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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第4章『終焉の茶会、黒板と木槌とDIY』

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01.新たなる教室、始動

ギルド、応接室。丸いテーブルを囲むようにして、カノン、帝、クロマ、ゴロー、万里、ラミリス、マスターが座っていた。

その中央に、月が設計図を広げる。



「この街に──学園を作ります」



静かに、けれども迷いのない声だった。沈黙が落ちる。


帝が、机の端に手をかけたまま、目をまん丸にする。



「お姉ちゃんが……先生になるのだ? すっごいのだ!」



隣でカノンがふわりと笑った。



「学園って……制服、あるの? 姉さん、制服のデザインは任せて!」



少し笑ってから、カノンは真面目な表情に戻る。



「……本気なんだね。姉さんの、そういうところ。ぼくは嫌いじゃないよ」



クロマが腕を組みながら、図面に目を通す。



「ギルドの次は学校、なんだね。」



ゴローは無言のまま、立ち上がるでもなく、ただ静かに月を見ていた。



「街の復興は、目に見えて進んでいます。でも、未来を担う人たちが育たなければ、それはすぐに止まってしまう」



月は続ける。



「読み書きもできない子どもが多い。魔術の扱い方すらわからずに、危険をはらんだまま日々を過ごしている。──教わることができれば、変わるんです」



帝が椅子の上でぴょんと跳ねた。



「俺も手伝うのだ! かっこいいポーズ担当とか、どうなのだ?」



月は小さく笑い、首を振る。



「ありがとう。でも、これは“交渉”なの」


「人間も、獣人も、妖怪も──皆で学び合う場所を作りたい。それが、争わず共に生きるための、最初の一歩になるはず」


「そのためには、私自身の言葉で伝えなきゃいけないの。これは、わたしの意志と責任で伝えるべきこと──だから、私が一人で行きます」



ラミリスも万里も、口を挟むことはなかった。けれど、誰一人として反対の声をあげなかった。


クロマがやれやれと肩をすくめる。



「まぁ、戻ってきたら報告してね。」



カノンが頷いた。



「……でも、危険だったら戻ってくること。姉さん一人で抱えすぎないで」



月は深く一礼するように、二人へ目を合わせて言う。



「うん、ありがとう」



そのやりとりを、マスターは椅子の背にもたれながら見ていた。



「ふふん、マスター、こういうの嫌いじゃないぞー!」



子供のような笑みを浮かべて、けれど声にはどこか達観した響きがあった。



「ちゃんと帰ってくるんだよ、月。マスター、学園ができるの楽しみにしてるからね」



誰も止めなかった。


図面を巻き取ると、月は静かに頭を下げる。



「では、行ってきます」



誰も追わず、誰も笑わなかった。けれどその背中を、誰も目で追うことを止められなかった。


ギルドの扉が、静かに閉まる音が響いた。

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