07.夏休み最後の日は、終わらない
夏休み最後の日。
まだ宿題が終わらない生徒たちが、職員室へ駆け込んできた。
「月先生、お願いします!」
「………………何をですか?」
「夏休みの宿題が終わるまで、今日を繰り返してください!」
「………………………………………………」
「お願いいいいいい!!!!」
しばしの沈黙のあと、月は小さくうなずいた。
「…………………終わるまでですね。わかりました」
「っしゃー!! 頑張るぞ!!」
歓声を上げながら、生徒たちは勢いよく帰宅していった。
――その後。
「先生たち。お聞きした通りです。今日が繰り返されます」
「いや……今日が繰り返されますって……どういうことにゃ」
ミミが耳をぴくぴくさせながら問い返す。
「夏休みが終わるまで永遠に今日です」
月はさらりと言い放った。
「街の人たちは……」
グレンが低い声を出す。
「関係者以外は気づきませんし、気づかせません。ただし、生徒たちの宿題はちゃんと終わっていきます」
「時を操る魔法は魔力消費が激しいだろ?? 大丈夫なの? 月ちゃん」
鬼影が心配そうにのぞき込む。
「大した消費じゃないですから、問題ないですよ」
「月からしたらな」
樹が苦笑いを浮かべる。
(………さすがというべきか……)
エルフの教師は心の中で感嘆の息をもらす。
「月………」
夜行はただ名前を呼んだ。
「平気です。そんなことより………先生たち、わかってますか?」
「?????」
「私たちはすでに明日からの準備が終わってます」
「うん??」
「今日が繰り返されますが、明日から我々は生徒の宿題が終わるまで休み放題です」
「つまり……??」
「滅多にとれない長期休暇です」
「っしゃあ!!! 生徒たち、夏休みの宿題ゆっくりやれ!!」
「なんてこと言うんですか」
月の小さな叱責が職員室に響いた。




