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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第5章『終焉の茶会、白亜の学舎と時間停止』

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03.書類もカリキュラムと、月の謎作業

冬の朝。

職員室には湯気が立ち上り、教師たちは各々、湯たんぽを抱えながら月作の新品の椅子に腰を下ろしていた。



「では、会議を始めましょうか」



最初に声を上げたのは、柊 湊。ラフな服装のまま、指先を擦り合わせながら席に着く。



「備品はなんとか揃いましたし、次はカリキュラムと教材の確認ですね」


「えっ」



空気が凍った。



「あの、教材って……自分で用意するんじゃないんですか〜?」



月が悪びれもせず、満面の笑顔を浮かべる。



「「「「そんなわけないでしょおおおおお!!!!!」」」」



職員室に絶叫が響く。



「せ、先生方……朝から元気ですね〜」


「元気の問題じゃないです!」



眼鏡を押し上げながら、葵がきっぱりツッコむ。



「読み書きのプリントも、児童向けのテキストも……なにもない……」



柊が机に突っ伏す。



「我輩の語学資料も……ゼロですぞ!? これは非常事態です!」



ラットンも空白のプリントを掲げて嘆く。



「うーん、わかりました〜。じゃあ、作りますっ♪」

月はにこやかに宣言した。



「……いつまでに?」


「明日とか……?」


「「「明日って軽く言ったなこの人!!」」」



二度目の絶叫が響く。



「あの……」



セレナがそっと手を挙げる。



「魔術の授業で使う道具や教材って……ありますか?」

「それはですね、再来年までに間に合えばいいと思ってます〜♪」


「「再来年!?」」



職員室に三度目のどよめきが走る。



「だって、最初は全員“初等部1年生”なんですから。中等部に進級するかもしれない子がでてくるのは、その次の年です〜」


「そ、それはそうですけれど……」



セレナが苦笑し、シルフが顔をしかめた。



「その理屈で……安心していいのか?」



そのとき、部屋の扉が少し開く。



「わしもこの騒動に混ぜてくれぬか……」

神崎 泰蔵、登場。



「では、封筒貼りお願いしますっ♪」

即座に任命される学園長。



「また地味な仕事ぉぉぉ!!!」



叫び声がむなしく響いた。



「学園長、大変なのにゃ〜♪」

ミミが楽しそうに笑う。



「じゃあ、今から案内書と入学願書と教材を作ってきますね〜」



月が手を振ると同時に、ラットンが全力で叫んだ。



「まさかとは思うが、紙から!?」


「はいっ! 紙も筆も、表紙も作りますっ♪」


「道具から作るのか!?」



湊の声が震える中、月は優雅にスーッと部屋を出て行った。


しばしの沈黙。



「備品が揃って、書類が揃って……でも」

ヒサメがぽつりと呟く。


「それを使う人間がまだ来てないっていうね」

カグラが肩をすくめる。


「案内出してないですもんね……」

セレナがうなずいた、そのとき――



「それも作ってますよ〜!」



ドアの隙間から、にこにこと顔をのぞかせる月。



「「「一体いつ寝てるのこの人……!!」」」



職員室に、四度目の絶叫がこだました。

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