07.燃え尽きるまで
──灼熱。
魔力石の空間の中、男子生徒は全力で叫んだ。
「はああああ!!!! これが! 俺の全力だぁぁ!!!」
握った両拳の中から、巨大な火球が生まれる。
全身の魔力を炎に変え、最後の一撃として魔物に向かって放った。
轟音と爆風。
光と熱が空間を満たし──
やがて、静寂が訪れる。
炎が消えた先に立つ魔物は、確かにその場で立ち尽くしていた。
だが──
「にや……っ」
笑った。
生徒は膝を突く。
両手もつけず、顔を上げることさえままならない。
「…………はあ……はあ……ぜん……ぜんじゃん………。魔力切れ……………もう無理……指一本動かねぇ………」
その時だった。
「よくやった。お前の全力の力、見せてもらった。」
低く、重く、どこか満ち足りたような声が響く。
「へ?」
顔を上げると、魔物はもうそこにはいなかった。
代わりに、目の前の地面に──
「ほら、お前の石だ」
転がっていたのは、淡く光る魔力石。
思わず手を伸ばし、握った瞬間。
(……えっ)
空っぽだった身体に、魔力が戻ってくる感覚。
芯から満たされていく。
「さあ、帰ってお前の魂を形にしてもらえ!」
「…………あざっす!!」
震える足に力を込め、ふらつきながらも立ち上がる。
「マジで……ギリギリだった……」
苦笑いを浮かべながら、少年はゆっくりと帰還の扉へと歩き出した。
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夜の学園。
校庭に設置された扉が、静かに開いた。
「……戻ってきた……」
その声に、最初に反応したのはカグラだった。
「よく戻ってきたわね」
鬼影が近づいてくる。
「偉い偉い」
ぽんぽんと、生徒の頭を撫でた。
「おかえりなさい。疲れたでしょう??」
月が歩み寄る。
「体力回復の香草スープを作ってあるから、これを飲んで落ち着いたら家に帰りなさい」
「はい!!!」
元気に応えるその声に、安心した表情が浮かぶ。
「あ、石は預かります」
「はい!!」
生徒が差し出した石を受け取りながら、月は笑みを見せた。
その様子を見ていたエルフの一人が、空を見上げながら小さく呟く。
(あと……2人……か……気が休まらないな)




