1年A組の生徒たちは、自分たちの発言が招いた流れに気づき始める。


 


1年B組の生徒たちも、無言のまま視線をそらすが、月の目からは逃れられない。


 


「……オレ、あいつらの担任になるんだよな」


 


柊がぼそりと呟く。


 


「初日から死傷者が出なければ良いのですが……」


 


橘はメガネを持ち上げながら、現実逃避するように目を細めた。


 


「……また始まった……」


 


カノンはため息交じりに顔を伏せる。


 


「お姉ちゃんのことを知らないって、本当に恐ろしいのだ……」


 


帝の声は、どこか憐れみに満ちていた。


 


こうして、新学期の始まりは、またしても波乱に包まれていくのだった。

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