03.はじめましてと、ただいまと
「そうだ!」
帝がぽんと手を打った。
「お姉ちゃんたち、名前言ってなかったのだ!」
「帝なのだ! よろしくなのだ!」
「カノンです」
カノンはやや無愛想に名乗る。
「……月です」
月は一拍置いてから名乗ったが、それ以上のことは言わなかった。
「どこから来たの?」
ラミリスが問いかける。
「……ちょっと、遠いところ」
月がごまかすように言い、カノンも曖昧にうなずく。
帝が何か言いかけたが、カノンがすっと目線で制した。
月の首元に視線を向けた万里が、小さく目を細める。
(……その首輪、見覚えがある。あれは……)
ラミリスも気づいていた。だが、何も言わなかった。
「遠いって、北の山の方とか?」
ゴローが空気を読まずに口を挟む。
「……ああ、うん。北の……かもね」
ラミリスが苦笑する。
「私は万里。このギルドで働いてる」
「ゴローだ。よろしく」
「ラミリスです。……まあ見ての通りの仕事してます」
「じゃあぼくたちも、改めていっとくか!」
マスターが元気よく言った。
「このギルドの顔! マスターだよ☆」
「クロマ。まあ、いつもここでやらかしてる奴って思ってくれればいい」
「それでだいたい伝わるな」
ゴローが呆れ気味に返し、一同に笑いが広がる。
「改めて、ようこそ! 終焉の茶会へ」
マスターが両手を広げて歓迎する。
「ようこそなのだー!」
帝がまねして跳ねる。
月は何も言わず、ふっと表情を緩めた。
「……よろしくね」
万里が小さくうなずいた。




