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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第6章『終焉の茶会、常識破りの学級日誌』

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02.ようこそ、白亜の学舎へ

春の空気がまだ少し冷たい朝。

だが、集まった子どもたちの表情はどこかそわそわと浮き立っていた。


――エルミナ学園、開校初日。


真新しい白亜の校舎。だが、その白さは年月を経たものではない。

ついこのあいだ、ようやく完成したばかりの“できたてほやほや”である。


それでも、集まった子どもたちの目には、十分に立派で、眩しく見えた。

 


「はーい、それでは、こちらの講堂へどうぞ〜」

 


先導するのは、いつも通りのゆるさで微笑む月。

私服姿の子どもたちは、よくわからないまま、とりあえず列を作って入っていく。

 


「ちょ、カノン、もうちょっとゆっくり歩けって! オレ、ついていくのがやっとなのだ!」

 


「だめ! 遅れたら変な席しか残ってないんだから!」

 


帝の抗議にも耳を貸さず、カノンは手をぐいぐい引っ張る。

人見知りのくせに、こういうときだけやたらと行動的になるのがカノンの特徴だった。

 


そんな二人のすぐ後ろ、まだ何が始まるのか分かっていないゴローが、ぽけっとついてきていた。

 


講堂に整列した子どもたちの前で、月が明るく声を張る。

 


「みなさん、本日はご入学おめでとうございます! エルミナ学園、入学式を始めます!」

 


拍手もまばらに起きる中、月が脇へ下がる。

代わって中央に進み出たのは、白髪の老人――神崎泰蔵、学園長である。

 


「えー、我が学園はですねぇ……この地に集うすべての子どもたちに、学びと希望を――」

 


開始から三十秒で、子どもたちの集中力は切れた。

五分後、誰も神崎の言葉を聞いていない。

十分後、カノンが眠りかけていた。

 


「はーい。長いんでここまでにしましょうね〜」

 


月の一声で、神崎は講堂の隅へゆるゆると連行される。


その間、講堂のあちこちで、ぽかんと口を開けた子、目を擦る子、隣の子とひそひそ話す子たちが目立ち始めていた。

空気にざわめきが戻り、緊張よりも「疲労感」が勝り始めていたところだった。

 


月はそのまま壇上に戻り、さらりと宣言する。

 


「では、これで入学式を終わります! 担任の先生の案内で、それぞれ教室へ移動してください〜」

 


「おい、もう終わりなのか……?」

 


帝が思わずつぶやく横で、カノンは元気よく手を上げた。



「ボクたち、1-Aだからね!」



案内に従い、生徒たちはそれぞれの教室へ分かれていく。

橘葵が担任する1-Aには、カノンと帝が。

柊湊の1-Bには、ゴローの姿があった。


教室に入ると、さっそく自己紹介が始まった。

緊張する子、にこにこしてる子、座ったままの子。反応はさまざまだ。


ゴローはまだ、なんとなく呼ばれたから来ただけ、という顔をしている。


だが、自分の番が来たとたん、彼は立ち上がってようやく気づいた。


 

「オレ、小学生になってるじゃん!!!」



「そこ。うるさい。」


 

柊のピシャリとしたツッコミが飛ぶ。


エルミナ学園の最初の一日は、こうして静かに、そして騒がしく始まった。

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