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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』

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08.信じる者、見守る者

──魔力石の空間。


激しく流れる水。

女子生徒は腰まで浸かりながら、川の流れを逆らうように必死に進んでいた。


冷たい水が容赦なく全身に打ちつける。

それでも、彼女の視線は前を向いたままだ。


目の前には、滝。

その先、崖の上に、淡く光る魔力石が見える。


「……あれが……!」


滑りやすい岩肌には、指も足もまともにかからない。

登るのは不可能。


ならば──


「泳いで……登るしか……!」


水流に押されながらも、生徒は懸命に手を伸ばす。

足を動かし、体を浮かせ、滝を登ろうとする。


(……負けたくない……絶対……!)


流れを感じ取り、ほんのわずかな隙を突いて、ついに──


「私の!! 石!!! ガボボボボ!!!!」


石を掴んだ瞬間、滝の水量が一気に増す。

勢いに耐えきれず、全身が押し流されていく。


(あ……無理かも……)


意識が遠のいていった。



---


──学園・昼。


突如、空間に設置された扉が勢いよく開く。

その瞬間、大量の水がどばあっと流れ出し、その中から女子生徒が転がるように出てきた。


「ゲホ!!! ゴホゴホ………。私……死んだ?」


「生きてるにゃ!!!」


ミミが満面の笑顔で生徒に飛びつく。

びしょ濡れのまま、思わず抱きつかれた生徒は目を瞬かせた。


月が歩み寄り、静かに頭を下げる。


「お疲れ様でした。」


「………やったぁ!!!」


涙と共に、全身の力が抜けるように叫ぶ生徒。


周囲で見守っていた教員たちは、ようやく安堵の息を漏らした。

扉を見つめる目は、次の帰還を待つように静かに揺れている。


(あと一人……。タイムリミットは明日の朝)


月は空を見上げ、心の中でそっと呟く。


(信じてますよ。今年も全員戻ってくるって……)



---


──魔力石の空間。


吹雪。


最後の一人となった男子生徒が、雪山をさまよっていた。


「…………もう無理………眠い………」


体温が奪われ、足も手も思うように動かない。

寒さに震えるその姿は、今にも倒れそうだった。


「このまま……眠ったら………」


つぶやいた彼は、その場に膝をつき──


ゆっくりと、瞼を閉じた。


強く吹き荒れる風の中、遥か遠くで、まだ見ぬ石だけが、淡く光を放っていた。

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