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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第6章『終焉の茶会、常識破りの学級日誌』

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09.来年度もよろしくお願いします

冬の終わりが近づく頃。

放課後の職員室には、暖かなストーブの音と、紙をめくる音だけが静かに響いていた。



「……これで、今年度の書類は全部確認できたな」



柊が大きく伸びをして椅子にもたれかかる。



「本当に……一年、あっという間でしたね」



橘も眼鏡を外し、こめかみを押さえながら小さく息を吐いた。


積み上がった資料の山の向こうでは、神崎が頷く。



「いやあ……濃ゆい一年じゃった。学園の立ち上げから、よくぞここまで……」



しみじみとした空気が職員室を包む。

教員たちは、それぞれに一年の出来事を思い返していた。


入学式。

最初の授業。

月のDIY。

道徳授業。

神崎の若返り。


騒がしくて、めちゃくちゃで、でも……

どこか温かくて、懐かしい記憶たち。


その静寂を破って、まるで当然のように扉が開いた。



「こんにちは〜。おつかれさまで〜す♪」



入ってきたのは、満面の笑顔を浮かべた月だった。

教員たちは、嫌な予感に全身を強ばらせる。



「えっとですね、来年度の入学希望者、六十人ですって!」


「……はああああああ!?」



一斉に跳ね上がる教員たちの声が、冬空を震わせる。



「ほら、今年度は様子見していた親御さんたちが、『大丈夫そう』って思ったみたいで。入学書類がどっさり届いたんですよ〜」


「大丈夫そうって……何を見て判断したんだ!?」 「むしろ今年、何を見てたんだ!?」



月は首を傾げながらニコニコしている。



「で、ですね? 現在在籍中の生徒たちのうち、十人ほどは基礎知識的に問題なさそうなので――」


「――まさか」 「まさか――」


「中等部へ進級させます! 魔法基礎の授業、ついに開始です!!」


「ぎゃあああああああ!!」

「とうとう来たあああああああ!!」


「皆さん、魔法の授業なくて手が空いてましたもんね? よかったです〜」


「誰が暇してたって!?」



追い打ちをかけるように、月がさらなる報告を放り込んだ。



「新一年生が六十人なので、三十人ずつ二クラスに分けますね。今の子たちは、三十人でそのまま二年生に進級。中等部の十人は一クラスで運用です!」


「つまり……担任は……」 「四名体制になりますね〜!」


「はあああああああああああああ!?!?!?」



もはや職員室は阿鼻叫喚の地と化していた。



「人手が! 足りませんってば!!」 「無理です! 魔法の授業始まったらもう、回らない!!」


「だいじょうぶですって! 備品も教材も準備済みですから!」


「そういう話じゃない!!」



現実に引き戻されて、机に突っ伏す柊。

資料を抱えて頭を抱える橘。

その横で、神崎がポンと手を打つ。



「……うむ。退職希望じゃ。」


「俺も希望です!」 「私も希望です!!」



一斉に挙手があがる。


しかし、それを見た月は、さらりとこう言った。



「却下で〜す♪」



ストーブの火が、無慈悲に赤く燃えていた。

次章

第7章『終焉の茶会、笑顔の裏の断罪記録』

は、7月26日 朝8時より投稿を開始します。



どうぞ、お楽しみに。

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