02.たんこぶと談笑
扉を開けてギルドの中へ足を踏み入れた瞬間、三人は思わず息をのんだ。
仮設とはいえ、内部は見違えるほど整っている。
掃き清められた床。角の取れたテーブル。手製と思われる椅子が並ぶ食卓。
そして、その中央では――五人が談笑していた。
「誰だ、あれ……」
ゴローが低くつぶやく。
「見知らない顔……三人」
ラミリスがそっと目を細める。
「……帰ってきた組?」
見知らぬ少年――カノンがこちらに気づき、素直に声をかけてくる。
「ええ。私たちはこのギルドの……まあ、仕事帰りです」
万里が応じた。互いにまだ名乗りはない。
ふと、ゴローが視線を動かす。
「あいつら……なんかやらかしたのか?」
クロマとマスターの頭には、それぞれ見事なたんこぶができていた。
「ちょっと怒られただけ〜」
マスターが笑顔で言うと、無言で万里が睨む。
「ほんっと、あの人怒ると怖いよね〜」
クロマが溜息混じりに続ける。
「お姉ちゃん、超怖かったのだ!」
帝が無邪気に言い添えた。
「……えっと、誰に怒られたの?」
ラミリスの問いかけに、クロマは肩をすくめた。
「内緒〜。そのうちわかるよ、たぶん♪」
その場に軽い笑いが起きた。
「……まあ、帰ってきたって感じね」
万里が微笑む。
「あっ、おかえり〜」
マスターの声に、
「……ただいま」
万里が穏やかに応じた。




