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終焉の茶会は、今日も平和に大惨事  作者: ポン吉
第16章『終焉の茶会、三十通りの挑戦状』

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05.魂を刻め、言葉で刻め

──魔力石の空間。


音は、聞こえなかった。


少女の耳には、外の気配も、周囲の音も届いていない。

あるのはただ、自分の呼吸。

自分の心臓の音。


(たぶん……これが最後だ………わからないけど、なんとなくわかる)


少女は静かに目を閉じ、次の瞬間──


全身に魂を込めて、言葉を放った。


その声は、韻を刻み、リズムを刻み、空間に響き渡る。

ラップ。

彼女の魂が乗った、命を削る一節。


言葉が終わると同時に、音が止まる。

光も止まる。


沈黙の中──


「お前の魂しかと見届けた!!」


荘厳な声が空間に響いた。


目の前に、光る石が浮かび上がる。


「これが…………わたしの魔力石……」


少女は、ゆっくりと手を伸ばす。


「お前の心を形にして、立派な魔術師になれ」


「……………はい!!」


静かに、しかし確かにうなずいた少女の前に扉が現れる。

彼女は一歩ずつ、その扉をくぐっていった。



---


同じ頃、別の空間。


「……………クソ……あと少しだったのに!」


叫ぶ男子生徒の前には、試練内容が映し出されていた。


──10種類の早口言葉。

それぞれ3回ずつ、噛まずに言えれば合格。


彼は最後の最後、10種類目の3回目、あと1音というところで噛んだのだった。


「(落ち着け……。ここまで来たんだ。集中しろ! 行ける……俺はいける!!)」


自分に言い聞かせるように、深呼吸を一つ。

新たなチャレンジに向け、目の前の文字列を見据える。


──ラストチャレンジ。


「………………新設診察室視察 瀕死の死者 生産者の申請書審査 行政観察査察使 親切な先生 在社必死の失踪!!!!」


怒涛のように、一息で言い切った。


「できた!!!! 言えた!!!!」


その瞬間、空間が光に包まれる。


「よくぞ諦めずにここまできた!! お前の魂を見せてもらった!」


「俺の石だ!!」


歓喜に満ちた顔で、手を伸ばす男子生徒の前に、扉が開く。


「行け! お前の魂を形にしてもらうために!」


「おっす!!」


拳を突き出し、彼は扉の向こうへと歩み出した。

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