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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事【改稿版】  作者: ポン吉
第2章『終焉の茶会、再建始動』
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01.何もするなと言ったのに

焦土と化した土地に、静かな朝日が差し込んでいた。


瓦礫と灰に包まれた地面の中心に、小さな二つの人影があった。一人は正座し、背筋をぴんと伸ばしながら無言を貫いている。もう一人は隣で俯き、どこか所在なさげに指先で石をつついていた。



「……お前ら、ほんとに何もするなって言ったのに」



誰の声でもない。空気そのものが呆れているような、そんな沈黙がそこにあった。


* * *


数時間前。



「じゃ、行ってくるからな。絶ッ対に、ギルドをいじるなよ!」



万里の怒声が響く中、マスター――もとい、クロウは「うんうん」と軽く頷きながら手を振っていた。


その隣では、クロマが「今回は何もしないよぉ」と笑顔で誓っていた。 その笑顔が、これほど信用されていなかったことを、彼らはまだ知らなかった。


* * *


そして今。



「姉さんの不運、到着前に発動した……?」



焦土を見つめながら、カノンがぽつりと呟いた。

隣で同じく立ち尽くす帝が、真顔で口を開く。



「……見事な崩壊っぷりなのだ」



二人の足元では、月が小さく息を吐いた。漂う灰の匂いに、喉の奥が微かに痛んだ。


あの聖教会を抜け出し、ようやく辿り着いた場所。



「ギルド……だよね、これ」



カノンが眉をひそめる。



「うん、看板の“終”の部分が、かろうじて残ってるから。たぶんギルド」



帝が真剣にうなずく。



「判断基準がそれしかないのだ……」



そして二人は同時に、正座する二人の姿へと視線を向けた。


その姿はまるで、災厄の中心に鎮座する供物のようだった。

月は言葉を発さなかった。ただ、無言のまま一歩、また一歩近づいていく。


そして、正座する二人の目の前で立ち止まった。



「……はじめまして。あなたが、ここの責任者?」



その問いに、マスターが満面の笑みで顔を上げる。



「そうだよ! ギルドのマスター、マスタだよっ」

「僕はクロマなんだよ」



帝とカノンが、同時に月を見た。



「姉さん……今、笑ってないよね……?」


「うん。怒ってる。無言って、一番怖いやつ」



帝がそっと囁いた。



「風が止まったのだ……これは静かな怒りなのだ……」



月は何も言わず、ただギルドの焼け跡をぐるりと見回し、ふたたび静かに背を向けた。



「……寝る場所、探さなきゃ」



その声には、感情の揺れがなかった。けれど、それが一番怖いと、カノンと帝は知っていた。


マスターとクロマが再び正座し直す音が、カチン、と静かに鳴った。

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