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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』

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09.最後のひとり

──魔力石の空間。

雪が横殴りに吹きつける中、一人の男子生徒が倒れていた。


全身は雪に覆われ、顔も、手も、ほとんど見えない。


(あぁ……このまま眠れば……楽になる……)


まぶたは重く、もう開ける力も残っていない。


(ごめんね……母ちゃん……父ちゃん……)


その意識が、ゆっくりと沈んでいく──。



---


──どこかの家。

部屋の明かりはついたまま、夫婦が椅子に座っていた。


「まだ……あの子だけが帰ってきてない……」


母親の手は震え、声はかすれていた。


「タイムリミットまであと、6時間ある……」


父親の声も、どこか力がなかった。


「朝の8時には扉を仕舞うって!! 月先生が言ってたやろ!!………もう、6時間しかない!!」


「……………少し…、眠ったほうがいい……。戻ってきた時、笑顔でむかえれるように……」


「……………あいつ……こんなに親に心配かけさせて………。いつでも戻ってきてもいいように……せっかくドラゴンの肉で作ったカレーだって……いうのに………。」



---


──魔力石の空間。


(……………父ちゃんと母ちゃんの声が……聞こえた気がする………。)


(ドラン肉のカレー……かぁ…………)


(………………………………ドラゴン………肉………カレー…………?????)


「!?!!!! ドラゴンの肉だって!! 寝てる場合じゃない!!!」


突然ガバッと起き上がった男子生徒が、雪の中で暴れ始める。


「ドラゴン肉………ドラゴン肉………ドラゴン肉………」


ふらつきながらも、吹雪の中で石を探し続ける。


「ドラゴン肉ううううう!!!!!」



---


──学園 校庭・早朝。


扉の前に、教員たちが静かに並ぶ。

夜明けの光が、空を薄く染め始めていた。


「……………時間です」


月がぽつりと呟いた。

その声は、どこまでも悲痛だった。


教員たちは顔を伏せる者、天を仰ぐ者、それぞれが黙って立ち尽くしている。


「うっ……うぅぅ……」


橘は顔を覆い、静かに泣き始めた。

隣にいたグレンが、黙って肩を抱く。


扉が光を放ち、やがて徐々に透明になっていく。


「…………!!」


月の表情が凍りついた。


そのとき──


扉が再び光を放ち、ギィィィッと開く。


周囲がその気配を察知し、動きを止める。


「ドラゴン肉ゥゥゥゥ!!! カレーェェェェ!!!!」


叫びながら、最後の男子生徒が扉から飛び出してきた。


そのまま校庭を駆け抜け、何やら叫びながら遠くへと走り去っていく。


「………………………………えっと……無事全員帰還しました!!」


月がゆっくりと、噛みしめるように言葉を発した。

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