06.帰還、そして次の約束
学園の校庭に、今日も扉が開いた。
魔力石の空間から、生徒たちが次々と帰還してくる。
土を踏みしめる足取りは、どの顔にも疲労が見える。
けれど、その表情はみな晴れやかだった。
教員たちは、生徒たちの姿を見つけると駆け寄り、ひとりひとりを迎え抱きしめる。
「よく帰ってきた!」
交わされる言葉に、思わず涙ぐむ生徒の姿もあった。
月は、教員たちの背後でひとりずつから魔力石を受け取っていく。
「ふふ……立派な石ですね。」
掌に受けた石は、それぞれが持ち主の個性をそのまま映し出すように、微かに輝いていた。
帰還した生徒たちは次第に輪になり、笑い声を交わし始める。
けれど、全員が揃ったわけではない。
残る生徒は、あと八人。
扉が閉じるまで、残された時間はあと二日だった。
「もう、5日たってたんですね……。まだ3日やそこらだと思ってました」
ぽつりと呟いた生徒に、シルフが軽く笑って返す。
「授業で言ったろ? あの空間は時間の流れ含めて特殊だって」
「はい………。あ、先生たちも魔力石武器あるんですよね? どんなのですか??」
好奇心に満ちた目が、一斉に教員たちに向けられる。
「見たいみたーい!!」
「夏休み明け、お前たちの武器が完成した時に見せてやるよ」
シルフの言葉に、周囲がぱっと明るくなる。
「はーい。約束だよ!」
そうして、歓談の時間がひと段落すると、月が優しく声をかけた。
「さあ、保護者が待ってますよ。今日はもうお家に帰りなさい。」
「私は??」
不安げな声を上げたのは、どこかふくよかな少女──コハルだった。
月は一瞬だけ言葉を探し、それから穏やかに微笑む。
「コハルさんは……あともう少しですね」
「……あ~~ん(泣)」
情け容赦ない宣告に、コハルはその場に泣き崩れる。
「え?! あれコハルなの!!? 気にはなってたけど………。え??! あのほっそいコハル??? え? なにがあったの?!」
生徒たちの間から驚きと困惑の声が上がる。
そんな中、グレンが無言でコハルを抱え上げ、体育館の方へと歩き出す。
その様子を、皆は遠巻きに見送ることしかできなかった。
「まあ……人生色々だよ」
ラットンがポツリと呟いたその言葉に、誰も返すことはなかった。




