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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第17章 『終焉の茶会、繰り返す夏休み』

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08.休暇を満喫する者、できぬ者

夏休み最後の日が繰り返される――そんな特異な静けさの中で、誰もがそれぞれの休暇を思い描いていた。


「樹、お前明日から長期休暇らしいな」

シキが涼しい顔で告げる。


「……………ソンナコトナイヨ??」

樹は乾いた笑いで誤魔化した。


「仕事行くぞ」

短く放たれた一言に、樹は天井を仰ぐ。


「あーーーーーーー」



「明日からどうするにゃ……」

ミミが尻尾をぱたぱたさせてため息をつく。


「まとまった休みなんて久しぶりですからね……どうしましょう」

橘が真面目に腕を組む。


「ふっふっふー……。おねえさんに任せない! セレナも誘って一緒にエステ行くわよ!」

カグラが得意げに指を鳴らした。


「にゃ!」

ミミの耳がぴょこりと跳ねる。


「エ……エステですか!?」

橘は目を丸くする。


「あらあ?? わたしは承諾してませんが??」

セレナが小首をかしげる。


「こんなの勢いよ! 行くわよ!」

「はい!! 姐さん!!」

ミミと橘が揃って元気よく返事をする。


「あらあら。うふふふ」

セレナは肩を揺らして微笑んだ。



「ふむ………久しぶりに温泉でも行くかのぉ」

学園長の神崎が、のどかな声で独り言をこぼす。


「いいですねぇ。学園長」

ラットンが上品に頷く。


(ジジイ………)

柊・ヒサメ・シルフは、それぞれ心の中だけで同じ言葉を転がした。


「行ってみたいところがあるんじゃが……ラットン先生もどうかの?? 砂風呂なんじゃが」

「ご一緒しましょう」

ラットンは満足げである。


(蒸しネズミ……)

ヒサメの心の声が過る。


(まずそう……)

シルフの心の声が続く。


(ネズミ肉かぁ……熊肉ならともかくも……)

柊の心の声も漏れる。


「?????」

グレンは周囲の気配を読み取れず、静かに首をかしげた。



「……………何をするか」

夜行は窓外へ視線を投げる。


「俺ん家で飲む??」

鬼影が気楽に誘った。


「…………なぜ?」

夜行の返しは相変わらず素っ気ない。


「旧知の仲じゃーん」

鬼影は笑って肩をすくめる。


「………………酔潰してやる」

夜行が淡々と結論を告げる。


「酔わないもんね〜」

鬼影は得意の笑顔で軽口を返した。



「……………郷でゆっくり過ごすか」

「そうだな」

「馴れ合う必要もないでしょうしね」


エルフたちは短く言葉を交わし、静かな郷の緑へと思いを馳せた。


――誰もが、「終わらない今日」をそれぞれのやり方で満喫しようとしていた。

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