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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第5章『終焉の茶会、白亜の学舎と時間停止』

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06.飾り付けは前日のうちに

冬の朝。

白く煙る吐息が、天井まで立ち昇っていた。


仮の職員室には、これまでの喧騒が嘘のように、穏やかな時間が流れている。



「……ようやく、ここまで来たな」



呟いたのは、柊だった。

手元には、完成した学籍名簿と出席簿。資料棚には整えられた備品や教科書がずらりと並び、教材もきちんと収められている。



「これが、学校……かぁ」


ミミのぽつりと漏らした声に、誰もが足を止める。

それぞれの胸に、同じ想いが宿っていた。


---


午前中は、全員で掃除と最終確認に取り組んだ。


廊下を雑巾がけする者。窓の汚れを落とす者。掲示物のズレを直す者。

作業の手を止めるたびに、どこかで笑い声が響く。



「グレン、そこは雑巾じゃなくて、モップの方がいいよ」

「……ああ」

「ラットン、落とし物箱にネズミのぬいぐるみが入ってたけど、心当たりある?」

「我輩ではない! 我輩はもっと品格あるぞ!」



性格も口調も違うけれど、今はみんな――同じ目標に向かって動いていた。


---



夕方。

作業を終えた教員たちが、廊下の窓から校舎内を見下ろす。



「……できた、んだな」



ぽつりとシルフが呟く。


真新しい教室。整った机と椅子。黒板の前には、今日磨いたばかりのチョーク台。

どれも手作業で、少しずつ積み上げてきたものだった。



「ちゃんと……学園が、できてる」



セレナが目を細め、小さく息をのむ。



「誰か泣いてる〜?」

「泣いてません」



からかうミミと、そっぽを向く橘。



「……でもまあ、よくやったと思うよ」



その声には、ほんの少しだけ照れくささが滲んでいた。


---



「よしっ!」



学園長・神崎 泰蔵が、突然力強く声を上げる。

白髪の老体ながら、しゃんと背筋を伸ばし、将軍のような威厳で前を見据える。



「明日の入学式は、立派なものにしようぞ!!」

「おおーっ!!」



拳を突き上げて応える教師たち。

その声には、これまでの苦労と、明日への希望が込められていた。


---



「じゃあ、入学式の飾り……明日までに完成させますね!」



月の無邪気な笑顔と言葉に、時が止まる。



「え、まだだったの!?」

「今から!?!?」

「おい待て!!」



ツッコミが重なり、職員室に響き渡った。


---



こうして、白亜の学舎はようやく春を迎える準備を整えた――

はず、である。

次章・第6章『終焉の茶会、常識破りの学級日誌』は、

7月21日 朝8時より投稿を開始します。


どうぞ、お楽しみに。

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