01.ただいまの街
依頼から戻った万里、ゴロー、ラミリスの三人は、街の外れに立ち、懐かしい風景を見下ろしていた。
焼け残った建物。修復されつつある家々。往来する人々の姿。
少しずつではあるが、この街に日常が戻ってきていることが、静かに伝わってくる。
「……やっぱり、この街が落ち着くわ……」
万里が小さくつぶやいた。
「疲れたけど、悪くなかったよな、今回の遠征」
ゴローが軽く伸びをしながら応える。
「うん。でも、まずは風呂。あとは甘いもの」
ラミリスは真顔のまま言い放ち、すでに足は街に向いている。
そんな軽いやりとりを交わしつつ、三人は並んで歩き出す。
焼け跡を抜け、修復途中の通りを進みながら、目指すのはいつもの場所――ギルドだった。
けれど、その場所にたどり着いた瞬間、三人は思わず足を止める。
そこにあったのは、見違えるような建物だったからだ。
「……ここ、だったわよね?」
万里が目を細め、建物の上部に掲げられた看板を見上げる。
木造ではあるが、しっかりとした造りで、看板の文字もくっきり読みやすい。
「……なんか、前よりちゃんとしてる」
ラミリスが呆然とつぶやく。
「これは……クロマとマスターだな」
ゴローがぽつりと言い、三人は同時にため息をついた。
「マスターが作ったんじゃなさそうだな。崩れてないし」
軽口を交わしながら、扉に手をかける。
――そのとき、中から談笑の声が聞こえてきた。
聞き慣れたクロマとマスターの声。
そして、それに混ざる見知らぬ声――。
誰だろう、と三人が顔を見合わせた、その瞬間。
静かだった街の空気が、少しだけ騒がしくなる予感がした。




