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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第4章『終焉の茶会、黒板と木槌とDIY』

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09.勤務体制、旋律の実態

学園予定地という名の更地を見せられた翌朝。

ギルドの応接室には、明らかに疲労と困惑を背負った面々が集まっていた。


椅子に深く腰を沈めたミミが、尻尾をぺたんと垂らしながらぽつりとつぶやく。



「にゃあ……昨日のあれ、夢じゃなかったんだにゃ……」



その横で、柊湊が机に突っ伏していた。



「まさか、空き地から始まるとはなぁ……オレ、学園に赴任するんだよね? 修行じゃなくて……だよね……?」



重苦しい空気の中、ひとり朗らかにドアを開けたのは、もちろん月だった。



「皆さま、おはようございます!」



満面の笑顔で挨拶しながら、軽やかに部屋の中央へと歩を進める。



「本日は皆さまに、勤務体制についてお知らせがあります!」


一同の視線が、ざわりと月へと向けられる。



「まず、勤務日は──月月火水木金金! 勤務時間は朝八時から夕方六時までです!」


「……は?」



空気が、止まった。



「えーと……にこにこ笑顔でがんばる、我らが誇る――ニコニコブラック学校です!」



ニコッ、と自信満々の笑顔で月は言った。



「ニコニコしてる場合じゃないですよ!?」



柊の悲鳴に近い声が飛ぶ。



「ブラックって、にゃ!? にゃにそれ!? にゃにそれぇぇぇえええ!」



ミミも耳と尻尾をばたばたと動かしながら絶叫した。



「こほん……それは、法的に問題があるのでは?」



ラットンが真面目な顔で咳払いし、杖を軽く突く。



「あらあら、刺激的な勤務体系ねぇ。ちょっとワクワクしてきたわ」



カグラは楽しげに笑みを浮かべるが、目が笑っていない。



「……じゃが、わしの時代はこれが普通じゃったぞい?」



神崎が遠い目をしながらぼそりと呟いた。



「週7って……風も休まらんぞ……」



シルフが漂いながらため息をつき、セレナも苦笑いで続ける。



「うふふ……死んでしまいますわ……」



月は変わらぬ笑顔で言葉を続ける。



「でも、安心してください! 生徒は土日、お休みです!」


「……それって、先生だけ働くってことにゃ!?」



ミミがピシッと耳を立てる。



「それは安心ではなく、監獄というのでは……?」



ラットンが小声で呟いた。


グレンは、ただ静かに目を閉じ、重いため息を吐く。



「もちろん、事務作業や書類手続きなどは、全部わたしがやりますから!」



月が胸を張って言うと、部屋の隅から夜行の低い声が漏れた。



「……お前がやるという時が、一番信用ならんのだ」



一瞬、室内の空気がしんと静まる。


それぞれが顔を見合わせ、心の中で問いかける。



(……本当に、大丈夫なのか?)



やがて、誰かがぽつりと漏らす。



「……教員承諾、早まったかも……」


「では、明日から建設作業、開始です!」



月の元気な声が響き渡る。



「地獄かぁぁあああああああああ!!」



誰からともなく、全員の魂の叫びが、ギルドの応接室にこだました。

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